第30回 オレンジページ 編集長 杉森一広さん

- ことし創刊25周年を迎える元祖生活便利マガジン。料理のコツのみならず、暮らしに役立つ便利グッズや、知って得する豆情報まで、読み応え満載の隔週刊雑誌です。
…レシピを多くするより、写真を大きくしてゆったりと見せることに重点を置いています。
―webサイトも充実していますが、社内で制作されていますか。
ええ、ニューメディア・クリエイション部がつくっています。編集部とは別部隊ですが、密接に連携しています。一緒に企画やることも多いです。ネットで始まった連載を雑誌誌面で見せたり、雑誌で紹介した料理の別バージョンをネットで見せたり。
僕はやらないから分からないのですが、最近ではTwitterで「オレンジページなう」というつぶやきが多いという話をききました。ネットや新しいメディアとの親和性は高いですね。やはり身近なネタがテーマですからね。紙の雑誌はネットのほうへ移行せざるを得ないような現状ですが、この雑誌ではまだまだ紙の世界は健在です。多くの読者はうまく使い分けているようなんです。
たとえば、普段の料理ではテーマごとの塊で纏められている雑誌を参考にするけど、野菜が残っているときなどはピンポイントでネットで検索して料理をつくる、みたいな。お互いのメディアの特徴をユーザーの方々はよく理解されているようです。
―掲載する料理レシピはどうやってつくるのですか。

編集部脇にあるキッチン・スタジオ
編集者がいろいろ勉強して企画を考え、そのアイデアを元に料理研究家の先生と打ち合わせしてレシピを考えてもらいます。そして必ず原稿を見ながらキッチンで実際につくってみます。この作業が大切で、読者の立場に立ってわかりにくいところはないかチェックするんですね。
編集部の脇に独自のキッチンスタジオがあるんですよ。そこで毎日試作をしています。撮影したものや余ったものは編集部員の夜食になったりします。結構それで食費が助かっている新人スタッフもいるみたいですよ(笑)。
―ユーザーに近い雑誌です。どういうところに気をつけて編集されますか。

レシピを見ながら料理をチェック
やはり情報の精度でしょうか。それと、レシピは「つくれること」がマストです。そして分かりやすいこと。
レベルを上げすぎず、常に読者目線をキープすること。取材を重ねていくとどうしてもプロっぽい目線になってしまいがちなんですが、それはマズイです。140%調べてそこから80%にまで削ぎ落とせ、と僕は編集部員に常々言ってるんですよ。
同時に、読者がやってみて出来ないようだと紹介した意味がありません。ですから編集部員は全員体験型の編集になります(笑)。たとえば、毎年冬には大掃除の特集をやるのですが、夏からわれわれは掃除をしまくるんです。そこで体験したアイデアを誌面に盛りこんでいくんです。これをやるからこそできる、痒いところに手が届く誌面づくりを常にめざしています。
もうひとつ特徴的なのは、暗い話を載せないってことでしょうか。楽しい話が多いので、寝る前に読む人もいるんです。ですから、読み物をより充実させています。みうらじゅんさん、角田光代さん、しりあがり寿さんなどに連載を持ってもらっています。
―これをやれば必ず売れる特集ってあるんですか。
やはり不景気なんでしょうか、お得な食材による料理ですね(笑)。これは売れます。見せ方としては貧乏くさくなく、節約節約とうるさく言わず、それで幸せな気分になれる、そんな企画がいいですね。
体にいい、ということも重要ですが、健康と料理を組み合わせてもうまくいきませんね。単純に野菜の比重が高いだけのものは受けない。やはり食べた人が満足しなきゃいけないんですね。
―いろんなコラボレーションもされてますよね。

通販で好評のタジン鍋
「オレンジページ」で紹介した料理をお弁当にして売ってます。これも人気高いです。JR東日本グループだからできるワザではありますが。
あとは読者のニーズを商品化する。これも好評です。フライパンなどすごい人気で、いまはタジン鍋がいいですね。これらも読者のニーズからものをつくっていくという姿勢の表れですね。
(2010年3月)

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一瞬、外資系企業かと思うような立派なビルのなかに「オレンジページ」の広い編集部はありました。編集も、広告も、営業も、そしてキッチンも、ひとつの広いフロアのなかに整然と同居している感じが、読者との垣根の低さを象徴しているようでした。
杉森さんは大学を卒業して、すぐこの会社に就職されたそうです。別に料理が好きだったわけではなかったようですが、編集という仕事が大好きだったとのこと。ちょうどバブル期でもあったので、自分はあまり浮かれていない、地に足がついているような編集をやりたいとここに来たのだそうです。
編集者としてやはり嬉しいのは読者からの反響です。そのなかでも、これは自分のために用意してくれたようなページに出会うと、読者と雑誌の距離がぐっと縮まります。
いまではこの雑誌が「教科書」になっている人もいるようです。母が娘に料理を教えてあげられなかったかわりに、「オレンジページ」のバックナンバーを送る人もいるということです。なかには、料理ページを切り取ってファイルしたものを娘に渡す母親もいるとか。雑誌記事とはいえ、ここには母の手づくりの暖かさが伝わってきます。雑誌もここまでくると本当に編集者冥利につきますね。

インタビュアー:小西克博
大学卒業後に渡欧し編集と広告を学ぶ。共同通信社を経て中央公論社で「GQ」日本版の創刊に参画。
「リクウ」、「カイラス」創刊編集長などを歴任し、富士山マガジンサービス顧問・編集長。著書に「遊覧の極地」など。







