雑誌の日&雑誌愛読月間特別企画

第1部いまなぜ「雑誌」を創刊するのか

(北尾トロプロフィール)
1958年生まれ。フリーライター、ネット書店「杉並北尾堂」店主。2008年には長野県高遠町に「本の家」を開店。著書に「裁判長!ここは懲役4年でどうすか」(文春文庫)など多数。「ダ・ヴィンチ」では創刊当初より15年以上にわたり連載を継続中。

 

「裁判長!ここは懲役4年でどうすか」などの著書でもお馴染みのフリーライター北尾トロさんが、なんと雑誌を創刊するという。
出口の見えない出版不況のときに、それも難しい雑誌にあえて挑むとは!
トロさん、気は確かか・・・という声をよそに、ご本人は飄々としておられる。いったいこの人は何をたくらんでいるんだろう。
ということで、「雑誌の日」3月4日を前に、ご本人に本音を訊いてみることにしました。

前半(1部)は北尾トロさんのインタビューですが、後半(2部)に急遽、雑誌「ダ・ヴィンチ」の横里編集長との対談も掲載することにしました。雑誌を愛するおふたりが、いま読んでいる雑誌とは何でしょう。これもお楽しみに。

インタビュアー:小西克博(富士山マガジンサービス顧問・編集長)

―新雑誌を創刊されるとのことですが、雑誌不況が叫ばれるなか、あえていま雑誌を創刊される理由を教えてください。

編集者はみんなやめろ言いましたよ、紙の雑誌なんか無茶だって(笑)。2人だけかな、面白いからやればって言ったのは、それも無責任に。
でも、僕はずっと雑誌の世界でやってきて、やっぱり出すならいましかないんだろうなと思ったんです。5年後はもう分からないですから。
これまでライターをやり、古本屋をやり、長野県の高遠では町おこしにも関わりましたが、それぞれにタイミングみたいなものがありました。いま自分のなかでは「雑誌」がそのタイミングなんですね。
古本屋も町おこしも面白いですが、スタッフとの共同作業といったものが多いんです。ですから、もっと私的なところで何かやりたいと思ったんです。
それと、フリーのライターやカメラマンの居場所がなくなっちゃいました。発表したくても媒体が本当に少なくなっていて。そんな人たちに場を提供したい、とそんな理由も大きいです。

―フリーランスのライターたちに場所を提供したい、と。

ええ。僕の例で言っても、以前は雑誌でまず連載書いて、それから本にしてもらうというパターンだったのが、いまではいきなり書き下ろしでやれと言われる。これは書き手にはきついですよ。PR誌とかあればそれに書いて、溜まったところで本にしてといったことも出来ましたが、そのPR誌もいまや減ってますよね。
だからフリーのライターは自分のブログなどが発表媒体になっている。それだとなかなか人に読まれないですし。そうなるともう書き手がいなくなっちゃうんじゃないかと。雑誌がノスタルジーになる前に出さないと(笑)。

―内容はやはりノンフィクションが中心になるのですか。

そうです。僕が書いているような柔らかめの、笑える感じのものです。そんなに気負ってやるって感じではないのですが、でも「儲けてやる」って人には言ってる。みんなありえないと言いますが(笑)。
でもね、じゃあこの日本で、いま雑誌を創刊できる人って何人いますか。ほとんどいないですよね。それはラッキーなことなんですよ。そんなラッキーなことをやるわけですから、間違いないと(笑)。いつも儲けはトントンでいいや、って思ってましたが、それだとアカになるんですよ。だからあえて儲けるぞって言ってる部分もありますが。
内容ですが、あってもなくてもどうでもいいようなことって、僕にとっては大切なんですよ。だからそんなものを載せたいと思っています。
僕がこの世界に入ったのも偶然編プロで働いてた友達が辞めることになって、そこの手伝いをしたのがきっかけなんです。小説を読んだり書いたりしてきた人間でもないし、だいたい自分で体験してみて、それを面白く書くことをやってきただけ。頭悪いやつの典型で、やってみないと分からないからやってみる、そしてそのリアクションでまた考えるってやり方。たぶんそんなノンフィクションが多いと思います。

―どういった書き手が登場するのですか。

まだ決めていないというのが正直なところですが、著名人だと、えのきどいちろうさんには寄稿してもらうつもりです。でも、本当は無名の人がたくさん出てきてほしいので、最初だけ著名人の力を借りようかなと思っているんです。
実はもう本にする予定の原稿も入るんです。「日本三大M」と言われるお爺さんの体験談を元SM女王が書く(笑)。で、そのとなりにはまじめな国連の人が寄稿してる(笑)。

―いずれにしろトロさんのアンテナにひっかかってくる話ですね。雑誌名とか、体裁とか、分かる範囲で教えてください。

僕が編集・発行人で、フリーの編集者に手伝ってもらいながらやっていきます。名前は「レポ」にしました。レポートのレポです。分かりやすい名前にしたかったからです。ことしの9月に創刊します。その次は12月、3月・・・と季刊で出していきたい。B5変形で厚さが1cm未満の形にするつもりです。というのもメール便で読者に安く届けたいからです。「手紙」のようなものにしたいんですよ。だから旧来の販売方法はとらない。マスコミのシステムではやらない。基本は通販で、3000部くらいは出したいですね。
広告は入れないつもりですが、志は受け取りますよ(笑)。

―読者はトロさんの読者とかぶる感じですよね。

そうでしょうね。だいたいオヤジと、20代、30代の女性が多くなると思います。オヤジもサブカル好きの人ですよね。「別冊宝島」が好きで、みたいな。
僕は紙で育っているから、もうある程度諦めているんですが、この世界でやっている若い人たちは大変ですよ。同情はしないけど、大変だと思う。
でも、メシの心配してたら何もできないですよ。もうこの業界ダメだ、と嘆くだけの人は、「食う」ことだけを考えている。もともとライターとかってそんな世界じゃないはずなんですよ。書きたい人は「食う」ことなんか関係なしに書くわけですからね。