今号の特集について
本号は「食い問答」というテーマで特集をお届けしました。
多様な書き手からいただいたご寄稿からは、おいしさを介したコミュニケーション、文化としての選択や洗練、先祖や人以外の生命・自然界とのつながり、ビジネスとも結びつく社会問題、自分を成し守るものとしての「食」……といったさまざまな観点が浮かび上がってきました。
食べることは、他者との関係を築くことでもあり、自分自身との対峙でもあります。「食べる」までのプロセスとどう向き合うのか。何を考え、あるいは考えずに「食べる」のか。味わいを誰と分かち合うのか。身体を維持する〝生きる〟ための行為でありながら、私たちがどう〝生きる〟のかを映し出すのが「食」なのかもしれません。
食欲の秋です。
みなさんは今日、何を食べますか。
灯歌
水野 葵以(歌人)
特集
味というもの
平松 洋子(エッセイスト・作家)
微生物と人間が共同でつくる、発酵という時間の芸術
小倉 ヒラク(発酵デザイナー)
フードロス・コミュニケーション
小林 冨雄 (日本女子大学家政学部 教授)
命との向き合い方
千松 信也 (猟師)
千年のスイーツ 甘葛煎と古代菓子
前川 佳代 (奈良女子大学大和・紀伊半島学研究所古代学聖地学研究センター協力研究員)
「ていねいな暮らし」の復権?
阿古 真理 (作家・生活史研究家)
連載
知の生まれる場所
歩きまわり集中できる創造回廊図書館
仙田 満 (環境建築家)
科学と生きる
光スイッチ
全 卓樹 (理論物理学者・随筆家)
書物とともに
回想のビブリオフィル ウジェヌ・ヴィナーヴァ
髙宮 利行 (慶應義塾大学 名誉教授)
書評
文芸季評
捕まえられない現実と非現実の間を、溶け合う言葉で表現する
渡辺 祐真 (文筆家・書評家)
文芸季評
百年越しの#MeToo―金原ひとみ『YABUNONAKAーヤブノナカー』
水上 文 (文筆家 ・文芸批評家)
一書三評
好きな食べ物がみつからない
樋口直哉 (作家)、小谷実由 (モデル)、柳沼雄太 (書肆 海と夕焼 /夕凪文具店 店主)
これから読む本
『苦情はいつも聴かれない』
田中 東子 (東京大学大学院・情報学環)
丸善出版刊行物書評
『日本の局地風百科』
黒瀨 義孝 (農学)
丸善出版刊行物書評
『仏教由来の日常語事典』
堀田 和義 (駒澤大学仏教学部講師)
学鐙の内容
- 出版社:丸善雄松堂
- 発行間隔:季刊
- 発売日:3,6,9,12月の5日
丸善のPR誌『學鐙』は、明治30年(1897)3月に創刊、現在にいたるまで発行が続けられ、我が国最古のPR誌です。創刊時から広く日本の文化に寄与し、世界の文化受容の窓口となるという一貫した編集姿勢は変わらず、一企業のPR誌を超えて我が国の学界・言論界の中で育ってきました。初代編集長は作家・文芸評論家として活躍していた内田魯庵、執筆者には坪内逍遙、夏目漱石、井上哲次郎らが名を連ね、明治36年(1903) 『學鐙』と名を改めた以後も日本を代表する学者、文芸家、言論人が筆を執り、学術エッセー誌にとどまらず、社会や時代を映す鏡になっています。
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