記事紹介
■民法判例レビュー 100・完
民法判例レビューの連載を終えるにあたって/野村豊弘
■今期の主な裁判例
契 約/沖野眞已
担 保/下村信江
不 動 産/池田恒男
民事責任/大塚 直
■今期の裁判例
家 族/水野貴浩
■判例評釈
担 保 形式競売と法定地上権の成否
福岡高判平19.3.27判タ1250号335頁/下村信江
不 動 産 地域的公序の端緒としての互有関係
近隣者の共用私道と相隣地をめぐる積年の生活妨害紛争の法的解決手段としての全面的価格賠償方式による共有物分割を認めなかった事例
福岡高判平19.1.25判タ1246号186頁/池田恒男
家 族 相続債務と遺留分の関係
福岡高判平19.6.21金法1815号52頁/本山 敦
判例紹介 全15件
◆行政裁判例
[国家補償法]
1大和都市管財国家賠償請求訴訟第一審判決(大阪地裁平19.6.6判決)
財務局長が抵当証券業の規制等に関する法律8条1項に基づいてした抵当証券業者に対する更新登録が,同法6条所定の登録拒否事由の存在を看過してされたものであり,その更新登録拒否に係る権限の不行使が具体的事情の下で著しく不合理であったとして,国が,当該抵当証券業者から上記更新後に抵当証券を新規資金によって購入し,当該抵当証券業者がその後に営業を停止したことによって損害を被った者に対して,国家賠償法1条1項に基づく損害賠償責任を負うものとされた事例
2(東京高裁平19.1.31判決)
口頭による学校施設使用許可申請に対する校長の文書による回答が裁量権を逸脱した不許可処分であるとして都の損害賠償責任が認められた事例
[地方自治法]
3(大阪高裁平19.9.28判決)
平成14年法律第4号による改正前の地方自治法242条の2第1項4号の訴訟において一部勝訴した住民らが,同法242条の2第7項に基づき,当該地方公共団体に対し,弁護士に支払うべき報酬の支払を求めた事案において,報酬額算定の基礎となる「経済的利益」を「算定不能」として報酬額を認定した事例
[情報公開]
4(東京地裁平19.9.20判決)
国会議員が訪米した際に行われた会食に関する支出証拠等の開示を求める請求に対し,外務大臣が,情報公開法8条に基づき,対象文書の存否を明らかにしないで不開示としたことが違法とされた事例
◆民・商事裁判例
[民 法]
1(大阪高裁平19.9.11判決)
共有会員制リゾートクラブに属する共有制リゾートホテル(36戸の共同住宅からなる1個の区分建物を360分の1の共有持分に分けて分譲し,分譲会社の100%子会社が共有者全員から管理委託を受けて運営するもの)の分譲契約において,分譲を受けた共有者が共有持分を譲渡するには,管理委託契約等に基づく地位と一体で譲渡しなければならず,かつ,事前に分譲会社又は管理会社の書面による承諾を得なければならないと定められている場合に,共有者から持分売却の一般媒介契約を受任し,無償でも契約関係を解消したいとの希望を受けた分譲会社は,これに誠実に対応すべき信義則上の義務を負うとして,その義務を果たさない間に生じた管理費等の支払を管理会社が共有者に請求することが権利の濫用とされた事例
2(東京地裁平19.10.3判決)
マンションの階上の住戸からの子供が廊下を走ったり,跳んだり跳ねたりする音が階下の住戸に居住する住民が社会生活上受忍すべき限度を超えるとして上記住民の上記子供の父親に対する損害賠償請求が認容された事例
3(大阪高裁平19.2.20判決)
1 裁判所の文書送付嘱託に応じて文書を送付することは,個人情報の保護に関する法律23条1項1号の「法令に基づく場合」に当たり,個人データの第三者への提供が同項により制限されることはないとされた事例
2 交通事故の被害者が加害者を相手方として申し立てた民事調停において裁判所が診療録の文書送付嘱託をした場合には,調停の申立人である患者の同意を得ないで医師が診療録を送付しても,正当行為として違法性を阻却され,患者のプライバシーを侵害する不法行為にはならないとされた事例
4(仙台地裁平19.9.26判決)
大学入試センター試験の試験日直前に交通事故に遭った高校3年生について,センター試験の受験機会を逸したことに慰謝料を認めた事例
5(大阪地裁平19.10.31判決)
脳室周囲白質軟化症(PVL)に起因する脳性麻痺による運動障害を発症した新生児につき医師が事前にPVLに罹患していることを認識しながら両親に対し病名等の報告・説明を行わなかった場合において,医師に報告・説明義務違反があるとして慰謝料請求が認められた事例
[知的財産]
6(知財高裁平19.6.20決定)
特許無効審判において,訂正を認めた上で,一部の請求項に係る特許を無効とし,一部の請求項に係る特許について請求不成立とした審決のうち,特許を無効とした部分を特許法181条2項の規定により取り消すに当たり,審決中の訂正を認めるとの部分の確定や同法134条の2第4項の規定によるみなし取下げの範囲等が説示された事例
[諸 法]
7(東京地裁平19.10.1判決)
有価証券報告書に虚偽記載があることが発覚し保有していた株式の株価が下落したことにより損害を被ったとして株式を保有する株主から有価証券報告書を提出した代表取締役に提起された損害賠償請求が棄却された事例
[民事訴訟法]
8(東京地裁平19.7.11判決)
被告が当事者能力の欠缺を理由に訴えの却下を求めている場合において,訴えの取下げについての被告の同意が不要とされた事例
9(福岡高裁平19.4.17判決)
一方当事者への参加の取下げにより片面的独立当事者参加の様相を呈するようになった訴訟において,一方当事者のみが控訴した場合に,控訴しなかった当事者の請求も移審するか(積極)
[民事執行法]
10(京都地裁平19.9.25判決)
刑事事件の被告人の親族が,弁護人に対し,保釈保証金相当額の金員を預託したとの事実を認定し,その預託金返還請求権を差し押さえた差押債権者の取立請求を認容した事例
[倒産処理法]
11(東京高裁平19.7.9決定)
民事再生手続開始の申立てをした債務者会社が,粉飾決算をし,裁判所から求められた資料をすべて提出せず,また,再生手続開始に反対する債権者を債権者名簿に記載しなかったとしても,再生手続の開始を否定する事由があるとはいえないとされた事例
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