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SPECIAL
INTERVIEW社長インタビュー

雑誌界にDXを仕掛ける株式会社富士山マガジンサービスをけん引する神谷アントニオ、その素顔と哲学に迫る富士山マガジンサービス代表取締役社長の神谷アントニオの特別インタビューです。
富士山マガジンサービスを起業したきっかけから社風、社員とのコミュニケーション、今後の雑誌業界を見据えた会社の動きまで、
これまでの生い立ちや経験を交えてご紹介します。

富士山マガジンサービス
代表取締役社長 神谷 アントニオ

WHYWHATだけを
伝えたくて
HOW
みんなに考えて欲しい


ご出身はどちらですか?

香港です。香港と日本の混血として生まれました。幼少期は香港と英国で過ごしたので、少々日本語が苦手でしたね。また来日した際、中華圏で生まれたので、漢字は理解できますが、ひらがなやカタカナを駆使するのに苦労したし、日本語が通じず悩んだこともありました。

小学校と中学校は日本で過ごしましたが、高校からはアメリカのカリフォルニア大学バークリー校(UCB)に通って神経医学について勉強していました。あわせてアルバイトも始めましたが、そこでITエンジニアリングにのめり込み、期間中に起こったある出来事をきっかけに経営者を目指そうと決意したんです。

そうなんですね。
では、富士山マガジンサービスを起業したきっかけについて教えてください。

高校を卒業した1992年、インターネットに出会ったのがきっかけです。
それまで社会に出るためには、志望動機を書き、面接に受け、会社に就職する選択肢しかなかったのですが、
インターネットとの出会いによって、すべて自分でできるという時代がまさに突然やってきました。
それまではニフティサーブなど月々数千円支払わないといけなかったのが、大学に入るとeメール・アドレスを与えられ、全世界の誰とでも無償でコミュニケーションできるようになり、遠隔地とのリアルタイム・コミュニケーションのコストが著しく下がるほど、著しい変革でした。それまでに誰もやってなくて、そして誰もができる時代、
つまり、それまでに誰もプロのいないネットの時代がやって来たわけです。
当時はまだ自分自身でビューワーから作り込まないといけない時代でしたが、HTMLがやって来てきたことで、あっという間に解決しました。
ティム・バーナーズ=リー(※)が作ったこうした社会の変化のスピードを体感し、自分も参加したい『これに乗るべし!』と思ったのがトリガーですね。

※ティモシー・バーナーズ=リー
WorldWideWeb を提唱・構築したイギリスのコンピューター科学者。1990年11月には提案書 “WorldWideWeb: Proposal for a HyperText Project” を提出。NEXTSTEP上で世界初のWebサーバであるhttpdと世界初のウェブブラウザHTMLエディタであるWorldWideWebを構築する。同年12月20日、世界最初のウェブサイト http://info.cern.ch/ を公開、まさに世界に変革を促した人物。

インターネットの普及によって、時間の壁とあわせて言語の壁を崩そうと思い、1994年に翻訳会社を設立しましたが、成功とは言えない形で終わってしまいました。

1997年にGoogleが創業した直後、「カリフォルニア・ジャパン・クラブ」のメンバーで同じくUCBの相内遍理・取締役(当時)と意気投合し、98年にアメリカで在米日本人向けECサイト「Fujisan.com」を立ち上げました。しかし「生活」全般をターゲットとしたため、商品の在庫を抱える物販の難しさを痛感しました。

結局、人の言うことや聞くことが苦手で自分で納得したいという強い願望があるけど、知らないものにケチはつけられません。だったら自分で全部できるポジションになれば良い、そう考えた結果、2002年、在庫フリーで運用可能な雑誌専門のオンライン書店「Fujisan.co.jp」を立ち上げました。

富士山マガジンサービスの転機
創業から約20年経ちましたが、今後富士山マガジンサービスをどんな会社にしていきたいとお考えですか?

弊社は明確な売上の数値目標のもと、日本一の雑誌売上を誇る会社を目指して事業に取り組んできました。ところが上場後、雑誌の売上がマクロで下がり続ける点に危機感を覚え、デジタル雑誌配信サービスの立ち上げや記事そのもののデジタル化など、新しいチャレンジを続けて来ましたが、期待できるほど成長が見込めなかったんです。
そんな中、2018年に新たにmagaport事業(デジタル雑誌の取次事業)をスタートさせましたが、雑誌販売を主眼とした当社の中で、デジタル雑誌の取次は難しい挑戦でした。

また今まではCTOとして、テクノロジーの選択から開発、調達、運用までの責務を担っていましたが、テクノロジーが肥大化する中、社内で何人かの専門家だけが仕組みを理解している状況が生まれてしまい、企画担当者とその実装担当者のギャップがどんどん大きくなってしまったんです。その経験を受け、強い思いを持ってCOO(社長)として組織変革に取り組みました。

最初は社内の部門名や部門体制を変更し、機能単位を目的単位の組織形成に切り替えました。また同じ目標を目指すため、ビジョン、ミッション・ステートメントの書き換え、報酬制度の変更、成長を最大の目標とする取り組みも進めました。これにより社員の目標に対する成長が、組織全体のひとつの目標のみを目指すのではなく、複数の目標を目指す中、一体感を備え、社員のエンゲージメントを高めていきたいと考えています。

経営は、事業・資本・組織の3つが中心だと考えています。代表として、組織の長として、組織の改善、パフォーマンス最大化をミッションにしている。結局、人が一番重要な役割を果たすはずなので、組織がどんどんパフォーマンスを変えて行き、成長を促す仕組みを作り、ずっと成長していきたいですね。

失敗は恐れないが、怠惰こそ最大のマイナス評価
富士山マガジンサービスの社風について教えてください

「現状維持はNG」という考えです。もっと『こういう未来を見たい』という人に来てもらい、一緒に成長し、それを促し、その結果、チームワークが存在する中で、社員が自分のパフォーマンスと組織のパフォーマンスの最大化を目指していければと思います。「チャレンジを評価、失敗はできるだけ許容、ただし怠惰には厳しく」が弊社の社風です。

現状維持はNGというお考えですが、
社員に『辞令』を出すときは大変だったのではありませんか?

そもそも僕自身、『辞令』を出すのが嫌いです。理由は社員に、そのタイトルやポジションの中に収まって欲しくないからです。タイトルで認識しないといけないのは、権限ぐらいで(職責と職級)『この社員が、このドメインにおける責任者である』という点を全員に共有したいんですけども、業務上の役割はどんどん自身で見つけて欲しいし、『カスタマーサービス』という辞令を出したとたん、その人がカスタマーサービスだけしかできない、しちゃいけないというのだけは、考えてほしくないんです。

社員が会社の中で、自分を磨き、技能を追加するなど、縦方向へ自身の生産性を最大化してほしい一方、より多種な職務を担当できる横方向への成長も期待したいと考えています。
それまで3日必要だった業務に対し、2日でやり遂げるのもチャレンジなら、これまで手をつけなかった業務を遂行したり、今までやってこなかったことにチャレンジしたりする姿勢を全社員に持ってほしいです。
『僕はエンジニアだから』『私は営業だから』という考え方は無意味だし、そこに辞令の危険性があると思うので、嫌いなのです。責任者がかわる、決済権を持っているのを伝えないといけないのは自覚していますが、自分の役割を辞令で限定してほしくないと思います。

目指すのは「どんどん意見できる人、どんどん意見できる会社」
どんな社員の方が活躍していらっしゃいますか?

弊社はほとんど転職組で、勤続10年以上在籍しているメンバーが多いのが特徴です。そんな中で僕の役割は心理的安全性を担保し、自分の意見をしっかり発言できる会社を作ることです。まだみんながオープンに意見できるほど、心理的安全性が構築できていないのだろうか反省点もあるので、そこにはチャレンジし続けなければいけないと考えています。新しいものが好きなメンバーも多く、それぞれ以前の勤務先からの成功体験が違うので、いろんな意見があります。経営陣がしゃべり過ぎな点は見受けられますが、そんな経営陣と闊達に議論してほしいので、どんどん意見できる人にぜひ来てもらいたいし、意見できる会社であるべきだと思います。

現在のシュリンクして行くばかりの日本経済の中においては、転職先の取り合いになっている。つまり『なかなか転職できない』という不安材料が深層心理にあり次へのチャレンジがしにくい。弊社では社員に挑戦、成長を促すことによって、チームワークの中で実績と業績を挙げ「どこでも通用する」という転職力を身に着けてほしいと思っていますし、そんな社員の集合体にしていきたい。僕自身は、社員にとっての最強の投票権は転職にあると思います。『もうこの会社無理、辞めます』ですよね。景気に左右されるリクルーティング市況によらず『いつでも自分は転職できる…でも、この会社が魅力的だからこそ残る』、そう思ってもらえる会社にしたいです。

「生きがい」を見つけやすい会社、「生きがい」を見つけやすい社会の実現
社員が長く働けるようにするため、考えていることはありますか?

僕自身、会社が一番楽しい場所であるべきだと考えており、そのために会社はどうすべきなのかと考えています。嫌いなことをやっていても誰も楽しいわけがないじゃないですか。自分が好きなことを自分の生業にするのは重要だと思います。

生きがいには『好き→得意→収入になる→必要とされる』と4ステージがあるそうで、僕自身は最終ステージを、仕事にできる、生業にできると解釈しています。好きでスタートし、いつしか得意になり、それがアルバイトとして収入になり、いつしかそれが専業のプロになる。興味が生きがいになって行くのが望ましいし、幸せって好きなことやって喰っていけることだと思います。

好きなことを仕事に…例えば、単純にダンスが好き、べらべらしゃべるのが好き、人を支えるのが好き…、そのままでは仕事にならないかもしれませんが、ダンスの要素から抽出される業務、しゃべるのが好きなら営業トークかもしれない、人を支えるなら福祉や難民支援などあるかもしれません。

社会的に鬱だ、鬱だというのは結局、それほどまでに仕事が嫌いだからという原因は大きいと思います。仕事が嫌いで食べる気力も起きないと、生命体として終わってしまう。そうならないために、『生きがい』を見つけやすい会社、『生きがい』を見つけやすい社会の実現を考えて行きたいです。

9割がリモート、月に一度はオフィスへ
これから先、富士山マガジンサービスでどんな働き方を行っていきたいですか?

弊社はおよそ9割の社員がリモートワークで働いています。最近のワークライフ・バランスを考慮し、どこでも働ける会社を目指していますが、それをどう実現するか…。働く場所として、オフィスが理想的…と社員に思ってもらえるように心がけています。そして、少なくとも月に一度は出社してほしいですね。

リモートワークで生産性が上がるか、下がるかは、社員と経営者では定義が異なります。まずは社員にとって通勤による移動時間が、例えば往復1時間からたった30秒になれば生産性が上がりますよね。また業務前後に幼稚園の送り迎えとか日常の買い物との距離を考えると在宅のほうが生活の中で生産性アップが明らかです。

これに対して経営の視点から眺めると、電話でお客様とトラブルが発生しているケースでも、オフィスにいれば可視化できますが、リモートだとすぐに把握できませんし、その傷の深さも把握できない。よって、サポート&トレーニングをどう実現するかが大きなテーマです。

それでも当社ではアクティビティ・ベースド・ワーキング(ABW)は進めています。やはり業務内容によって最適な選択肢があるのが重要ですよね。事務作業ならもう積極的に在宅で進めてください。チームワーク構築…それはオフィスでなくても、どこかで一箇所に集まる必要がありますよね。

経営陣の役割は、あくまで働く場所としての理想は「オフィス」という環境を構築すること。光熱費を気にせずともオフィスに来ればいつでも温かいよ、美味しいコーヒーも、ランチもフリー、おやつもあるよ…そもそも物流の拠点として大きな荷物も受け取れるし利便性が高いとか。例えば、クリーニングの受け取りまでできるなど、どのカフェよりも仕事がしやすい場所がオフィスにできるのが理想です。

その上でワーキングルールとして、社員自身がサテライト・オフィスなども含め、もっとも生産性が高い場所を選んでもらえればと思います。思いやりを持って働いてもらえれば嬉しいけど、社員同士がお互いを知らないというのは、会社のセキュリティ上も問題になりそうなので、月に一度ぐらいの出社は促したいと思います。

新しいインフォメーション・ランドスケープにおける雑誌のありかたとは…
今、日本の雑誌業界は1997年の1兆5644億円をピークとし、21年の売上は5276億円と約3分の1まで減少したため、ゆえに「斜陽産業」と叫ばれていますが、現状はどのように考えていますか?

そもそもその数字は、あくまでも「紙」として発行される売上であり、『雑誌=紙』と限定するのは疑問に思うし、雑誌を斜陽産業だと断定する方は、そもそも『雑誌』という漢字の意味を捉えていないからだと思います。『雑誌』には、どこにも「紙」という漢字は含まれていません。

創業当初、我々はこの漢字を因数分解して考えました。その結果、雑誌そのものは、様々な知識、言葉のつまった志なんですよ。雑誌自体は中身、コンテンツを体現しており、それが紙でなければいけないと思い込んでいる。「その短絡的な思考はどうにかして!」というのが、僕の心の叫びです。『雑誌って紙だよね』と点から、いかに脱皮していくかが課題であって、我々の社外向けのサービスとしても『雑誌は紙で提供しないといかん』という概念から飛び出して行かないといけない。弊社は雑誌というオールドの中にニューを見つけられる独特のポジションにあり、その可能性を感じています。

最近はインターネットやSNSを使って
情報収集をする時代になってきましたが・・・?

Googleが優秀過ぎるのが問題なのかもしれませんが、大量の情報を提供するものの、情報が過多で正誤がわからなくなっているのに、ユーザーはそれを選ぶ責任が転嫁されています。
Twitterである人が何かをつぶやいても『それは本当か』と、また検索をかけないといけない。世界の80億人が1日1分を検索に時間を割くだけで、1日5分をファクトチェックに費やすだけで、いったいどれほどの生産性を犠牲にしているか。この正解を編集長、編集者だけがもたらすだけで、どれだけ人類の生産性に貢献することになるか。これを斜陽産業として片付けると、膨大な時間を失います。

以前ファクトチェックするのは、編集長、編集者だけやればよかったのが、日本だけでも1億人に拡散され、多大な無駄を生んでいると思います。

昔は雑誌『JJ』(最盛期に約80万部を誇った光文社発行の女性ファッション誌。2020年12月をもって休刊)に掲載されていれば、それはすなわち流行りのファッションだったと思いますが、そのファクトに問題があったとしたら、掲載されている電話番号、メール・アドレスに『けしからん』とクレームすることができたでしょう。選別され、編集され、信頼できる情報が必要な点は、未来永劫変わらない。その役割が、雑誌にはあります。

「雑誌のブランディングを維持するためのコスト構造は?」「どうやってビジネスモデルとして作るか?」「そのブランドを維持できるのか?」広告モデルなのかサブスクなのか、広告モデルだと広告主の意見も反映されるから信頼性が落ちる…それを我々はしっかりブランディングし、雑誌はなくなってしまうだけの文化なのか…そこは意識して分別するようにしています。

我々がもっとも得意とするのは出版社との関係です。インフォメーション・ランドスケープがこれだけ劇的に変化し続ける時代に、まだまだ社会がその変化についていけていないと思うんです。

そんな中、出版社とともに、信憑性が高い責任の所在が明らかな雑誌コンテンツを、新しいSNSや新しいメディア環境、新しいインフォメーション・ランドスケープにおいて、その情報の所在はどこなのか、それ導いていけるような会社を目指しています。

経営者として、コミュニケーション・ギャップを生まないように心がけています
社員とのコミュニケーションも大変そうですね・・・

今でも『言っていることがわからない』と指摘されることが多く、まだまだ苦労しています。コンテクストを正確に理解しないままに発言してしまうと違和感を持つ方も生まれます。特にビジネスにおいては、その誤解が生むコストによる損失は大きいので、慎重になる部分は否めません。コミュニケーションの正確性という意味では、自己評価はだいぶ低いです。

私は経営者として、そうしたコミュニケーション・ギャップを生まないように心がけてはいます。マイクロマネジメントはしたくない。目的は伝えるけども、手法は伝えたくない。まぁ、よく伝えちゃうってトラブルを起こしますが(笑)。
やはり、WHYとWHATだけを伝えたくてHOWはみんなに考えて欲しいと思います。
その割には、ドキュメントのタブの使い方まで指示して煙たがられますけどね(笑)。