第32回 小悪魔ageha(小悪魔アゲハ) 編集長 中條寿子さん

- キャバ嬢のバイブルともいわれた雑誌ですが、実は若い女性の心をさまざまにくすぐる個性的なギャル雑誌、ファッション雑誌というべきかもしれません。ヘア&メイクのみならず、読み物にもキラリと光るものが多いですよ。
…キャバクラで働く子と同じ感じで、店のナンバー1を目指すように専属モデルを目指して頑張るみたいな構図なんですよ。
―創刊号からいきなり評判になりましたね。

編集部員の机の引き出しにはバックナンバーがずらり
5万部刷って増刷がかかりました。とにかく私としてはいままでのギャル誌のいいところを全部もらって、それに足らないものを加えて、自分のエッセンスも加えるわけなので、絶対いけるという自信はありました。
私がいわゆるギャルだったころって、なかなか読みたい雑誌ってなかったんですよ。「プチセブン」(小学館)「セブンティーン」(集英社)は大好きでした。いわゆる当時のギャル誌でしたが、ちょっとキレイめでした。「エッグ」(太洋図書)もちょっと後から来た。
そんな私が、16歳のころ「ヘブンズドア」(ミリオン出版)という雑誌に出会ってびっくり。等身大の自分がそこにいたんですね。あ、これだ、と思ってむさぼるように読みました。
そのときの感動はいまでも残っていて、できればその頃の私の思いを伝えたい、ギャルたちにリアルなことを見せてあげたい、って思うんです。
―いつから編集という仕事に興味をもったのですか。
もともと小学校の頃からなりたかったんで。私、高校を途中でやめて、いまで言うニートみたいな生活をしてたんです。
かっこよく言うと、いまこの年でできることはいまやらねばならない、この年で着れる服はいま着なければならない、この年で遊べる遊びはいまやらねばならない、って思って行動してましたから。でも、途中で雑誌をつくりたいっていう小学校の頃の夢を思い出して、大検受けて大学に入ったんです。
大学に入ったはいいけど、出版社に入社するのは難しい。編集の世界ってそう簡単に入れないといわれていたので3年の終わりにスポニチでバイトして、そしていまの会社の前身である英知出版に4年の終わりころにバイトで採用されました。表玄関から入って就活してもダメだろうから、とにかくバイトで潜り込んで、仕事で認められて社員にしてもらおうという魂胆だったんです(笑)。
―この雑誌はやはりコンビニで売れてるんでしょうか。派手で目立つ表紙だから印象的です。

細かい作業が多いのも特徴だ
そうですね。コンビニでは表紙が目立つという意見とそうじゃないという意見があるんです。年配の方はおおむねこの表紙はキラキラしすぎてて逆に目立たないって言うんです。
この雑誌、キャバクラで働いている子が店終わって帰りにコンビニで買って帰れるようなつくりを基本にしているんです。読者平均をとると21歳というデータになるのですが、18〜30代後半までいろんな読者がいます。でもやはり夜の仕事を通過している子が多いですよね。
キャバクラの控室やセットサロンにもバックナンバーが置かれているんですが、なかなか店で読んでる時間ないですよね。だから店ではパラパラ見て、帰りに買ってしっかり家で読む、と。
彼女たちの生活に必要なものはヘアにしろメイクにしろひととおりカバーしてます。
―派手なつくりのなかに、実は「病」や「闇」を特集で大きく扱った号があったり、かなり社会派な内容も入っていますね。上京する女の子のストーリーなどつい読みこんでしまいました。
やはり煌びやかに見える世界には闇があるし、夜の仕事って、本当はすごい大変じゃないですか。派手で綺麗な面ばかりだと、どうしても誌面が嘘っぽくなる。なので、しっかりリアルをやりたいと思って。
でも、そういう企画ができるようになったのも最近で、最初はなかなか重くて暗いテーマはやりにくかったですよ。
―競合誌ってあるのですか。
ちょろちょろ出てくるみたいですけど続かないようです。やはり男の人が会社から「小悪魔agaha」みたいな雑誌つくれって命令されてつくっても、感覚が全然違うから読者に届かないですよね。多感な女性読者には、等身大で同じ目線で、趣味や悩みがわかりあえるみたいな中身と見せ方をしないと共感してもらえないですよ。
創刊当初から併読誌のジャンルは多岐にわたっています。ギャル誌だけじゃなく「ケラ」(インデックス・コミュニケーションズ)や「キャンキャン」(小学館)買って「小悪魔ageha」を買うという人も増えてるんです。メイクとヘアだけは見たいとかって。
―いわゆる男目線というか、「モテる」というテーマについてはどんなスタンスなんでしょう。
好きな人にはモテたい、かわいい女でいたいんですが、それと「いろんな男にモテる」は違います。むしろ自分のかわいさの完成形を目指すほうが、いろんな男にモテることより重要なんです。
うちの雑誌の読者は、いわゆる青文字雑誌を読んでる子や赤文字雑誌を読んでる子よりは確実に男につくすタイプだと思います(笑)。
生まれつき家庭や容姿に恵まれない子の教科書だと思います。ルックスに自信があればそりゃメイクもしないしTシャツ1枚ですよ。でもできない。だから自分でいろんなものを獲得していかざるを得ない。そんな子へのメッセージは満載です。生まれつき金持ちで美人には必要のない雑誌です(笑)。
―いろいろ白状してくれてありがとうございます(笑)。webや携帯への対応などはいかがですか。web通販はかなり好評ですよね。

編集部の看板代わりのちょうちん
私もそうですが、読者の多くは機械が苦手、パソコンに接する機会も少ないんです。私、女性は機械より、紙や木といった自然なもののほうが相性がいいんだと思ってる。だから雑誌についてはよくわかるんですが、パソコン系はお手上げなんです。
ネット通販も会社主導ですから、儲かってるとか儲かってないとか、私は正直あまり理解できていないんです。
携帯はみんな使いますよね。ですから誌面にはQRコードをつけて、そこから買えるような仕組みにはしています。
―休日あるんですか。
いや、仕事してるか寝てるかの生活です。細かい作業してますし、仕事がらみの付き合いとかもありますし。
温泉も好きですが、ただお湯につかるだけなら行かない。そこにかわいい女の子がいてスカウトしたかったらそれを目当てにその土地へ行って、ついでに温泉に入る、日々本当にそんな生活なんですよ(笑)。
(2010年3月)

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インタビューってどこか音楽セッションのような感じがしていて、私は毎回いろんなミュージシャンと共同で音作りをしているんだなという気で望んでいます。言い換えれば、プレイヤーの持ち味をどれだけこちらが引き出せるのかで、その日のセッションの良し悪しが決まるのです。
ジャズテイストの人もいれば、ロック魂の人もいる、クラシックもいれば、演歌もいる。でも、中條さんってどうなんだろう。お会いするまではなかなかそのへんがわかりにくかったのですが、目の前で話し始めると意外や意外、どんな球を投げても返してくれるし、アドリブ対応してくれるし、サービス精神旺盛なフレーズを弾いてくれたり・・・と、とにかく会話のとぎれがないほどスリリングなセッションになったと思っています。限られた時間でしたが面白かった。ギャラリー にも大変うけてましたね。遅まきながら若い女性の気持ちが少し分かったような気になりました。流石です。「小悪魔ageha」編集長は極めて個性的、かつ接客のプロでもあるわけです。思わず「延長お願いします」と言いそうになりました(笑)。
その模様は同行した富士山創業者のヘンリがUstで流すといってずっと撮っていましたが、NG箇所が多いからなあ。編集しないと流せないでしょうね。どうします中條さん。そんなことさせていいですかぁ。

インタビュアー:小西克博
大学卒業後に渡欧し編集と広告を学ぶ。共同通信社を経て中央公論社で「GQ」日本版の創刊に参画。
「リクウ」、「カイラス」創刊編集長などを歴任し、富士山マガジンサービス顧問・編集長。著書に「遊覧の極地」など。







