第74回 週刊少年マガジン 編集長 森田浩章さん

この雑誌
創刊50年を超える、コミック雑誌の雄。「巨人の星」「あしたのジョー」「ゲゲゲの鬼太郎」などを産み、いまなお日本のコミック界をリードする、男心をくすぐる雑誌です。少年の心を失わない人には欠かせない1冊です。

週刊少年マガジン 表紙

■この雑誌の最新号■

週刊少年マガジン 表紙

定期購読バックナンバー

週刊少年マガジン
発行間隔:週刊
発売日:毎週水曜日
出版社: 講談社
編集長プロフィール
講談社
「週刊少年マガジン」編集長  森田浩章さん
編集長写真
もりたひろあき 1963年生まれ。1987年講談社入社。モーニング編集部、ヤングマガジン編集部を経て、2004年から現職。

頑張れば報われるといったメッセージを忘れないでいたい

――入社されてからずっとコミックの編集に関わってこられたのですか。

編集長机脇のバックナンバー資料
編集長机脇のバックナンバー資料

そうですね。「モーニング」「ヤングマガジン」とやって、「週刊少年マガジン」には編集長としてやってきました。それからもう編集長を7年。名編集長といわれた内田勝さんの6年の記録を抜いてしまって、いいのか悪いのか(笑)。

講談社は入社試験や配属の時に一応希望部署を訊かれます。僕はもともと書籍編集を希望していました。本が好きでしたし、形として残るじゃないですか。それが、いつのまにやらコミック編集一筋25年。ほかの仕事はなんにも知らない。これもいいのか悪いのか(笑)。

――コミックの編集者って、作家に作品を頼みにいってもなかなか描いてもらえず、シメキリもギリギリで、胃が痛くなるようなイメージで語られたりしますが、これはもう古いですよね。

そうですね、いまは違います。とても締め切りに間に合わないとなると、編集が早めに編成から落とします(笑)。だから編成表は常に変化してますよ。そりゃなかには二晩徹夜して仕上げる作家の方もいますが、昔より時間管理はしっかりしていますし、編集部の仕事の回し方は昔よりはスムーズなんじゃないでしょうか。

いまのうちの作家でいうと森川ジョージさん(「はじめの一歩」を連載中)が一番遅いかな。この場を借りて、もうちょっと早く上げてほしいとお願いしたいくらい。

――一時は500万部近くまでいった「週刊少年マガジン」ですが、いまは3分の1くらいだといいます。編集長としてはアタマが痛いところかもしれませんが、対策などはあるのでしょうか。

いまコミック誌はどこもだいたい全盛期の3分の1くらいまで部数が落ちているのではないでしょうか。もちろん、相当いろんなことを考えて対策は打っていますよ。でも「買う」「買わない」これだけは読者が決めることですから。

漫画市場では全体的に、雑誌部数は落ち込み、単行本が伸びています。うちでも今年になって単行本の売上が雑誌を上回ってきました。収益の構造も完全に変化してきたということでしょうね。同じ編集部で「別冊少年マガジン」という増刊を出しているんですが、その部数はたかが知れてます。ところが、そこからミリオンセラーになる単行本が生まれたりする。

ただ、本誌である「週刊少年マガジン」の部数はなんとしても死守しなきゃなりません。本誌でも単行本さえ売れりゃいいんだよなんてことになると、漫画文化そのものが死んじゃうような予感すらします。僕が編集長であるあいだは、それは許さない。単行本は売れなくてもいいから、雑誌上で1位人気をとってくれと部員に言い続けてます。

――雑誌のクオリティを守るということでしょうが、具体的にどのようなことをされてますか。

会議資料が編集長机の前に置かれている
会議資料が編集長机の前に置かれている

漫画雑誌ではそれは簡単な作業です。人気の高いものは残し、ダメなものは外して、どんどん作品を入れ替えていくということです。先輩編集長である五十嵐(五十嵐隆夫氏、現講談社顧問)は、「編集部は工場みたいなもんだ」と言ってました。工場をうまく回して、新商品をどんどん開発生産して、売れなきゃ別の商品に変える。僕もそう思っています。

大団円で終わるものよりも、打ち切り作品のほうが断然多い。僕としては月に1本は新しいものを入れて、古いものと取り替えたいくらいの気持ちです。

――人気のあるものとないものって、どのように調べているんですか。

読者アンケートを見て判断しています。携帯、ハガキなどでアンケートが毎回1万通以上来ます。それを見ているとどれが受けていて、どれがダメというのは分かります。ざっくりとですが、20ページくらいの作品を1回掲載するのに、紙や印刷代の原価費用として300万円くらいかかっているんですよ。だからそれに見合うものを出していかないとダメだと思っているんです。

――この作品はいけるとか、いけないとか、いままでの経験から分かることってありますか。

これはねー、何とも言えないんですよ。それができれば10割バッターになれる。編集者もプロ野球と同じで3割打てれば合格でしょう。もちろん数多い候補の中からどれを新連載にするかは最終的に編集長の判断ですが、いろんな観点から判断しますしね。その作家の隠れた才能とか、成長速度とか、モノとしてある絵とストーリーとは別の判断も加味しつつ。

物語が進めば、いけるかいけないかは、ある程度は判断できますが、しょっぱなから読者の反応を読むことはできないし、あんまりしようとも思ってません。編集長はそれくらいニュートラルに全作品に接しないとダメだと思うし。

――でも森田さんは、「カイジ」をはじめ、多くのヒット作を手がけておられます。

僕はラッキーだったと思いますよ。マンガバブルの頃にいろいろ手を出してますから(笑)。その結果わかったのは、お金を出して買っていただいている読者の方はあなどれん!ということです。自分のやった仕事がうけなかったからといって読者のせいにしているようじゃまだまだ半人前。これは、漫画編集者やってるうちに身にしみて分かってくると思うんです。読者と添い寝するくらいの気持ちでないとダメだと思っています。でも一般にうける商品って何でもそうですよね。

――「週刊少年マガジン」の「ブランド力」という言葉をよく聞くのですが、これは何だとお考えですか。

ポスターがいたるところに

ポスターがいたるところに
ポスターがいたるところに

いまの「週刊少年マガジン」って、個人的には、梶原一騎さんが父親で、ちばてつやさんが母親だと思ってます。われわれはずっとその伝統を守っているんだなぁって。いわゆる“スポ根”ですね。ですから、この文化から外れたことをやるとうまくいく確率は低くなります。

ヒットした「魔法先生ネギま!」もいわゆる萌え系ですが、仲間との友情やスポ根的世界観が底流に流れています。やはりこういった作品の根底にある世界観がわれわれの雑誌のブランドなんだと思います。

やはり、とくに若い読者に対して「頑張れば報われるぞ」といったメッセージはちゃんと出したいんです。少年誌はそうでないといけないと思いますし。いまそういうリアルな世界を扱う媒体って少ないんですよ。

――スポーツの世界をロジカルに語れる雑誌、という評価をしている人もいます。スポーツの世界を深く理解している編集者が多いのでは。

そうですね、それはあるかもしれません。さっき話に出ました「はじめの一歩」ですが、作者の森川さんは、いくつか前作で失敗しているんです。この作品はボクシングを描いて大成功したのですが、いくらボクシングが好きでも・・・・(次頁へ続く)

[ 1 | 2 ] 次へ

編集長の愛読誌

1.週刊プレイボーイ(集英社)
 週刊プレイボーイ表紙
AKBブームの牽引雑誌。その心意気に尊敬します。
2.週刊文春(文藝春秋)
週刊文春表紙
これはクセで買ってます。小林信彦氏のコラムは毎週すごい。
3.スラッガー(日本スポーツ企画出版社)
スラッガー表紙
メジャーリーグのマニアなんです。
4.FRIDAY(講談社)
FRIDAY表紙
スクープとるのにどれだけの苦労してるんでしょう。
5.週刊ダイヤモンド(ダイヤモンド社)
週刊ダイヤモンド表紙
特集って編集力の勝負ですよね。それがよくわかる雑誌。

この雑誌の詳細はコチラ

編集長インタビュー一覧へ

このページのTOPへ
雑誌のFujisan.co.jpTOPへ