第25回 考える人 編集長 松家仁之さん

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情報の洪水のなかで日々過ごしていると、いいかげん疲れます。ゆっくりそれらを咀嚼し考えることすらおっくうになります。そんなときはまずは立ち止まりましょう。こんな雑誌に目をとめてみるのも、素敵な時間の使い方かもしれませんよ。
 

考える人 表紙

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考える人
一冊定価:1400円
発行間隔:季刊
発売日:1,4,7,10月の4日 
出版社: 新潮社
編集長プロフィール
新潮社
「考える人」編集長  松家仁之さん
編集長写真
まついえまさし 1958年東京生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、1982年新潮社入社。
「小説新潮」「SINRA」編集部を経て、出版部へ。1998年翻訳書シリーズ「新潮クレスト・ブックス」を企画、創刊。2002年季刊誌「考える人」を創刊。2006年から「芸術新潮」編集長を兼任。2009年より慶應義塾大学総合政策学部特別招聘教授を兼務。

激動の時代だからこそ「シンプルな暮らし、自分の頭で考える力」が大切なんです

―「考える人」「芸術新潮」2誌の編集長をされていますが、今回は「考える人」をメインに聞かせてください。「考える人」もついにweb特集(2009年秋号)かと、やや複雑な思いでいます。どういう立ち位置でつくられましたか。

編集長の机。音楽が欠かせないのでipodは必需品です
編集長の机。音楽が欠かせないのでipodは必需品です

特集「活字から、ウェブへの・・・・・・。」ですね。

いま出版の世界では、このままではwebに席捲されて、紙に軸足を置いた仕事ができなくなるのではといった側面ばかりが語られているような気がして、そこをもう一度しっかり考えておこうということなんです。

個人的には紙に印刷された本はなくならないと考えています。

グーテンベルクが印刷を発明してから約550年がたつわけで、紙に印刷されたメディアというものは、すでにわれわれに身体化されています。つまりわれわれの無意識のなかにも深く入り込んでいるわけで、この部分、この魅力をきちんと振り返りつつ、電子メディアとどうつきあうか、ということを考えなければと。

紙はもう終わり、これからは電子メディアだ、というふうには思いません。当面は両輪なのでしょう。特集の「・・・・・・。」の部分で言いたかったのは、現状に警鐘を鳴らすことでもなく、また紙メディアをすべて過去の遺物として後ろ向きに見るのではなく、それらの「あわい」のなかで魅力を探ろうと思ったんです。

―電子メディアの世界から出てきた人たちの声も多く取り上げられています。

実際、PCや携帯でじっくり腰を据えて本を読むという人がどれだけいるんだろうと気になっていましたが、やはりまだ読む電子端末が開発途上のためか、ネットの世界の人たちでもなかなか電子端末でじっくり本を読むというには至っていないようです。

ネットの世界は検索など即時性の素晴らしさは価値があるけれど、身体化された紙の書物の持つ領域に至るまでにはまだ時間がかかるのでしょうね。

―紙で育った人はデジタルを「あちら側」といい、デジタルから来た人はその逆をいう。対立するのではなく、まさに「あわい」を楽しむことが「いま」的な捕らえ方だと思います。でも、本当にそんなに悠長に構えていられるのでしょうか(笑)。

「芸術新潮」副編集長と特集を打ち合わせる
「芸術新潮」副編集長と特集を打ち合わせる

そこは問題ですね。私のように50歳を過ぎた人間がどれだけそのスピードに対応していけるのか。やはりもっと若い人たちに多くのチャンスがなければならないですね。

雑誌協会の動きをみていても私などでも驚くほど悠長です。でも、この世界に入ってくる若い人たちは本当に優秀なんですよ。やはり出版や編集という世界にはまだまだ多くの魅力と可能性が秘められているはずです。

―SFC(慶応義塾大学湘南藤沢キャンバス)でも講義をされていますが、学生たちの出版や編集への興味はいかがですか。


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縁あってこの春から週に一日だけ講義をしています。みんな熱心で、積極的です。だから紙による出版がもう終わりということではまったくないと思う(笑)。

実は、webマガジンを学生と一緒につくれないかと思ってやり始めた部分も大なんです。この秋(09年)からは「知識産業マネジメント」「インタビュー法」「webマガジン研究会」の3コマを担当しています。とにかくみんな勉強熱心なので、こちらも準備が大変ですが、若い読者でもある学生とのやりとりのなかにこそ次のヒントがあるはずと思っています。

学生たちはwebをものを調べたりする道具として上手に使い、長編小説などは紙で読むといった具合に使い分けていますね。

私は正直に出版業界の問題点を話していますし、可能性も同時に伝えているつもりです。

おもしろいのはやはりいまこの業界が激動の渦中にあって大変ではあるけれど、だからこそかえって新しいことに挑戦できるということだと思います。

―松家さん自身、編集者になった理由は何ですか。

私は、学生時代に文藝春秋でバイトしていて、そのときの影響が大きいですね。

季刊誌の「くりま」編集部だったのですが、自由な雰囲気のなかで雑誌が少しずつ出来上がっていくことに面白さを感じました。編集の人たちもみんな知的好奇心が旺盛で個性的でインテリでした。

そこで編集者になろうと思い、好きだった翻訳書をちゃんとつくれるところを探しました。晶文社が第一志望でしたが、電話したら・・・(次頁へ続く)

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