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今月のWeb人 富士山マガジンサービス 代表取締役 西野伸一郎

月刊ネット販売 2003年 Vol.4
今月のWeb人
富士山マガジンサービス
代表取締役 西野伸一郎氏

<経歴>
88年、明治大学経営学部卒業、NTTに入社。93年から3年間ニューヨーク大学院に留学しMBA(経営学修士号)を修得。帰国後、ポータルサイトgooの立ち上げなどに携わり、98年にインキュベーション会社のネットエイジの設立に参加。同年、アマゾンジャパンの会社設立に携わり、01年のサイト開設以降、書籍担当のブックジェネラルマネジャーに就任した。02年7月に富士山マガジンサービスを立ち上げ、社長に就任。8月にアマゾンジャパンを退社。現在、ネットエイジ社外取締役も兼任している。

アマゾンジャパン立ち上げに参加

雑誌販売サイトを運営する富士山マガジンサービス(本社・東京都渋谷区、西野伸一郎社長、URL:http://www.fujisan.co.jp)の西野社長がそもそも出版業界と関係したのは、アマゾンジャパンのサイトを立ち上げてからのことだ。
紀伊国屋書店がサイトを立ち上げて間もない98年当時は、ネット書店の黎明期。書籍という商品におけるECの可能性をアマゾンドットコムに見た西野氏は仲間とともに同社のジェフ・ベゾス社長に手紙を送り、日本法人設立という形で事業展開にこぎつけた。
とはいえ、サービス開始の前後は問題が山積みだった。書籍担当(ジェネラルマネージャー)に就任したものの、出版業界に接するのは初めてのこと。業界独自の流通構造や商習慣を理解するまでに時間がかかった。外資企業の日本進出、とりわけ“ネットイコール中抜き”の図式が強調された当時、最初は業界から否定的な存在としてみられたようだ。
取次ぎや出版社などの関係者は電話連絡などの接触を嫌い、人目につかないホテルの一室でなら会ってもいい、といった拒否反応もあったほど。商品供給を避けたり、売れ筋でも少量しか卸してくれない業者もいたという。こういった紆余曲折を経たものの、アマゾンジャパンの業績拡大とともに“売れる書店”として影響力が増し、関係は改善されていったと西野氏は振り返る。

雑誌購読のニーズに着目

出版業界に身を置いて気付いたのが、既存のネット書店でも雑誌の販売を手がけているサイトがないことだった。雑誌は書籍と違い、情報商品としての“賞味期限”がある。版元への返本ができず、取次ぎも在庫を極力薄く抑えている。売る側にとっても、顧客が自社の店舗で定期的に買い続ける保証でもない限り、まとまった量の仕入れをするのが難しくなるわけだ。
雑誌の市場規模は書籍市場の約1.5倍の1兆5,000億円。一般に3,000~4,000種類の雑誌が流通しているといわれるが、出版不況の中で書店が潰れる状況にある上、コンビニで流通するものでも売れ筋の200~300種類という数字にすぎない。要するに消費者が買いそびれている状況があるわけだ。
そこで考えたのが定期購読を中心とした雑誌専門の販売サイト。米国では古くから定期購読エージェンシーという同様の業者が存在している。日本では未着手な分野で先行メリットがあること、売れ筋からマイナーな雑誌にわたるまで毎号購入する読者が存在することから、事業としての見通しがあると判断した。

先行メリットで勝ち組みを目指す

アマゾンジャパンの退社と前後して新会社を設立し、3月から雑誌の販売サイト「富士山マガジンサービス」を立ち上げた。現在、約100社、300誌の定期購読を受け付けている。ユーザーから受注後、発注データを流し、それを受けた各出版社が発売日に合わせてユーザーに発送。同社は出版社から手数料を徴収する仕組みだ。
当面の課題はサイトの認知度向上。ヤフーやエキサイトなどと提携し集客を図るほか、既に1,000のサイトとアフィリエイトを行っている。ネット販売市場の中でヤフーや楽天などサービスを先行した事業者が勝ち組みとなっている現状から、雑誌販売の分野でサービスの独自性と先行メリットを発揮することが今後の生き残りに繋がると語る。