日本最大級の雑誌数 定期購読者100万人以上!

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日本経済新聞 2006年07月24日号
小学館、電子雑誌に参入
10月にも「紙」と同じ料金・体裁 小学館は10月にも電子雑誌出版事業に参入する。既存雑誌の電子版を制作して定期購読者を募り、紙の雑誌と同一料金、同じ体裁でインターネットで販売する。紙版の店頭販売も続ける。国内雑誌市場はネットなどの影響で縮小が続いている。既存雑誌の廃刊やネットへの移行が相次いでいるが、小学館はネットで新規読者を掘り起こしながら、既存雑誌の充実を目指す。 既存雑誌と両立狙う 同社は10月にも生活情報系、娯楽系などの月刊誌で電子版をつくる。年内には3誌に拡大する。定期購読契約をした電子版の読者だけを対象に紙版の雑誌と同一料金、ほぼ同じ販売日程で配信する方針。デジタル版雑誌は自社ポータル(玄関)サイトではなく、雑誌定期購読専門サイト「フジサン・シーオー・ジェーピー」に委託して販売する。

デジタル版雑誌を閲覧する際には米ジニオ・システムズが開発した閲覧専用ソフトを使う。読者はサイト上で無料で入手できる。ジニオ社製ソフトは、読者がパソコン画面上で紙のページを1枚1枚めくるようにしながら読める機能を備えている。

従来の電子雑誌は、ホームページ上で文章や画像を提供する形式が一般的だ。これに対し、ジニオ社製ソフトでは文書や広告を紙版雑誌と同じように表現できる。紙の雑誌を作成する工程を利用して電子版を作るため、新たなコストや作業を費やさなくても済むメリットがある。紙版と同じ広告主を期待することもできる。

11月にはネットだけで提供するデジタル版雑誌も創刊する。デジタルを軸に事業の新たな魅力作りを進める計画だ。

小学館は欧米ではデジタル版雑誌の発刊後も紙版と合わせた出版部数が増えているケースに着目。欧米ではビジネス誌やIT(情報技術)系誌500誌以上が同様の仕組みでデジタル版事業を両立させている。

同社は昨年、出版事業の将来像を探るためネット・メディア・センターを新設。デジタル化への対応を模索してきた。編集部に新たな作業負担をかけずに、紙版とデジタル版を共存させる新たな雑誌事業が収入の新たな柱になると判断をした。 出版、電子化対応急ぐ 電子書籍市場は05年の市場規模は前年のほぼ2倍の100億円ともみられ、急拡大している。出版不況が長期低迷するなか、各社は電子化への対応を急ぐ。ただ電子書籍は紙媒体と比べると規模そのものはまだ小さく、どのように収益に結びつけるのかは模索状態だ。

全国出版協会・出版科学研究所の調べでは、2005年の国内雑誌市場(推定)は販売金額が前年比1.8%減の約1兆2千8百億円、販売部数が同3.3%減の約28億7千万冊。金額で8年連続、部数では10年連続で減少している。

主婦の友社(東京・千代田区)はファッション誌「ef」を7月号で休刊。今秋以降、有料の電子版として再創刊する。短い漫画や小説ごとに課金したり、一部記事をネットに出し広告収入で運営する動きもある。

ただネット上の無料情報に慣れた読者層が店頭販売している雑誌と同様にデジタル版雑誌を購入し続けるかどうか未知数。ネットで同じように広告収入を得られるかも課題だ。紙版と同じ形式で電子版を出す小学館の試みは異例。新しい収益モデルに育つか、競合他社の注目を集めそうだ。