日本最大級の雑誌数 定期購読者100万人以上!

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生き残りかけ模索
読者開拓で波及期待
ニュース誌やファッション誌、無料の週刊マンガ誌-。既刊・新刊、有料・無料を問わず、インターネットを通じて流通する電子雑誌が昨年から増えてきた。検 索機能や音声・動画との連動、読者限定の掲示板などネットならではの付加価値を売り物にしている。「今年は雑誌の電子出版元年」と言う専門家もいる。電子 版は雑誌不振の救世主になれるのか。最新の電子雑誌事情を探った。 【横井信洋】

1984年創刊で、20代後半の働く女性を主なターゲットにした主婦の友社(東京都千代田区)の月刊ファッション誌「ef(エフ)」は昨年6月、紙の雑誌 に終止符を打ち、ネット上でページを繰る月2回発行の電子版「デジタルef」に完全移行した。

電子雑誌を担当するライツ事業部の渡部伸部長は「インターネットが普及し、紙の雑誌から離れた読者を取り戻したかった」と移行の理由を語る。

「ef」は中国や台湾で人気だった一方で、国内では同種雑誌との競争が激しかった。

雑誌を含む電子書籍の流通には、読者がパソコンなどに書籍データを保存して閲覧する「ダウンロード方式」と、専用サイトに接続して閲覧し、保存できない 「ストリーミング方式」がある。

「デジタルef」は写真家やモデルらのダウンロード方式に対する抵抗感を考慮し、自社サイト限定でストリーミング方式とした。

移行当初は無料だったが、今年2月25日から過去分を含めて全ページを閲覧、印刷できるのは有料のプレミアム会員に限定した。1年購読なら月額245円 で、紙雑誌の半額以下という安さや、メーク特集の動画などをアピールしている。それ以外の人が無料で読めるのは、最新号の一部の「立ち読み」なのだ。

また、一般、プレミアム会員ともソーシャルネットワーキングサービス(SNS)を利用できる。今後はネット上の電子書店から誘導してもらうことも考えてい る。

今年1月16日から毎週火、水曜日の朝夕、首都圏の主要駅で、国内初の無料漫画週刊誌「コミック・ガンボ」が計10万部配布されている。昨年8月創業の出 版ベンチャー「デジマ」(東京都千代田区)が始めた。20~40代の男性を読者層に想定し、江川達也さんや村上もとかさんら人気作家が多数執筆している。

紙媒体とほぼ同じ体裁のものが同社のサイトやソフトバンクグループのイーブック・システムズ(東京都港区)が運営する電子ブック図書館「Flib」で閲覧 できる。当初は「ef」と同様に閲覧は無料だったが、3月1日からすえてのバックナンバーを閲覧できるのは月額500円のプレミアム会員に限定した。掲示 板はSNSのサービスも提供している。

紙媒体の配布場所は首都圏に限られているのに対し、ネット読者は全国に広がっているという。さらに人気作品は単行本化する計画もある。

「雑誌の生き残りをかけている」

小学館(東京都千代田区)で電子雑誌を担当するネット・メディア・センターの岩本執行役員は強調する。同社は電子書店との間で続けていた閲覧ソフトの調整 にもめどがつき、今夏までに月刊マンガ誌などの電子版を出す。さらに6月1日には7種類のライフスタイル誌をまとめた「Sook(スーク)」を創刊する。 今後も電子版を増やしていくつもりだ。読者のパソコンの環境によって色の再現が微妙に異なるため、ファッション誌の電子化はまだ先になるが、個々の雑誌の 編集部が同意すれば、電子化はすぐにでも可能という。

主婦の友社などと違い、自社サイトでのストリーミングにより、電子書店を通じたダウンロード販売を原則とし、既存の雑誌の場合は紙媒体と同じ価格にする。 無料誌は考えていない。「紙の雑誌を全国の書店で売るのと同じ。既存の雑誌の読者には何らかの形で所有していたいという思いがある。個々の雑誌の内容と見 せ方には自身を持っており、IT企業のフリーマガジンとは違う。出版社としてのプライドがある」と話す。

2月23日から電子版の扱いを本格化した雑誌専門の電子書店「富士山マガジンサービス」(東京都渋谷区)を通じての販売だが、他の電子書店や電子書籍の取 次会社などを通じた販売も目指していく。また紙の雑誌と縁の無かった読者が電子版の購入をきっかけに、紙媒体も併せて購入するという波及効果を期待す る。…

出版社に利点 「バックナンバー売れる」

紙の雑誌に加え、2月から電子雑誌の販売も本格的に始めた富士山マガジンサービスの西野伸一郎社長は、書籍を含むネット通販大手「アマゾンジャパン」の立 ち上げにかかわった。雑誌販売の需要もあると考え02年7、同社を創業し、定期購読を中心に国内初の雑誌に特化した電子書籍経営に乗り出した。取り扱い雑 誌と出版社数は当初の10倍を超える約2450誌、約750社に増えた。

電子雑誌への本格参入は、急成長している米国の動向を見ながら、「機が熟したと判断したから」。ニューズウィーク日本版やベースボールマガジン、首都圏で 人気の無料誌「R25」など28誌からスタートした。読者からのメールで要望の多い雑誌を優先して出版社と電子化交渉し、紙の雑誌と同様に「寄せ集め」の 点数を増やしていく。

海外のデータから、どんな商品もネット経由で売れるのは10数%と断ったうえで、「労力と時間をかけて作った雑誌が売れるのが次の号が出るまでというので はもったいない。電子化すればコストを掛けずにバックナンバーを売れる。海外の読者も発売日に日本と同じ価格で入手できる」とさまざまな利点を強調する。

さらに電子化によって、個々の記事が商品として売れるようになり、街の書店に印刷もできる専用端末を置けば、書店の活性化にもつながるという。