日本最大級の雑誌数 定期購読者100万人以上!

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日経産業新聞2007年03月08日号
電子雑誌光る戦略
インターネットで入手し、パソコンで読む「電子雑誌」への取り組みが相次いでいる。主婦の友社(東京・千代田)は女性向け雑誌の電子版を2月に有料化。ソ フトバンク系企業は昨年11月、電子版独自の雑誌2誌を追加創刊した。IT(情報技術)と雑誌の良さを併せ持つ新メディアだが、今コンテンツの作り方、読 者や広告主へのアプローチ法は各社各様。手探りの中でも、戦略の違いが如実に表れている。

主婦の友社は2月25日、電子雑誌「デジタルef」の有料化に踏み切った。デジタルefは、昨年6月に休刊した女性誌「ef」の電子版。誌面内で動画を再 生したり、写真をスライドショーのように切り替えて楽しんだりできる。

ライツ事業部の渡部伸部長は、「チークブラシの使い方は言葉より動画で説明した方が早い」とその良さを説く。

無料会員数が2万2千人に達した2月に有料化に踏み切った。価格は1年契約の場合で2940円。1号当たり245円と携帯電話向けコンテンツを意識して価 格を設定した。

年内に獲得を目指す有料購読者数は1万人。休刊前の部数は7万部なので販売売り上げは減る。だが、用紙代、印刷代などがかからない分、費用は大幅に軽減で きる。

一方、編集やデザイン費用は「デジタルだからこの程度で十分と削ると安っぽくなる」(渡部氏)ので、紙の雑誌とほぼ同じ水準を維持する。紙の雑誌を作って いた編集者、デザイナーらがそのまま電子版を作る。有料販売してきた雑誌の品質の高さを読者に訴え、「コンテンツは無料」というネットの常識を覆す考え だ。

紙ではなく電子雑誌を専門とする出版社が、ソフトバンクグループのアンカー・パブリッシング(東京・港)だ。35歳前後の男女が主力読者の「Manyo」 など電子雑誌を発行。昨年11月に2誌を加えて計5誌にまで拡大した。購読料は無料を貫く。

電子雑誌専門のため、紙の雑誌と異なる独自の誌面デザインを追及する。たとえば、多数の商品を紹介するページの中には、文字がほとんどないページもある。

気になる商品周辺をクリックすると、詳細な情報が出てくる。"外観"は120ページの雑誌でも、実際はその3倍ぐらいの情報を作り込んでいるという。天野 勝社長は「紙の雑誌をそのままコピーしては(画面の制約がある分)劣る」と考え、電子雑誌ならではの手法を追求している。

閲覧者数は順調に拡大している。同社の電子雑誌のポータル(玄関)サイト「dima.jp」の1月の利用者数は30万人と3月の目標をいち早く達成。雑誌 ごとの閲覧者数は「Manyoの場合は1万-7万と号により大きく変わる」(天野社長)が、平均5万人に達すれば十分ビジネスになると見込む。

その収益源は広告が中心。ただ電子雑誌の広告形態はまだ確立しておらず、広告主と手探りで電子雑誌に最適な形を作り上げている。天野社長は、「バナーなど のネット広告と違い、電子雑誌は見開きの大きな広告も掲載できる」と、一般のネット広告より広告の価値が高いことを強調。

今後は時間帯に応じて掲載する広告を変更するなど、雑誌広告にはできない付加価値も追求する考えだ。

紙の雑誌をそのまま電子化する試みも始まった。雑誌販売サイトを運営する富士山マガジンサービス(東京・渋谷)は2月、出版社から電子雑誌の制作を請け負 う事業を本格的に開始した。いわば、電子雑誌の書店だ。

マガジンハウスの「ダカーポ」、阪急コミュニケーションズの「ニューズウィーク日本版」など28誌の電子雑誌を販売している。価格はほぼ紙と同じだが、検 索など電子雑誌ならではの機能が加わる。