日本最大級の雑誌数 定期購読者100万人以上!

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雑誌が一冊まるごとデジタルデータに
インターネットに情報のスピード・量ともに負ける紙媒体は、逆風と言われて久しい。しかし、紙媒体には紙媒体ならではの厚みやバリエーション、味わいがある。では、それを融合してしまおうではないかと、まるごとデジタル化した雑誌の販売を始めたのが「Fujisan.co.jp」だ。販売の正式スタートは今年2月、提携雑誌は28誌。雑誌の発売日に購読でき、表紙から最後のページまでがデジタル化されているので各自のPCで紙媒体とまったく同じものを読むことができる。定期購読者には、発売日に最新号が到着する。この「Fujisan.co.jp」は、もともと雑誌の定期購読をネット上で受け付ける総合窓口として2002年にスタートしたITベンチャーだ。社長の西野伸一郎さんに、同社の戦略について聞いた。

「定期購読の総合窓口という手法はアメリカから学びました。アメリカの雑誌購読は定期購読が全体の8割を占めているんです。一方の日本では、取次を通して書店に並んだ雑誌を買うのが圧倒的に主流。その中で、日本初の定期購読エージェントとしてスタートしたわけです。」


241誌と提携してスタートしたが、オンラインでの定期購読がビジネスになるのかという周囲の声をよそに、07年3月現在、提携誌は2444誌に達している。そして同社が次に乗り出したのが、冒頭の述べたデジタル雑誌の販売なのだ。


携帯向けの電子書籍の市場規模は46億円に

西野さんは、アマゾン日本版の創業者の一人でもある。当時の経験から、雑誌などの紙媒体のオンライン化のニーズは肌で感じていたという。

「ニーズはありながら、日本の書籍の電子化はかなり遅れていました。しかし、ブロードバンドが普及し、チープ革命でハードディスクは大容量化、ネット回線も太くなり、ネット人口も増加した。音楽もiPodの普及でダウンロード型が定着しつつあるし、映像もネット配信が当たり前になってきた。映像や音のデジタル化の方がかなり先に進んでいましたが、出版業界でも、携帯電話向けの漫画配信が大きな市場となるなど、環境は整いつつありました」


インターネット生活研究所によると、05年度の携帯電話向け電子書籍の市場規模は46億円にも達したという。つい最近も新潮社がデジタルコミックを創刊するなど動きは活発だ。
「折しも、出版業界は右肩下がりの状況が続き、生き残りをかけた打開策を必要としていた。これらすべての状況から、機は熟したな、と判断したのです」


上質のコンテンツをデジタルデータで蓄積する

かくして、『ニューズウィーク日本版』や『R25』など、数誌と提携してデジタル雑誌の販売・配信をスタートさせた。

「専門書や技術書など、資料性が高くデジタル向きだと思われるコンテンツのみならず、ニッチな情報なども、デジタル化することで、検索にひっかかってコンテンツの存在が知られ、売り手が予想していない意外なところにニーズが広がっていくこともあるでしょう。つまり、最終的にそのコンテンツがデジタルで読まれるにしろ紙媒体で購読されるにしろ、検索にひっかかるためにコンテンツをデジタル化することが重要なのです」


今の時代、何かの興味を持ったとき、多くの人はまずネットで検索する。逆に言えば、検索にひっかからなければその存在を知られることがないのだ。

「雑誌が書店に並ぶのは限られた期間だけ。それが過ぎると、あれだけたくさんの質の高い情報が検索されることなく通り過ぎていってしまう。これはあまりにももったいないことです」


とはいえ、検索で引っかかった内容すべてが読めてしまうと、紙媒体での販売が成り立たない。無償の情報が大量に流れるネット上での、有償の情報の提供の仕方は今後の課題だ。今は、ともかく、既存の雑誌をデジタル化して販売することから始めるという。

「これまでの雑誌はブランド力に対する読者の信頼感によって成り立っていた。ここを大切にしつつも、インターネットによってユーザーが情報収集のパワーを持った今、あるキーワードを調べていたら偶然『ダカーポ』のコンテンツに行き当たり、情報の存在を知った、というアプローチも積極的に取り込んでいくべき」


デジタル雑誌の魅力、紙で読む魅力、シェアの奪い合いではなくお互いに付加価値を高め合えるのが理想の関係だろう。
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