2017年7/15号

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火の女神が舞い踊る、熱きビッグアイランド

【ハワイ島】アメリカ

火の女神が舞い踊る、熱きビッグアイランド

オアフやカウアイなど、特色のあるハワイ諸島の中で最大面積を誇るハワイ島。島を象徴するキラウエア火山には、ペレという女神がまだ済んでいるという。

ハワイ火山国立公園(Hawaii Volcanoes National Park)

ふたつの活火山、マウナロアとキラウエアを擁し、世界遺産にも登録されている国立公園。溶岩が冷え固まってできたトンネル「ラヴァ・チューブ」や、クレーターの底を歩くことができる「キラウエア・イキ」など見どころも豊富。●Hawaii Volcanoes National Park, HI 96718 USA

ハワイ諸島の最南に位置する、つまりアメリカ最南であることを意味するハワイ島。他のハワイ諸島のすべてがすっぽり入ってしまうほどの大きさから、このあたりの住人たちからは親しみを込めて「ビッグアイランド」と呼ばれている地だ。4000ⅿ級の山をふたつと、30年以上絶えることなく溶岩を噴き出し続けるキラウエア火山を抱く「地球上でいちばん若く活発な島」はまた、ハワイの神々たちを惹きつける魅惑の島でもあった。

煮えたぎるマグマは、情熱的なペレそのもの。

島の南東部にあるハワイ火山国立公園。ここの目玉は、なんといってもキラウエア火山のハレマウマウ火口だ。2008年3月に84年ぶりの爆発を起こし、その溶岩湖にたぎる赤々としたマグマは現在でも肉眼で確認することができる。この火口はまた、ハワイ神話で最重要人物とされる火の女神ペレの住処とされ、古代からハワイアンにとって神聖な場所とされてきた。

多くの神々が互いにドラマを繰り広げるハワイ神話では、ペレは非常に情熱的で女の激情を隠そうともせず、恋に燃え、嫉妬深く、生命力にあふれた女神として描かれている。グツグツとマグマを煮立たせるハレマウマウ火口こそ、まさにペレの気性そのものを表しているのだ。

もともとはタヒチから渡ってきたとされるペレ一行は、カウアイ島、オアフ島、マウイ島を経て、長い旅の末にハワイ島へとたどり着いたという。この旅程はまさに、プレート理論によるハワイ諸島の誕生の経過と一致していることは特記しておきたい。

さらに、この島は、ハワイ神話において重要な数々のエピソードの舞台にもなっている。フラはペレの妹であるヒイアカが島東部のプナの海岸で踊ったものが原形と伝えられているし、有名なオヒアレフアの伝説(66ページ参照)もまた、プナが舞台とされている。古代から残る雄大な自然や、ここを舞台とした神話の多さから、ハワイ島こそが「本当のハワイ」だと言う人が多いのも納得だ。

ヒロ国際空港よりハワイ火山国立公園まで、クルマで約40分。ハイウェイ11号を直進する。公共交通機関はないためレンタカーかツアーで。

神話やペレの声を、フラ・カヒコを通し人々に伝える。

神話やペレの声を、フラ・カヒコを通し人々に伝える。

鮮やかな色のムームーを着て花を髪に挿し、ゆったりとしたウクレレのチューンに合わせて、優雅に、漂うように踊る。いわゆる「フラ」には、こんな印象をもっている人も多いだろう。実は、これらは「フラ・アウアナ」と呼ばれる現代フラで、19世紀以降に生まれたモダン・スタイルのもの。

一方、「フラ・カヒコ」と呼ばれる古典フラは、サメ革やヒョウタンからつくられた原始の打楽器を使い、そのビートに乗せたハワイ語でのオリ(祈り)に合わせて舞うものを指す。神聖な場での奉納の舞とされることもある、激しく、かつ荘厳なものだ。ちなみに、フラとはハワイ語で「踊り」を意味するため、よく聞く「フラダンス」という呼称は誤りとされている。

禁じられた時代に耐え、受け継いできた神聖な舞。

毎春、フラの世界大会「メリー・モナーク・フェスティバル」が開催され、フラの聖地ともいわれるハワイ島のヒロ。そこに、カヒコの名門とされるハラウ(フラ・スクール)がある。7代目クムフラ(フラの師範)となる女性、ナラニ・カナカオレ率いる「ハラウ・オ・ケクヒ」だ。

カナカオレとは「Man(人間)に(あら)ず」という意味で、一族は半神半人の女神ペレの直系の子孫とされている。カナカオレ一族はペレに捧げるフラの継承者かつ保護者であり、ゆえに、後継者も女系でなくてはならないと考えられているのだ。

文字をもたなかった古代ハワイ人は、神へ舞を捧げるだけでなく、神話や史実をフラに変え、語り継いできた。1820年、アメリカ人宣教師たちにより「異教の舞」として禁止されたフラは、のちにカラカウア王によって復活されるまでの約50年間、人目に付かないジャングルの奥深くや洞窟の中でひそかに踊り継がれ、守られてきたという。ハラウ・オ・ケクヒの継承者たちもまた、こうして一族に伝わるフラを厳格に守り、現代まで続けてきた。

多くの伝承されてきた舞において、ペレとその末妹ヒイアカの物語「ホロ・マイ・ペレ」はハラウ・オ・ケクヒを代表する演目だ。ヒイアカが、ペレが夢の中で出会った恋人、ロヒアウをカウアイ島まで迎えに行く旅の物語。ここでは、ときに過酷なハワイの自然とその再生、男と女、裏切り、嫉妬、復讐が描かれる。フラ・カヒコを踊るハラウの中でも特にハードな振り付けで知られるハラウ・オ・ケクヒだからこそ表現できる、圧巻の群舞だ。

さらに、ハラウ・オ・ケクヒには、このハラウに長い間属し、選ばれた者だけが踊ることができる、ペレに捧げる上級の舞も存在するという。ナラニ・カナカオレは言う。「その昔、ハワイ島の気候はペレが決め、人々はそれに素直に従っていました。神々は自然の中に宿り、私たちは神々とともに生きてきたのです。フラ・カヒコとは、神からの波動を受け、それをさらに大きく、わかりやすくして人々に伝えるための手段。だからこそ経験を積んだ選ばれた者しか踊ることはできないのです」

ヒョウタンからつくる打楽器「イプヘケ」を叩きながらメレ(詠唱)を行う、クムフラのナラニ・カナカオレ。

フラ・カヒコではイプヘケや、特に神聖とされているサメ革を張った「パフ」と呼ばれる打楽器が使われる。

ハラウ・オ・ケクヒが練習をするスタジオ内に飾られた、先代のクムフラであるナラニの母、イーディス・カナカオレの肖像。

ハラウ・オ・ケクヒが公の場で踊るのは、年に1度のメリー・モナーク・フェスティバルの前夜祭のみ。

神々の存在が感じられる、奇跡の絶景や祈りの場。

神々の存在が感じられる、奇跡の絶景や祈りの場。

ムーンボウ

半神半人マウイの母であり月の女神とされているヒナが、暴力的な人間の夫から月へと逃れるために昇ったとされているのが、夜に出る虹「ムーンボウ」だ。文字通り、月の光によって映し出される月虹(げっこう)のこと。雨が多く、光害の少ないハワイ島ではまれに見ることができ、その希少さゆえに見た人は三代先まで幸せになれるともいわれる。

ペレを象徴する花々

ハワイ島の島花「オヒアレフア」。プナの青年オヒアに恋をしたペレは、彼にレフアという恋人がいたことに激怒。彼を樹木に変身させてしまう。嘆くレフアを不憫に思った他の神々が彼女を花の姿に変え、ふたりは再び一緒に......という悲恋の神話は有名。溶岩台地に最初に芽生える植物でもある。

ペレの好物といわれる、オヘロ・ベリー。ハワイ島のボルケーノ地区でしか採取することができない。オヘロ・ベリーの収穫はまず、ペレに捧げてから。

プナの溶岩流

2015年10月、キラウエア火山のプウオオ火口からの溶岩流がハワイ島東部の地域プナにある町、パホアに接近。このまま進めば、あと数日で中心地のヒロへ続く唯一のハイウェイを遮断してしまうと大騒ぎになったものの、奇跡的に数十メートル手前でストップ。「ペレが町にやってきた」奇跡は、いまもパホアの町で見ることができる。

ヘイアウ

「プウコホラ・ヘイアウ」はハワイ統一を目指すカメハメハ大王が、カフナ(神官)の予言から戦闘の神のクカイリモクを祀り、建立。

「ヘイアウ」とは、ハワイアンにとって宗教上で神聖な場所のこと。一般的には石垣で囲まれたオープンスペースを示し、かつてはそこで儀式や祈祷が行われ、神殿や寺院のような役割を果たしていた。往時は首長や聖職者など地位の高い者しか入ることを許されておらず、人身御供の舞台となったヘイアウも存在する。

カプ(禁忌)を破った者たちの駆け込み寺として機能したという「プウホヌア・オ・ホナウナウ」。この地にたどり着くことができた者は、カフナによる儀式を受けることで、罪を許された。

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