2016/12/24

Leaf(リーフ)

GOJO OHASHI『京都の凸凹を歩く』の著者・梅林さんと巡る 源氏物語のパワースポットへ

ACCSESS/京阪清水五条駅から徒歩10分

PHOTO/鈴木誠一、夏見タカ、畑中勝如、桂秀也、高見尊裕、平田尚加、舟田智史TEXT/藤田えり子、土井淑子、園木 葉、立原里穂、ユニオンシナプス[岩永茜]、廣瀬由仁子、柚原靖子、神崎英子

光源氏が数多の女性と過ごした 源氏物語の舞台・六条院を探して

人気テレビ番組『ブラタモリ』に出演し、高低差好きで知られるタモリさんをうならせてきた京都高低差崖会崖長の梅林さん。初の著書『京都の凸凹を歩く 高低差に隠された古都の秘密』が、京都の書店員によって選ばれる京都ガイド本大賞2016でリピーター賞を受賞した。歴史や地形に詳しくなくてもスラスラ読めて、今すぐ街に出かけたくなる一冊だ。

そんな、街に刻まれた物語のピース探しをライフワークとする梅林さんが今回、Leaf読者向けのコースを案内してくれることに。聞けば五条〜六条あたりは、梅林さんが幼少期から愛読する源氏物語の六条院とリンクするパワーエリアらしい。さらに梅林さんが京都に移住した当初に暮らし、道や看板、カフェに洋菓子店まで、愛着を抱く土地だと言う。

「源氏物語に関しては、平安時代や貴族の生活に興味があるだけではなく、その世界観が好きなんです。振り向いた途端、相手の心が離れていく。追えば追うほど想いは届かず...。キュンキュンしたり、切なさに打ちひしがれたり。時代も国籍も関係なく、すべての人を共感させる懐の深さが源氏物語にはある。今回歩くのは、すべて光源氏のモデルとなったと言われる源融(みなもとのとおる)の河原院(かわらのいんあと)の敷地内。源氏物語で言えば、光源氏が造営した六条院の敷地とぴったり重なります。」

まずは[源融 河原院址]の石碑前からスタート。榎大明神に手を合わせた後、えのき橋を渡って南下、五条楽園と呼ばれる遊廓だった頃から残る元お茶屋や、歌舞練場だった五条会館を眺めながら、河原町通りを渡っていく。

ちなみに源氏物語の舞台・六条院は、4つの区画に分かれているのが特長。源融河原院と同じ場所、同じ面積を想定して描かれている。東北の町「夏」には花散里、玉鬘、夕霧。東南の町「春」には紫の上、明石の姫君、女三の宮。西南の町「秋」には秋好中宮。西北の町「冬」には明石の御方を住まわせた。光源氏ゆかりの女性が巨大な六条院に集結する、まさに平安のハーレム。愛憎渦めく六条院の位置関係を想像しながら、到着したのは[市比賣神社]。物の怪となって光源氏がらみの女性を呪い殺した、六条の御息所の屋敷がこの近くにあったと推測できる。「源氏に裏切られ、物の怪になった六条の御息所。彼女の想いのそばに女人厄除の神社があるなんて、やはり何かの縁を感じます。そしてこの神社に漂う穏やかさに触れるたび、六条の御息所の魂は時を経て安らぎ、現代女性の祈りを見守ってくれているんじゃないかなと思うんです。」

そこから歩いて数分の[上徳寺]は子授けスポットとして知られ、六条院の配置図に当てはめると明石の御方が暮らした「冬」の位置になる。「この明石の御方といえば、物語に登場する女性の中で最も身分が低いにも関わらず、唯一女の子を出産した人。平安時代、娘を天皇の妻にすることが成功への近道。光源氏の娘を授かった幸運な女性が暮らした場所に子宝祈願のお寺...この事実にも源氏物語の引力を感じずにはいられません。」

架空(=源氏物語の舞台)と現実(女性にまつわる社寺)が時空を超えて重なり合う不思議さを聞きながら歩くうち、つながりが本当にあるのか、ないのかが重要ではなく〝そうだったのかも!〟と感動したり、見えない世界を想像したりするのが街歩きの醍醐味だと体感。

「ほんの1時間でいい、ひと筆書きのように気になるエリアをぐるりと歩けば、新しい発見と出合えるはずですよ。」

源氏物語の舞台・六条院の4区画「春・夏・秋・冬」。それぞれの街に暮らした女性たち

☞CHECK ここも見て!

「三角になった辻は、なにかしら理由があるんですよ。京都の街は碁盤の目ですから。」

「歌舞練場だったところですね。このあたりに光源氏が住んでいたと想像できます。」

「僕としては、ここもすごくいい三角です(笑)。」

源融 河原院址
[ みなもとのとおる かわらのいんあと/石碑・神木 ]

光源氏のモデルとなった源融も眺めたであろう神木がシンボル

嵯峨天皇の皇子であり光源氏のモデルと伝わる源融が、隠居した邸宅があったとされる場所。東西は鴨川あたりから柳馬場通り、南北は五条から六条まで広がる大邸宅だったそう。石碑の背後にそびえる高さ26mの立派な榎の神木もまた、邸宅にあった森の名残りだと言われている。大樹のそばには小さな社があり、鳥居の奥へ進むと古い木の根=榎大明神が祀られていて、地域の人から今も厚く信仰されている。

京都市下京区木屋町通五条下ル

市比賣神社
[ いちひめじんじゃ/神社 ]

御祭神の五柱すべてが女神様という女性をお守りくださる希少な神社

良縁、子授け、安産、そして厄年には必ず...人生の節目に京女が祈りを捧げる、全国でも珍しい女人厄除の神社。延暦14(795)年、桓武天皇の命によって現在の西本願寺あたりに創建され、天正19(1591)年、豊臣秀吉の京都改造によって現在の地に。境内にある天あめのまない之真名井の水は、歴代天皇の産湯に用いられたという由緒ある名水。井戸の上には願いごとを記した、愛らしい姫みくじが並んでいる。

☎075・361・2775
京都市下京区河原町通五条下ル一筋目西入ル
参拝・受付時間/9:00〜16:30
http://ichihime.net/

上徳寺
[ じょうとくじ/寺院 ]

2月8日は一億日分の功徳が!子授け、安産の地蔵菩薩を安置

子どもを望む人に世継ぎを授けた伝説が残る、地蔵菩薩で有名な別名「京のよつぎさん」。徳川家康によって建立され、開基は家康の側室・阿茶の局。山号の塩竈山は、源融が河原院に池を掘り、魚貝などを放ち、塩屋のけむりをたてるなど、憧れの地だった陸奥の塩竈を模したことに由来している。2月8日には、一億日分の功徳が授かる世継地蔵尊大祭が行われ、酒粕汁・多幸焼(たこやき)の無料接待もある。

☎075・351・4360
京都市下京区富小路通五条下ル
本塩竈町556拝観/9:00〜17:00

▶︎光源氏と女性たちに思いを馳せながら散策した後はカフェで休憩。お土産はお気に入りのケーキを

efish
[ エフィッシュ/カフェ ]

鴨川畔を行き来する人の流れをぼんやりと眺める最高の日常

冬の到来を告げる渡り鳥、春には桜の花びらがひらり。東側にしつらえた窓の向こうで少しずつ移っていく季節を体感しながら、丁寧に注がれたコーヒーで至福の一服。1999年のオープンから変わらぬメニューと、風通しの良い空間でのんびり寛げるリバーサイドカフェ。空間だけでなく、オーナーでありデザイナーの西堀氏が手掛けるインテリアや雑貨にも、ミニマムな心地よさが溢れている。

食べ応えがあってヘルシー!食いしん坊の願いを兼ね備えた、ツナとカッテージチーズのアボカドサンド930円は、日替わりスープセット1130円〜にもできる。コーヒー480円

☎075・361・3069
京都市下京区木屋町通五条下ル西橋詰町
798-110:00〜22:00無休 
1月1日〜3日休
禁煙席有 完全個室無 P1台
http://www.shinproducts.com/

Famille de Chie
[ ファミーユ ドゥ チエ/パティスリー ]

食べるとふわりやさしい気持ちに人柄にじむクラシカルなスイーツ

この地にオープンして13年、やさしい笑顔のオーナーパティシエの主人と接客担当のチエさん夫妻が出迎えてくれる、小さな洋菓子店。モンブランやショートケーキなどクラシカルなアイテムが並ぶショーケースの中、おすすめはスイスの一流ブランド[フェルクリン]社のチョコレートを使ったケーキ。その他、秋冬限定で登場する生チョコやバレンタインシーズンのトリュフもレベルが高い。

☎075・525・1530
京都市東山区五条大橋東入東橋詰町26
9:30〜21:30
火曜休 P無

チョコ生地とチョコクリームの間に挟んだ白桃が好バランス! クレームショコラ388円

口溶けの良いガナッシュの上に艶やかなグラサージュショコラをかけたミロワール432円

▶︎PROFILE 梅林秀行
名古屋市生まれ。京都高低差崖会崖長。NHK『ブラタモリ』の京都編・奈良編に出演。現在、朝日新聞夕刊「つれづれ彩時記」で最終木曜を担当。来春、『京都の凸凹を歩く』第二弾を発行予定

『京都の凸凹を歩く高低差に隠された古都の秘密』青幻舎/1728円

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