2017年7月号
旅と鉄道

癒やされ秩父紀行
西武鉄道 特急レッドアロー号&西武 旅するレストラン「52席の至福」で
秩父旅のプラン
池袋
↓特急「レッドアロー」約80分
西武秩父
↓徒歩約15分
秩父神社
↓徒歩約2分
秩父まつり会館
↓徒歩約15分
ちちぶ銘仙館
↓タクシー15分
酒づくりの森
↓タクシー15分
西武秩父駅前 祭の湯
↓徒歩すぐ
西武秩父
↓旅するレストラン「52席の至福」
池袋・西武新宿

特急レッドアロー「ちちぶ」号。西武秩父線内では豊かな自然が車窓に広がる。芦ヶ久保〜横瀬駅間

荒川の水の流れをイメージしたカラーがさわやかな、西武 旅するレストラン「52席の至福」。東吾野〜吾野駅間 (撮影/目黒義浩)
旅のはじまりは週末の池袋駅
旅のテーマはゆったりとした時間を過ごす「癒される秩父の旅」。秩父の街では駅と、周辺スポットを散策しながらの観光を楽しみ、帰りは優雅に西武鉄道が誇るレストラン列車、西武 旅するレストラン「52席の至福」に揺られて、食事とお酒を味わいながら都心へと戻る日帰りの秩父旅に出た。
池袋駅から西武秩父駅までは、特急レッドアロー「ちちぶ」号で最速78分。早朝に出発しなくても十分に観光を楽しめる距離と、特急の速さがゆったり旅にはちょうどいい。
沿線のレジャー客でにぎわう週末の池袋駅から特急レッドアロー号に乗り込む。春から秋にかけて午前中の早い時間は観光やハイキング客でいっぱいになる週末の特急も、9〜10時台なら比較的余裕をもって乗車できる。
池袋を発車し住宅街を走り抜けると、桜台の手前で高架線へと上がり左右の車窓の風景が一気に開ける。この日も左手の車窓には白く雪をかぶった富士山が遠くに見渡せた。所沢を過ぎ、住宅地と田園とを繰り返す景色の中を走り

秩父路へと向かって走るレッドアロークラシック。車体カラーはクリームと赤の懐かしい初代レッドアロー色を再現している
駅から秩父神社へと歩く
西武秩父駅を降りると、駅周辺はすっかりリニューアルされていた。改札を出るとすぐ左手には4月24日にオープンしたばかりの真新しい温泉施設「西武秩父駅前温泉 祭の湯」が観光客を出迎えていた。

駅前に新しく誕生した「祭の湯」の前を歩き、秩父神社へと向かう

西武秩父駅から秩父神社へと向かう道、懐かしい姿の店を眺めながら歩く
秩父の街で最初に行きたいのが秩父神社。西武秩父駅から北へ、徒歩15分ほどの距離だ。秩父神社は「御鎮座二一〇〇年」を迎えた古社。戦国時代の末期には兵火によって焼失したものの、徳川家康の命によって再建される社殿が今に伝えられる神社。

秩父神社の社殿、1592年に徳川家康から寄進された歴史を感じる建物。

社殿北側に施された彫刻「北辰の梟」、体は本殿に向き、頭は真北に振り返り、祭神を守っている

小川にひたすと文字が浮かび上る“水占みくじ”

躍動感あふれるトラの親子が描かれる「子宝・子育ての虎」
秩父神社 DATA
☎ 0494-22-0262
時 5:00〜20:00
※季節で変動あり

秩父の祭にふれてみる
秩父神社のすぐ近くにある「秩父まつり会館」。〝秩父夜祭〟をはじめ、この地方では年間300を超える祭があるそうだ。「このあたりの気質なんでしょうかね。あたりのいろいろなものに神様を感じて祭りを行うんです。」
とシアターへの案内をしていた係の人が言っていた。秩父には山間の小さな集落ごとに独特の祭りがあって、四季折々に行われているのだそうだ。館内には3Dシアターがあり、数々の祭を立体映像で鑑賞することができる。さらに

秩父まつり会館に展示されている山車、左が笠鉾、右が屋台。近くで見ると大きさが分かる
この秩父夜祭は江戸時代に秩父神社のまわりで行われた絹の市に集まる買いつけ商人をもてなすために盛んになったと聞いて、名産の織物を伝える「ちちぶ
秩父まつり会館 DATA
☎0494-23-1110
時 9:00~17:00 ※12月〜3月は10:00〜
料 410円 ※7月から500円
休 第4、第5火曜日 ※祝日は開館
独特の風合いの秩父銘仙
この建物は織物の試験場として昭和初期に建てられたもので、大谷石積みの建築デザインや明かりとりの「のこぎり屋根」など、こだわりの建築は、国の登録有形文化財に登録されている。木造の懐かしさの残る建物を歩くと、今でも稼動する

「ちちぶ銘仙館」は1930年の建設、大屋石積みの外壁など昭和初期の建築様式が残る

「ちちぶ銘仙館」に展示された織り機。縦糸を染めてから織る秩父銘仙の特徴がよく分かる
銘仙とは絹の平織物(縦糸と横糸を交互に組合わせる織り方)のことで、秩父銘仙は独特の染めかたに特徴があるのだそうだ。糸を染めてから織る方法では、比較的単純な柄に限られてしまい、織り上げてから型染めする方法では片面のみが染まる。それに対して秩父銘仙では、縦糸を仮織りして模様を染めてから一旦横糸をほぐし、改めて単色の横糸で織り上げるという方法で、見る角度によって玉虫のように色合いが変わり、図柄も自由につくれ、表裏が使うことができる。館内に展示してある織物の独特の風合いの秘密が分かった。
少し時間があったので、「52席の至福」でも味わうことができる秩父の地酒「秩父錦」の酒蔵がある、「酒づくりの森」まで足を伸ばしてみた。西武秩父駅からはタクシーで15分ほど(2000円前後)。「酒蔵資料館」は実際に酒を仕込んでいる施設に併設しているため、館内に入るとふわっと日本酒の香りがしてくる。
そこでは江戸時代から使われてきた酒造りの道具や酒器が並んでおり
この日は8種類のお酒が並んでいた。香り高い

「酒づくりの森」の酒蔵資料館。江戸時代の酒づくりの様子が、実際に使われていた道具で展示している
ちちぶ銘仙館 DATA
☎0494-21-2112
時 9:00~16:00(体験は15:00受付終了)
料 200円
休 無休
真新しい西武秩父駅前「祭の湯」へ
列車の時間まで余裕を残して西武秩父駅に戻り、オープンしたばかりの「祭の湯」に立ち寄った。内湯にはシルク湯やサウナ、露天風呂には温泉の岩風呂もある。街なかを歩いてきた汗を流して、気持ちはさらにリフレッシュ。1階にはフードコートの「

「西武秩父駅前温泉 祭の湯」は西武秩父駅前徒歩0分、駅前にある温泉施設だ

「祭の湯」の1階にあり、秩父の銘菓や特産品、工芸品がそろう「ちちぶみやげ市」
西武秩父駅前温泉 祭の湯 DATA
☎ 0494-22-7111
● 祭の湯
時 10:00~23:00 ※金・土・祝前日・特定日は〜翌9:00(24:00〜翌6:00は入浴不可)
料 入館料980円 ※土休日・特定日1080円(宿泊は別途料金)
● 呑喰処 祭の宴
時 11:00〜21:00(店舗によって異なる)
● ちちぶみやげ市
時 9:00〜20:30(店舗によって異なる)
休 無休

「祭の湯」の露天風呂。タオルセットつきの入館料もあり手ぶらで温泉が楽しめる
✤秩父路 四季のスポット
春・秋:秩父ミューズパークの雲海

秩父は雲海発生率が年間約35%。市街ならミューズパークの展望台。
秋:長瀞の紅葉

荒川流域の紅葉が見事。月の石もみじ公園、宝登山ではライトアップも。
秋:味覚狩り

横瀬の小松沢レジャー農園では、ぶどう狩りなど秋の味覚を体験できる。
冬:秩父夜祭

12月3日の大祭がクライマックス。6基の山車が並び花火が打ちあがる。
冬・春:早春のイチゴ

沢水を山の傾斜にまいてつくられた、約125mもの大きな氷柱。
春:羊山公園の芝桜

約1万7600㎡に40万株あまりの芝桜が咲き、一面がピンクに染まる。
秩父からの帰路は、ぜいたくにディナーを
西武 旅するレストラン 52席の至福

荒川の水の流れをイメージしたカラーがさわやかな、西武 旅するレストラン「52席の至福」。東吾野〜吾野駅間 (撮影/目黒義浩)
◎西武 旅するレストラン「52席の至福」予約方法
運転日:土休日を中心に年間100日程度
運転区間:池袋駅または西武新宿駅〜西武秩父駅(運転日、運転区間は公式HPで確認)
旅行代金:
ブランチコース(下り)
10,000円ディナーコース(上り)
15,000円(いずれも西武線1日フリーきっぷを含む※最少催行人数20名)
予約方法:ホームページから予約https://www.seiburailway.jp/railways/seibu52-shifuku/ 5〜9月分は受付中
問合せ:西武鉄道お客さまセンター (04)2996-2888 ※2017年5月現在の情報です
赤いじゅうたんから電車に乗る
西日に照らされながら西武秩父駅3番ホームに電車が入ってきた。西武鉄道が誇る全席レストラン車両の西武 旅するレストラン「52席の至福」だ。明るい空色の車体には荒川の流れと秩父の四季が美しく描かれている。「52」の文字とともにあるトランプマークは、〝13枚×4種=52枚〟と52になぞらえたもの。こんな演出にも期待が高まってくる。停車後しばらくすると、「お待たせしました。こちらへどうぞ」

52席の至福に乗務するスタッフ。特別な旅をつくる素敵な笑顔だ
ホームにアテンダントの声が響く。入り口には赤いじゅうたんが敷かれ、名前を伝えると席まで案内してくれる。先ほど見てきた〝秩父銘仙〟ののれんをくぐって車内へと入る。天井の流れるようなデザインには木がふんだんに使われていて、テーブルとシートは温かみと落ち着きを感じさせるつくりだ。とてもゆったりと感じられ、普通の車両と同じサイズの空間とは思えない余裕を感じた。
この車両のデザインを担当したのは建築都市設計の第一人者として知られ、新国立競技場を担当することでも知られる
発車後まもなくウエルカムドリンクがサーブされる。かすかに揺れるシャンパングラスに立つ泡と映り込む秩父の新緑風景、実にいい!憧れの旅のはじまりだ。
この日の前菜は「春の三重奏〜和・フレンチ・中華の前菜の

メインはすきやきのアレンジ。トリュフの香りなど驚きを感じるメニュー

スープはエビ、ホタテ。フォアグラの入ったカニとフカひれのスープ。やさしくぜいたくな味

麺は春を感じる和えそば、やさしい色合いのとおり、やさしい味だった

デザートは秩父の森メイプルウオーターのゼリーがベース

秩父で蒸留されたイチローズモルト「52席の至福」プライベートボトル。手に入りにくい貴重なウイスキー、ぜひ味わいたい(1ショット1200円)。
生演奏とともに食事が進む
コース料理はスープからメインへと進む。いずれも驚きのあるおいしさに舌鼓をうつ。あたりは次第に暗くなってきた。シックな雰囲気の車内から見る夕暮れの車窓を眺めながら、車内で調理されたばかりの熱々の料理をいただく。レストラン列車ならではの時間帯だ。秩父路の山間部を走り抜け、飯能の手前にさしかかるころ、車内でバイオリンデュオが曲を奏ではじめた。耳に心地よい生演奏を聞きながらの食事、ぜいたくな時間が続いていく。演奏は日によって変わり、管楽器の日もあるそうだ。どんな演奏かは乗ってみてのお楽しみ、サプライズな演出だ。コースが終盤を迎え、デザートに移ったころ「52席の至福」は所沢を過ぎ、約2時間半の食の旅も終わりに近づく。「お客さま」ではなく、それぞれの名前で声をかけてくれ、すてきな笑顔のアテンダントが、紅茶のサーブとともに、さりげなく心温まる手書きのメッセージカードを添えてくれ、食の旅を締めくくってくれた。ホームに敷かれた赤じゅうたんを踏み締めて電車を降りる。おなかはもちろんのこと、心もしっかりと満たされて、特別な旅を満喫した1日となった。

洒落た席に座りウエルカムドリンクのスパークリングワインを待つ。旅の始まりだ

夕暮れが近づくころメインディッシュが運ばれてきた

3号車はキッチン車両、キッチンスタッフが乗り込み、調理をして客室へと運ばれる

この日の演奏はバイオリンデュオ、日によっていろいろな生演奏が楽しめる

流れるような天井に広々としたインテリアの車内

この日は西武新宿駅に到着。赤じゅうたんで送り出してくれる
◆西武鉄道と秩父鉄道がコラボレーション
西武秩父駅から発車!「臨時SLパレオエクスプレス」運行
秩父鉄道の「SLパレオエクスプレス」が西武秩父駅から発車する「臨時SLパレオエクスプレス」の運行が今年も実施される。これは、秩父エリアの観光PR・誘客と、乗車促進という同じ目線を持つ両社のコラボレーションだ。西武秩父駅から秩父鉄道線内を走行し終点三峰口駅で折り返す行程を楽しみながら、三峰口駅ではSLの入換運転、鉄道公園内の転車台でのSL方向転換見学、当日の三峰口駅での秩父名産販売・オリジナルグッズ販売など、もりだくさんのイベントとなっている。運行日や乗車チケットの情報などは随時HPで案内される。
■西武鉄道HP www.seiburailway.jp/
■秩父鉄道HP www.chichibu-railway.co.jp/

蒸気機関車C58形363号機が自然あふれる秩父を力強く走る「SLパレオクスプレス」

「SLパレオエクスプレス」の絶景ポイント、上長瀞〜親鼻駅間で渡る荒川橋梁の景色
