2017年7月号
Rod&Reel(ロッドアンドリール)
今江克隆 バス釣りの水平線 連載第19回
バス釣りと人生について誰よりも知る男、今江克隆さんの連載第19回。今回も気になる質問が届いたぞ〜!

今江克隆(いまえ・かつたか) 1964年生まれ。JBTA時代を含め、トップカテゴリーの最前線で戦い続けるバスプロであり、自他ともに認める生粋のルアーマニア。イマカツC.E.O。愛犬家としても知られる
質問 イマカツ製のルアーが何だかもうわかりません。
ベルリネッタ、アベンタ、アベンタGT、アベンタRSとハネモノで4種!?バスロイド、バスロイドJr.、トリプルダブル、リアルカラーバージョン!?ギルロイド、ギルロイドJr.、ギルポップ、リアル......。
「どれが一番ええんじゃ〜!!全部持って行けっちゅうんか〜!!(笑)」といいたくなります。まぁ、大きさ、浮く、沈む、リアルカラーかどうかで何となく使い分けていますが、いまいちよくわかりません。よく行くのが霞水系で、本湖、川、水路という風に変えていますが、本当に合っているのか不安になります。
冬はコイやフナのカラーも発売されていましたね。ひらめきをすぐに形にするのはいいのですが、ユーザーとしてはスピードが速すぎてついていけません。
それにスーパーリアルが出るなら最初から出してください(笑)。もっと煮詰めてからリリースはできないのでしょうか?ゲキアサ、ステルススイマーはすごくいいですね(活躍してます)。
それと、モリゾープロに「日本じゃ勝てない」といってる今江さんが大会ビリなのは何だかな〜(大変だと思いますが)。よみがえれ、黒の皇帝!!(埼玉県 山下貴史さん 44歳)
いやいや過激な質問です。これがブログやネット掲示板の匿名ネクラ野郎だったら1㎜も相手にしないんだけど、堂々と本名でブッ込んでこられたら、コチラも正面切って気持ちよく反論できるから嬉しいね。
SNS全盛の世の中、人の批判を匿名でする輩は多いけど、批判するなら顔出して堂々と本名を名乗って発言に責任持つのがスジでしょ。そういう点で、この方は堂々としたもんです。今度是非、夜の神戸港で会ってみたいね(笑)。
まずクローラーベイトだけど、初期型ベルリネッタに関しては、今さらいい訳になるけどこれだけは自分の発案で開発したのものではなく、某プロアングラーと四国のアングラーの希望と好みから生まれたモデル。
もともとクローラーに関して自分の好みとコンセプトが違っていて、自分的にはバドに近い性能のものが欲しかった。だから自分は当初、ベルリの上半身だけを外しワンフックにした「下半身なしのベルリ」を使っていたんだ。これはなかなか自分の好みだった。
そこでベルリの開発から少し遅れて自分の好みに特化したモデルとして自分好みに作ったのがベルリの半身を長くし、とにかく中高速は重視せず、超低速と、遠方でも羽根の動きが見やすいようにデッドでも高く羽根を上げるという、自分のオリジナルコンセプトで作ったのがアベンタクローラー。
基本的には「バドよりスローに」が絶対条件だった。TOP50をバドで勝利して以来、「移動距離を抑えて粘れる能力」がこの手のルアーには不可欠な能力と感じてたからね。そこで不人気だったベルリも自分の好みに2016年にリメイクしたのがベルリネッタⅡってわけ。
じゃあアベンタGTとRSはなんなんだよ?といわれたら、これはイマカツというメーカーが他メーカーと主義信条が決定的に違う点の表れだね。イマカツのルアーは、一般的に、使いやすく、機能的にもなじみやすい、釣って楽しいルアーの開発というコンセプトがあると同時に、自分自身、トーナメントに勝つことに34年間たゆまぬ執念と情熱を注いできている。
「自分が試合で勝つために必要なもの」を作り出すというふたつの真逆なコンセプトがあるんだ。むしろ今までのイマカツ10年間は、試合に勝つためのルアーを最終目的にしてきたといっても過言じゃない。
しかし、試合で勝つためのルアーというのは、まず試合に勝った時点で「公(おおやけ)」になる。そしてそれが知れ渡った時点、多くの人が使うようになった時点で一般的ルアーとなり、新鮮さや独自性はどうしても薄まってしまうんだ。
アベンタの場合、RSはその典型でサイズが小型化され、羽根もセッティングも特殊でフッキング性能や対プレッシャー性能はオリジナルよりはるかに高い性能を持っている。
GTはまだ比重が高いウッドにアベンタと同じ羽根を使っているから、一般的にも使いやすいダウンサイズ型クローラーとしての位置づけになっている。
一方、RSは超低比重の桐という加工困難な特殊な高浮力木材を使い、飛距離や耐久性を犠牲にしてでも徹底してピンポイントで究極のデッドスローで粘れる性能に特化して作ってある。
だから逆にRSはでかいバスが必ずここにいるってピンで、限界ギリギリまで粘りきって、ガマン比べでバスに水面を割らせる能力に長けているんだ。でもこれはバスの居場所が絞れない人には、速く巻けないし、じれったすぎるし、バスより人間がガマンできないほど何もかもが「遅い」。
だからRSは「???」、「使いにくい」っていう一般アングラーが多く、一番人気は間違いなくアベンタ2017かGTになるわけ。ところが、RSは今もTOP50の多くの強豪プロが密かに試合で使っているし、イマカツに内緒で直接売って欲しいと頼んでくるほどプロの評価は高い。
実際、自分も七色戦で50オーバーのキッカーを釣ったのはRS。でも、三原は池原のクラシックでオリジナルアベンタで優勝してる。これはあの広い湖に20人足らずの人数で、ほぼ独占状態で開催されたクラシックは「一般の釣りの状況」に極めてて近かったともいえるだろうね。
ならばパワーや遠投性にまさるオリジナルが奏功するのも当然。てか、この時RSはまだ世になかったんだけどね。
同じ理由で、ギルロイドは取材では活躍しても、試合では圧倒的にギルロイドJr.が結果を出す。これは七色戦でも自分も6位になった三原も同じJr.。試合で必要なものは一般アングラーの必要なものとはどうしても違う特殊性能が必要になる。
バスロイドも同じ。この威力を試合で勝つために使いたいと思えば、それはバスロイドJr.になり、更に「MINI」まで性能を特化、強化、限定的に絞りきる必要がある。一般ユーザーが欲しがるルアーと、死に物狂いでバスを釣る試合とでは求めるルアーの大きさから性能まで、ギリギリまで特化する必要があることがある。
それが一般アングラーにたとえ理解されなくても、自分が試合で「ハードルアーで勝つ」ためには、そこを諦めたら日本のトーナメントで勝てるハードルアーを生み出す事を諦めることと同じことになる。もう新しいルアーを作る必要さえないかもしれない。
トークショーでモリゾーに「日本じゃ絶対勝てないで」といったのは、「自分も自分のスタイルじゃ勝つのは難しい」という暗黙の同意を互いに第一線で戦うプロとして感じていたからこそいえた言葉。
自分以外の若造プロがいえば、モリゾーもその場でキレたかもね。実際、昨年は第4戦までAOYが見えていた年間4位につけながら、ここ一番で自分の信念を貫いた桧原湖戦で「ビリ」になって完全に夢を断たれた。モリゾーが3インチワームでネコリグで、船団で一生釣りをするイメージが出来るかな?
それより彼はアメリカという舞台を選ぶ男であり、自分は日本で戦う事を決めた以上、爆死〝ギリギリ〟の覚悟で試合に挑まなければ(爆死=降格引退だからね)、そのスタイルはもう自分の憧れたトーナメントじゃない。
モリゾーも自分も、菊サンも、日本のトーナメント全盛時代を経験した世代のプロは勝つこと以上に勝ち方にも諦めたくはない信念があると思う。
ちなみにリアル3DRカラーを最初に出せないのは、生産にアホほど手間が掛かるのと、採算が合わないと弱小バスメーカーなんて速攻倒産するしね。倒産すれば従業員、そしてその家庭が犠牲になる。
経営は遊びじゃない。スピードはそれが出来る体制を独自に作り上げたことが、イマカツの他には出来ない企業力でもあると自負している。何かを持って煮詰めていないというなら、その煮詰め切れていない部分が何処なのか、直接、イマカツのインフォ宛に私にアドバイスして欲しい。
その指摘が理に適ったものであれば、自分もそこは真摯に受け止め、改める必要があるだろう。そのためにイマカツは10周年を越えた昨年から、トーナメント優先主義から、一般ユーザーの声を極力製品にフィードバックする試みも同時に始めている。
エバーグリーンの2017年インスピラーレをGTとRSに分けたのは、自分の好き勝手に、誰がなんといおうとも自分にはこれが最高と思えるものをRSとして別枠でコスト度外視で作る方針に変えた。
案の定、ショーでの評価は圧倒的にGT。でも自分はRS。RSを自分が作らなくなった時、RSを作ることを諦めたとき、それはトーナメンターを引退し、自分のためでなく、「一般アングラーが望む道具」を純粋な道具メーカーとして意識した時、若しくはこの業界に興味がなくなった時になるのだろうと思う。
最後に、確かに霞水系ではギルロイド、バスロイドは活躍の場は少ないかもね。琵琶湖や関西に来たら反応の違いにビビリますよ。
質問 前回は質問にお答えいただきありがとうございました!永久保存版にします!!
今回の質問は......今までに衝撃的にスゴイと思ったルアーにはどんなものですか。私はワーム系だとジャバロン、フリックシェイク、ステルススイマー。プラグだとビッグバド、ジョインテッドクローです。(東京都 安藤紘茂さん 31歳)
今回は山下さんの質問にアツくなって文字数激オーバーしたんで、端的に解答します。安藤さんは2回目だしね。自分的に過去一番衝撃を受けたのは、手前味噌ながら実は「奇跡のモグチャ」です。
長くなるから省略するけど、奇跡のチドリは実在します(断言)。あれは生き物の動きだね。なかなか再現できないのが欠点だけど。奇跡のモグチャでは優勝こそ出来なかったけど、何度も表彰台に立たせてもらった。
最終的にはEGの福島プロがモグチャを使ってTOP50を優勝してくれた時、「この1個を橋桁に当てて割ってしまった時、もう釣れないとすら思いました」と自分に見せてくれた時は心底感動したね。彼は完全に奇跡のチドリを理解してました。そしてその衝撃を受け継いだのがワドルバッツ。
もう22万回以上再生されているけど、「悪魔のチドリ」で検索したら一発で出てくるんで、ぜひ見て欲しいね。その時の自分の驚きと衝撃がそのまま生の声で伝わると思います。それほどこの動きをクランクで生み出した時は嬉しかったですね。
ただ、「悪魔のチドリ」というだけあって、その制御がなかなか難しく、ベストチドリを出すにはかなりのチドリの調整知識を身につける必要があって、慣れないアングラーにはちょっと難しいルアーかもしれなかった。
そこで、調整の必要もなく誰でもベストなチドリを出せる「神のチドリ」を今も考え続けてる。でも誰でも同じじゃチドリの意味あるのかな......。
バス釣り歴42年のキャリアの中で、自分が衝撃を受けた歴代ルアーは......。古くはブレッシングワーム。呼吸する泡付きワーム、ビル・ダンスのロッドエンド叩き釣法でメチャクチャ釣れたね。その影響でアンクルゴビーが出来た。
そして、田辺さんの琵琶湖登場で衝撃を受けたファットギジット&ABUのスピニングときて、同じく田辺さんの影響でサターンワーム、ゲーリーのセンコーも衝撃だったね。
他には琵琶湖で圧勝したギドバク青爪、河口湖でぶっちぎりで勝ったスラッゴー、九州市房ダムでペナルティー1300gから奇跡の大逆転を演じたイーター、伝説のサメウラ戦勝利のビッグバド、プロトの玉が外れて背中に挟まった偶然から生まれたスーパースレッジによる遠賀川戦予告優勝、震災直後の開催で優勝賞金全額を震災募金に寄付できたイーターとジャバロン。
ざっと振り返って今も記憶に鮮やかに残る衝撃的ルアーは、やはりトーナメントの優勝絡みのルアーだね。
他に思いつく限り列挙してみると、やはりジョイクロ。でもそれ以上に衝撃だったのはハドルストン8インチで、アメリカのトーナメントで勝利する動画の凄まじさは近年最大の海外衝撃だったね。
外掛かりがルールでノーカウントになってなかったら、とんでもないウェイトレコードだった。その中でもハドルストンのROF-0(TOP50でも使えたウェイトなしのフローティングモデル)はTOP50プロの中でも神的な存在だったね。
同じ印象で池原ダムのJBクラシックで、三原がビッグクロラーベイトで初日ブービーからまさかの大逆転優勝した時には、まさにバドの再来の衝撃だった。後は小粒になるけど、「ガルプ」。
これはヤバイ、匂いが本当に効くことを事実として唯一証明したワームだと思う。あとデプスBカスタム、「弱波動」がスレたでかいバスに効く事実を確認できた最初のルアー。う〜ん......他には常吉リグ、ハンハンジグ、スタッガーワイド、アラバマってとこかな。

今月の質問をいただいたお二人には、今江プロより実際に試合で使っていたIMAKATSUルアー(サイン入り)をお送りします。楽しみにお待ちください!
質問募集
当コーナーでは今江プロへの質問を募集中。最新テクニックやタックル購入の相談、マニアックなチューン方法、はたまたバスプロになるには?といった人生相談まで。バス釣りにまつわる疑問、質問を綴じ込みの読者ハガキ、もしくはrodori@chikyumaru.co.jpまでお送りください。採用者には今江プロからプレゼントを進呈します。あなたの質問、待ってます!