小悪魔 agehaの編集長インタビュー

編集長プロフィール

インフォレスト
「小悪魔ageha」 編集長  中條寿子さん

なかじょうひさこ 1978年、東京都台東区出身。和光大学卒業後、英知出版(現インフォレスト株式会社)入社。その後さまざまなギャル誌を経て2005年「Happie nuts」別冊編集長に。同年11月「小悪魔&nuts」1号目を立ち上げ、2006年6月に「小悪魔ageha」に改名。同年10月に月刊創刊。

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第32回 小悪魔ageha(小悪魔アゲハ) 編集長 中條寿子さん

生まれつきは関係なく努力でかわいくなろうとする雑誌です。

— 「小悪魔ageha」はキャバ嬢の雑誌というより、もはやギャル雑誌、ファッション誌の1ジャンルにすらなった感があります。この雑誌ができてから、編集部のある神楽坂の風景が変わったともいわれますし。

編集部があるお洒落なビルの外観
編集部があるお洒落なビルの外観

そうですね。そんな風景をおもしろがる人が多いですね。テレビなんかでも紹介されたりするんですが、けっこういい意味でポジティブな取り上げ方をされているようです。
でも私は本当は歌舞伎町にあったほうがよかった(笑)。だってやっぱ不便ですからここは。特にうちのモデルの子は地方の子も多いんで、羽田や東京からのアクセスを考えても、ここは結構大変なんですよ。

— 神楽坂の坂道をスーツケースをごろごろやってる女性を見かけます。

そうなんです。予算がないから撮影なんかもこのオフィスの前でやったりします。やはり昔の街なので近所になかなかうちのモデルに合う撮影スポットがない。タクシーも一方通行だし(笑)。
渋谷あたりにあったらすぐにセンター街で撮るとかできるのに、やっぱ場違いな感じなんですよ。目の前に100円ショップがあるので撮影用のちょっとした小物を買うのには便利ですけどね。

— でも歌舞伎町だとあまりにベタな気もしますが。

編集部員の机もなかなかユニーク
編集部員の机もなかなかユニーク
手前が編集部。意外にこじんまりしている
手前が編集部。意外にこじんまりしている

でも、そのほうが便利ですよ。女の子たちもそう言ってます。
この雑誌、創刊するとき、モデルのイメージは歌舞伎町の「ちょうちょ」だったんですよ。六本木でも銀座でも赤坂でもない、新宿・歌舞伎町。歌舞伎町って全国のキャバクラのシンボルみたいなものなんです。地方に行っても、銀座っぽいものは他にないけど歌舞伎町っぽいのはあるし通用する。夜の街のわかりやすさがあります。
創刊当初はうちのスタッフも歌舞伎町でキャバ嬢やってました。というのも、とにかく人もお金もかけられない状態で、私とバイトの子の2人で立ち上げたんです。バイト代も大して払えないので彼女はキャバ嬢やって生活費を稼いでたんです。この雑誌のためには勉強という側面もありましたが。

— 最初は「ナッツ」の別冊でしたよね。

これが事実上の創刊号。いまとはかなり違いますね
これが事実上の創刊号。いまとはかなり違いますね

はい。2005年10月に増刊ムック形式で出しました。きっかけは、まあ私がつくりたかったってことに尽きるんですが(笑)。
その前にもヘアメイクの別冊を出して成功させてましたから、上司としても、やりたいものがあるならやっていいぞって意外にすんなり企画が通って、やらせてもらった。プレゼンやって何回も会議してみたいなのは一切なしでしたね。

— これはいけると、確信犯的に思ってたんですよね。

ええ、こんな雑誌があれば売れるだろうって思ってました。だって、いままでなかったものだったし、自分もキャバ嬢で働く立場になれば必要だと思いましたから。
でも創刊時は出てくれるモデルのあてもなかったので、歌舞伎町のキャバクラに一軒一軒電話して、「この子モデルに使わせてもらえませんか」って交渉しました。

— 飛込み営業からのスタートですね。

そうなんですよ。でも、お店としては出すメリットがないのでなかなかオーケーくれないんです。お店の宣伝になる、といっても、彼らは男のお客さんに来てもらってなんぼなわけですから、女性誌でそれもギャルでって言ってもダメでしたね。人海戦術でいろいろ人集めして、それは大変でした。
雑誌を出すうちにお店の方たちにも理解してもらえるようになりました。誌面ではその子のお店の名前を肩書きとして掲載させてもらうんです。そのほうがリアルなモデルの姿がわかるので。
いまは専属モデルが8人と読者モデルが約70人います。入れ替わりはしょっちゅうあります。ちょうどキャバクラで働く子と同じ感じで、店のナンバー1を目指すように専属モデルを目指して頑張るみたいな構図なんですよ。

— 創刊号からいきなり評判になりましたね。

編集部員の机の引き出しにはバックナンバーがずらり
編集部員の机の引き出しにはバックナンバーがずらり

5万部刷って増刷がかかりました。とにかく私としてはいままでのギャル誌のいいところを全部もらって、それに足らないものを加えて、自分のエッセンスも加えるわけなので、絶対いけるという自信はありました。
私がいわゆるギャルだったころって、なかなか読みたい雑誌ってなかったんですよ。「プチセブン」(小学館)「セブンティーン」(集英社)は大好きでした。いわゆる当時のギャル誌でしたが、ちょっとキレイめでした。「エッグ」(太洋図書)もちょっと後から来た。
そんな私が、16歳のころ「ヘブンズドア」(ミリオン出版)という雑誌に出会ってびっくり。等身大の自分がそこにいたんですね。あ、これだ、と思ってむさぼるように読みました。
そのときの感動はいまでも残っていて、できればその頃の私の思いを伝えたい、ギャルたちにリアルなことを見せてあげたい、って思うんです。

— いつから編集という仕事に興味をもったのですか。

もともと小学校の頃からなりたかったんで。私、高校を途中でやめて、いまで言うニートみたいな生活をしてたんです。
かっこよく言うと、いまこの年でできることはいまやらねばならない、この年で着れる服はいま着なければならない、この年で遊べる遊びはいまやらねばならない、って思って行動してましたから。でも、途中で雑誌をつくりたいっていう小学校の頃の夢を思い出して、大検受けて大学に入ったんです。
大学に入ったはいいけど、出版社に入社するのは難しい。編集の世界ってそう簡単に入れないといわれていたので3年の終わりにスポニチでバイトして、そしていまの会社の前身である英知出版に4年の終わりころにバイトで採用されました。表玄関から入って就活してもダメだろうから、とにかくバイトで潜り込んで、仕事で認められて社員にしてもらおうという魂胆だったんです(笑)。

— この雑誌はやはりコンビニで売れてるんでしょうか。派手で目立つ表紙だから印象的です。

細かい作業が多いのも特徴だ
細かい作業が多いのも特徴だ

そうですね。コンビニでは表紙が目立つという意見とそうじゃないという意見があるんです。年配の方はおおむねこの表紙はキラキラしすぎてて逆に目立たないって言うんです。
この雑誌、キャバクラで働いている子が店終わって帰りにコンビニで買って帰れるようなつくりを基本にしているんです。読者平均をとると21歳というデータになるのですが、18〜30代後半までいろんな読者がいます。でもやはり夜の仕事を通過している子が多いですよね。
キャバクラの控室やセットサロンにもバックナンバーが置かれているんですが、なかなか店で読んでる時間ないですよね。だから店ではパラパラ見て、帰りに買ってしっかり家で読む、と。
彼女たちの生活に必要なものはヘアにしろメイクにしろひととおりカバーしてます。

— 派手なつくりのなかに、実は「病」や「闇」を特集で大きく扱った号があったり、かなり社会派な内容も入っていますね。上京する女の子のストーリーなどつい読みこんでしまいました。

やはり煌びやかに見える世界には闇があるし、夜の仕事って、本当はすごい大変じゃないですか。派手で綺麗な面ばかりだと、どうしても誌面が嘘っぽくなる。なので、しっかりリアルをやりたいと思って。
でも、そういう企画ができるようになったのも最近で、最初はなかなか重くて暗いテーマはやりにくかったですよ。

— 競合誌ってあるのですか。

ちょろちょろ出てくるみたいですけど続かないようです。やはり男の人が会社から「小悪魔agaha」みたいな雑誌つくれって命令されてつくっても、感覚が全然違うから読者に届かないですよね。多感な女性読者には、等身大で同じ目線で、趣味や悩みがわかりあえるみたいな中身と見せ方をしないと共感してもらえないですよ。
創刊当初から併読誌のジャンルは多岐にわたっています。ギャル誌だけじゃなく「ケラ」(インデックス・コミュニケーションズ)や「キャンキャン」(小学館)買って「小悪魔ageha」を買うという人も増えてるんです。メイクとヘアだけは見たいとかって。

— いわゆる男目線というか、「モテる」というテーマについてはどんなスタンスなんでしょう。

好きな人にはモテたい、かわいい女でいたいんですが、それと「いろんな男にモテる」は違います。むしろ自分のかわいさの完成形を目指すほうが、いろんな男にモテることより重要なんです。
うちの雑誌の読者は、いわゆる青文字雑誌を読んでる子や赤文字雑誌を読んでる子よりは確実に男につくすタイプだと思います(笑)。 生まれつき家庭や容姿に恵まれない子の教科書だと思います。ルックスに自信があればそりゃメイクもしないしTシャツ1枚ですよ。でもできない。だから自分でいろんなものを獲得していかざるを得ない。そんな子へのメッセージは満載です。生まれつき金持ちで美人には必要のない雑誌です(笑)。

— いろいろ白状してくれてありがとうございます(笑)。webや携帯への対応などはいかがですか。web通販はかなり好評ですよね。

編集部の看板代わりのちょうちん
編集部の看板代わりのちょうちん

私もそうですが、読者の多くは機械が苦手、パソコンに接する機会も少ないんです。私、女性は機械より、紙や木といった自然なもののほうが相性がいいんだと思ってる。だから雑誌についてはよくわかるんですが、パソコン系はお手上げなんです。
ネット通販も会社主導ですから、儲かってるとか儲かってないとか、私は正直あまり理解できていないんです。
携帯はみんな使いますよね。ですから誌面にはQRコードをつけて、そこから買えるような仕組みにはしています。

— 休日あるんですか。

いや、仕事してるか寝てるかの生活です。細かい作業してますし、仕事がらみの付き合いとかもありますし。
温泉も好きですが、ただお湯につかるだけなら行かない。そこにかわいい女の子がいてスカウトしたかったらそれを目当てにその土地へ行って、ついでに温泉に入る、日々本当にそんな生活なんですよ(笑)。

編集長の愛読誌

  • 1.美STORY(光文社)

    近年まれに見るヒットだと思いますよ。

  • 2.Hana*chu(主婦の友社)

    つくりの細かさがお手本になります。

  • 3.バス&バブル ハンターチャンス(晋遊舎)

    変な雑誌だったんで思わず買ってしまいました。お風呂がテーマで変でした(笑)。

  • 4.ソウルジャパン(ミリオン出版)

    テーマがいい。自分が好きなタイプの男の人がたくさん載ってる(笑)。

  • 5.I LOVE mama(インフォレスト)

    「小悪魔ageha」のママ・バージョンです。

(2010年3月)

取材後記
インタビューってどこか音楽セッションのような感じがしていて、私は毎回いろんなミュージシャンと共同で音作りをしているんだなという気で望んでいます。言い換えれば、プレイヤーの持ち味をどれだけこちらが引き出せるのかで、その日のセッションの良し悪しが決まるのです。
ジャズテイストの人もいれば、ロック魂の人もいる、クラシックもいれば、演歌もいる。でも、中條さんってどうなんだろう。お会いするまではなかなかそのへんがわかりにくかったのですが、目の前で話し始めると意外や意外、どんな球を投げても返してくれるし、アドリブ対応してくれるし、サービス精神旺盛なフレーズを弾いてくれたり・・・と、とにかく会話のとぎれがないほどスリリングなセッションになったと思っています。限られた時間でしたが面白かった。ギャラリー にも大変うけてましたね。遅まきながら若い女性の気持ちが少し分かったような気になりました。流石です。「小悪魔ageha」編集長は極めて個性的、かつ接客のプロでもあるわけです。思わず「延長お願いします」と言いそうになりました(笑)。
その模様は同行した富士山創業者のヘンリがUstで流すといってずっと撮っていましたが、NG箇所が多いからなあ。編集しないと流せないでしょうね。どうします中條さん。そんなことさせていいですかぁ。

インタビュアー:小西克博

大学卒業後に渡欧し編集と広告を学ぶ。共同通信社を経て中央公論社で「GQ」日本版の創刊に参画。 「リクウ」、「カイラス」創刊編集長などを歴任し、富士山マガジンサービス顧問・編集長。著書に「遊覧の極地」など。

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