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地域のコミュニティから“なりわい”を創出
『Satoyamaカフェ』赤木直人さん講演

Japan Times Satoyama コンソーシアム、おうえん・フェス、ガイアックスは1月15日、Nagatacho GRID(東京・千代田区)で「『第7回Satoyamaカフェ』+地域おうえんBASH」を開催しました。 今回は、岡山県真庭市中和地区で「小さな里山資本主義」を実践されている赤木直人さんが、地域の活性化やコミュニティの形成など、赤木さんが推進する事業についてプレゼンテーションをしました。

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赤木氏と生産中の人気商品いぶりこうこ

今回のテーマは「小さな里山資本主義~地域とともに、なりわいをつくる~」です。最近は、テレビなどで田舎暮らしや、ふるさとでの起業、地域活性の新しいビジネスモデルなどを目にすることが増えてきましたが、当日の会場には“地方創生"“里山"“地域活性"“Iターン"“Uターン"などのワードにピンときた人たち、そして、その実現のために一歩踏み出そうとしている人たちが多数来場しました。

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Japan Times Satoyama 推進コンソーシアム事務局長吉田雅人氏

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吉田氏の解説の後、参加者同士でトークセッション

冒頭で、Japan Times Satoyama 推進コンソーシアム事務局長の吉田雄人氏が登壇。BASH(=楽しむためのにぎやかなパーティ)となるべく、参加者に対し、2~3人でグループを作り、トークセッションをするよう促しました。テーマは「皆さんにとって地方創生とは?」「資本主義とはどんなもので、どうあるべきなのか?」。1セット5分程度の短い時間の中で「効率化」「地方それぞれのよさ」「なりわい」「資本がない」「資本の分配」などから、「お金の暴力」といったドキッとするようなワードまで挙がりました。 会場全体がウォーミングアップできたところで、赤木さんのプレゼンテーションがスタートしました。

赤木さんが行っているのは「モノづくり」「コトづくり」「ヒトづくり」で、そのすべてが地域資源を使っているという点が注目されています。地域資源には、山に生えている木や、栽培している野菜はもちろん、地域の記憶、根付いている人々の暮らし、知恵や、そして考え方までも含まれます。そうした地域資源を組み合わせて“なりわい"を作っていくというのです。

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赤木さんが活動している中和地区の里山資本主義をマップにしたもの

例えば木材について、赤木さんは「『日本の原風景』ともいえる中和地区のランドスケープには山があります。もちろん、山主さんと話して、そこの木を伐採します。その木は温泉を焚く薪になり、用材になり、シイタケの原木になります。そして地域の大ヒット商品である“いぶりこうこ"をいぶす木にもなります。用途は様々です」という。そして“なりわい"を作るには、まず木を伐採する人を募ること。赤木さんのやりかたは「やりたい人、この指とまれ!」方式。「それぞれが無理ないスタンスで参加することが大切です。それで間伐が進めば、今度は“くろもじ"が生えてきます。そうしたら今度は“くろもじ"でエッセンシャルオイルを作りたい人を募ります。このように、ひとつの資源でいくつかの産業が生まれます。地域全体で一斉に同じことをするのではなく、小さな事業がそれぞれ動いているということです」。 ちなみに、なぜ“いぶりこうこ"がこの地域の名産品となったのでしょうか? もともとこの地域は大根の産地でしたが、生産量が激減。学校給食用にと生産を継続したものの、自校で給食を作らなくなってしまったため、さらに需要が減りました。現在は庭先で作られるぐらいで、形が悪かったりすると、道の駅に出す人もいません。そこで「漬物にすればいろいろなところに流通できるのでは?」と思い、人のご縁があり、本場秋田県で製法を学び作り始めました。今ではインターネットで発売を開始すると、2週間で完売する人気商材となっています。

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画像を投影しながら解説していく赤木氏

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次々映し出されるスライドに会場全体興味津々

このほかにも、赤木さんが地域の人々と進めていることは多岐にわたりますが、事業を進めていくうえで大事にしているのは「関係性」と「スケール」だといいます。「中和という地域に固執して活動しています。すべてを把握できる規模感が大事ですから」。そして感謝と尊敬。「自分も外から入った人間ですし、コミュニケーション能力が高いわけではありません。礼節があるか、課題にどう向き合っているか。地域の方々がどういう考えであるのか。多様な価値観があるので、それを認め合って、自立したうえで協調していく必要があります」と話しました。まだ解決しなければならない問題があるという前提で「(地域事業は)ひとりではできない。地域に住んでいる方との繋がりが必要です。プレイヤーは住んでいる人。そして、穏やかに変化させていくことが大事です」。

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プレゼンテーションの後は、乾杯~!

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おいしいものをつまみながら、参加者同士の意見交換はつきない

赤木直人
1979年生まれ。大阪府出身。
小売業でバイヤーとして勤務。2008年子どもの誕生を機に妻の実家がある岡山県真庭市に移住。2015年地域振興を目的とした一般社団法人アシタカを設立。地域資源と人との関係性を大事にして、多くのナリワイを創り出し、組み合わせて事業展開している。
地域おうえんBASH:地域を応援、盛り上げよう、地方創生をしていこうという人たちが集まり、取り組みやアイデアなどを発表。交流をするイベント。単にトークイベントではなく、参加者自信が地方創生に関してアクションを起こすきっかけになることを目指している。
ガイアックス:会場でもあるシェアオフィスの「Nagatacho GRID」を運営。TABICA・「みんなの暮らしを旅しよう」がコンセプト。地元の方に体験を提供してもらうシェアリングエコノミー事業も行っている。
Japan Times Satoyamカフェ:全国各地の里山資本主義の実践者の方々に東京で講演していただき、地域と東京のつながりを創出することを目的としている。

Japan Times Satoyama推進コンソーシアム
活動方針
1里山資本主義の実践者を支え、つなぎ、ふやしていき、その活動を持続可能なものにしていくこと。
2里山資本主義が、マネー資本主義のオルタナティブな選択肢としてきのうするようにすること。
3里山資本主義への支援は関与が、企業や自治体等の国内外での価値を高める環境をつくること。

「大切なものは意外と身近にある」
Satoyama推進コンソーシアム 末松代表インタビュー

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Satoyama推進コンソーシアム 末松弥奈子代表

「『第7回Satoyamaカフェ』+地域おうえんBASH」を共催した、Japan Times ―Satoyama推進コンソーシアム代表であり、株式会社ジャパンタイムズの代表取締役会長でもある末松弥奈子氏に話をうかがった。

―― 日本における英字新聞の草分けであり、国内外のニュースを英語で発信。常に世界に目が向いているという印象があるJapan Timesが日本の地方創生、地域の活性化に着目し、Japan Times Satoyama推進コンソーシアム設立に至ったのはどうしてでしょうか?

末松弥奈子(以下末松) まず、東京イコール日本ではないという思いがあります。
Japan Timesは東京・大阪の2拠点を中心に取材活動をしておりますので、日本の各地域の情報は足りていないのではないかと思っていました。
インバウンドはもちろんのこと、日本各地には発信するに値する情報がたくさんあります。それを英語で発信するお手伝いをしていきたいという思いがありました。

―― この事業は始めてからどれくらい経つのですか?

末松 このコンソーシアム自体はまだ1年ですが、「里山資本主義」(著・藻谷浩介、NHK広島取材班 出版・KADOKAWA)という本が出て5年になります。
高齢化や少子化、それに伴う人口減少など、持続可能な地域作りにのしかかってくる問題は、この「里山資本主義」で日本全体に提示されたと思います。
それも含め、日本全国で同時多発的に起こっている社会課題、地域特有の課題解決への取り組みなども多くあり、それらも紹介していきたいと思っていたので、丁度機が熟したのかもしれません。

―― 機が熟するというと。

末松 インターネットを中心としたインフラが整ったということが挙げられます。
地域で起こったことを情報発信できるとか、地域で生産されたものを大きな流通網に乗せることなく、直接ECでお客様に届けることができるなどです。それはインターネットの賜物だと思います。

―― 日本のどこかの地点で起こったことが世界に直接つながるようにもなった。

末松 そうです。
インターネットの普及により、モバイルワーカーや、テレワーカーのような仕事の仕方が可能になり、リアルライフでは都会だけでなく、もう一つふるさとや他の地域にも関心を寄せる、いわゆる関係人口が増加しています。
それもインターネットがあるからできたことです。

―― 世間の人の暮らしている共同体への考え方、感覚も変わってきたように感じます。

末松 個人的な印象としては、やはり東日本大震災の影響が大きかったと思います。
エネルギーの問題であったり、人のつながりの問題であったりとか、地域の良さを見直したり、あるいは社会的なことに関心を持つ人がすごく増えました。
その中で日本人全体の興味関心が、経済の単純な成長――私たちはマネー資本主義と呼んでいますが――だけではなくて、より精神的なつながりだとか、生き方を考え直す方向に向けられたと思います。

―― 東日本大震災以来、メディアで若い世代が地域のために何かをしようとしている姿をよく見るようになりました。

末松 高度成長期以降に主流だった、田舎には何もないから都会に出て大きな会社に行きなさい、という流れが一旦止まり、地域のつながり、地域にしかないものを大事にしようとする流れに大きく変わりました。
そういった日本全体で同時多発的に起こっている動きをつなげたい。それをつなげて英語で世界に発信したいという思いが、現在のコンソーシアムの活動につながっています。

―― メディアを見ていて、外国人の方はなんでこの土地のことを知っているんだろう? と驚くことも増えました。

末松 インスタグラムをはじめ、旅先でも見られるソーシャルメディアなど、インターネットのインフラが、より世界を身近にしていると思います。
情報が流通するプラットフォームがあって、みんなが興味関心を広げていくからニッチな情報も手に入るようになったという流れもあります。

―― 頭の中で、こういうのがあったらいいなと思うものが、実は日本のどこかで生産されているかもしれません。

末松 そうですね。
でもそれは日本や先進国だけでもなくて、発展途上国や新興国も含めて、世界中の情報が手に入るようになっていると思います。
デジタルネイティブと呼ばれている若い方たちを中心に、世界中から自然な形で情報をとってきたり、Iターン、Uターンで人が動いているというのもあると思います。
そういう人たちは、地域でやっていることを自ら情報発信しているでしょう。また、その地域でやっていることが、実は他の地域にもあてはまることだったりするので、それを共有することで、失敗せずにより前に進める環境もできてきているのかもしれません。
成功や失敗体験を共有しながら、地域を盛り上げていく。それぞれの特色を持続可能にできる地域が増えていくこと。その成功体験を提供することで、世界に役立てると思っています。

―― まだ、こうした地域の試みをご存知ない方に、メッセージをお願いします。

末松 大切なものって意外と身近にあると思います。
たくさんの数を作るとか売るということではなく、地域が持続できる可能性という視点が大切です。
この地球が、この地域ができることの価値の最大化に、できることから取り組んでいる人たちが日本中にいます。
ぜひそういう人たちとつながってほしいと思います。

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