科学好き小学生が音と光の工作にチャレンジ 『子供の科学』が第1回ワークショップ開催

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株式会社誠文堂新光社が発行する小中学生向けの科学雑誌『子供の科学』が主催するKoKa Schoolの第1回ワークショップ(参加型体験学習)が2月17日(日)、東京・神田にある同社神田イベントスペースで開催されたので、取材に行ってきました。 「子供の科学」は今年で創刊95年を迎える科学雑誌で、科学好き・工作好きな少年少女を中心に愛読されている月刊誌です。少年少女と書きましたが、実はオトナの読者もたくさんいるとのこと。長い歴史とともに、小学生から今までずっと読み続けているという読者もいらっしゃるようです。さらに読者の子や孫といったように、代々読み継がれているというご家庭もあるそうですよ。

今回のワークショップは「KoKa School 電子工作コース」で、ポケデンエントリークラスとポケデントレーニングクラスをセットにして開催されました。“ポケデン”とは、同誌で人気の電子工作連載で、「ポケットに入れて遊べる電子工作」という意味で、お菓子などの箱に入れて楽しみます。 ポケデンエントリークラスは、ハンダ付けのやり方からレクチャー。現在50種類以上の作品があるポケデンの中から、比較的部品数の少なくてつくりやすい「プチピカマーカー」の作成を目指します。そして、ポケデントレーニングクラスは、エントリークラスで学んだ基礎をもとに、今度は自力でポケデン「アケルトナルンダー」を組み立てることを目標としたカリキュラムです。

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当日は、同誌読者の小学生12人が参加。男の子8人、女の子が4人でした。今回の講師は“ポケデン"の連載を監修する伊藤尚未先生です。伊藤先生は、現代美術のアーティストとして、筑波大学在学中から数々の国際的な賞を受賞してきました。そして、芸術作品の創作活動を通じて、科学者としても活躍されるようになりました(詳しくは最後に掲載する先生のインタビューをご覧ください)。 連載18年、いわば子供の科学の“顔"といってもいい先生の登場に、参加者の子供たちも大興奮。サインや写真をねだる子供たちに、先生は丁寧に接していました。

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午前10時、エントリーコースのスタートです。まず、当日の工作に欠かせないハンダ付けのやり方から説明します。伊藤先生が教室の中心でハンダを手にすると、そのまわりを参加者たちが囲み、みな真剣なまなざしで先生の手元を見ています。ハンダ付けの基礎と取り扱い時の注意を教わると、みな自分の席に戻り、ポケデン「プチピカマーカー」の作成に取り掛かります。「プチピカマーカー」は、明るさを感知し、暗くなるとLEDランプが点滅し始めるというもの。この回路を作るために、各種電子部品を基板にハンダ付けしていきます。

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ここで、子供たちに渡された「プチピカマーカー」の回路の説明書を皆さんにも見ていただきたいと思うので、少し抜粋します。

『回路はNPN型とPNP型のトランジスターによる弛張発振回路だ。10μFのコンデンサーが充電されると、2SC1815Lのベースに電気が流れる。これにより、2SA1015Lのスイッチがオンになり、LEDが一瞬光る。これでコンデンサーが放電状態になるので、また充電を始める。この繰り返しでLEDがピカッ、ピカッと光る。フォトトランジスターにより、暗くなると自動的に点滅を始めるようになる。(以下省略)』

いかがですか。皆さんおわかりになりますか? 実際は、すべての漢字にルビが振ってあるものの、小学生を対象としたテキストにしては、かなり難しいと思いませんか? でも、ここにポケデンの人気の秘密が隠されていることに気づきました。あえて難しい名称や語句を使うことによって、子供たちの旺盛な好奇心をさらに掻き立てているのです。わからないものをわからないまま終わらせず、能動的に理解しようとさせることで、ポケデンに、いや、科学に自然と目を向けさせているのだと思いました。

さて、ワークショップのレポートに戻ります。子供たちの手元を見ていると、これまでにハンダ付けをやったことがある子は、慣れた様子でどんどんと進めていきますが、初めての子はなかなかうまくいきません。ある男の子は、思い通りにいかず泣き出してしまいました。きっと、周りの子たちの作業の速さについていけないことが悔しかったのでしょう。そんな時は、すかさず伊藤先生が来られて、やさしく指導します。 完成させた子は「プチピカマーカー」を手で包み込むようにして暗くさせ、LEDが点滅するのを確認すると、嬉しそうな表情を浮かべていました。

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そして、正午を迎えエントリーコースは終了。でも、午前中に「プチピカマーカー」を完成させられなかった何人かの子は、午後も引き続き作業し、完成を目指します。涙した男の子も、午後は「プチピカマーカー」の続きからです。頑張れ!

お昼休みを経て、午後1時からは、トレーニングクラスの開催です。今度は午後5時の終了時間までに「アケルトナルンダー」を作ります。これは、午前中に作成した「プチピカマーカー」とは逆に、明るくなると音が出るもので、市販のメッセージカードなど、開くと音楽が流れる、あの仕組みです。明るさに反応する仕組みという点では午前中の応用編なのですが、使用する電子部品の数が増えるので、少し難易度が上がりました。 午前中のエントリークラスと同様、できる子は黙々と作っていき、ちょっと不安のある子は、手を挙げて質問しながら進めていきます。質問が増えてくると、ツッティー(子供の科学編集部・土舘建太郎編集長)とタケモ(同・竹西素子さん)、こっすー(編集局事業推進部・小菅山智子部長)も“先生”となって指導していきました。

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しかし、ここで伊藤先生も編集部の方々も想像しなかったことが起きました。

トレーニングクラスは午後5時までですが、なんと、午後3時を回ったところで、参加者全員「アケルトナルンダー」を完成させてしまいました。もちろん、泣いていた男の子も。しかも、一番最後ではなかったのです。「プチピカマーカー」を作った時のアドバイスをすぐに活かせた彼に、秘めた才能を感じたことは言うまでもありません。 参加者のみんなががんばったため、残りの時間は伊藤先生によるトランジスターやLEDなどの電子部品の講義をたくさん聞くことができました。

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実は、今回のワークショップは、募集開始から約2時間で定員に達したというほどの人気ぶりで、既に3月開催の第2回も満員で締め切られてしまいました。もし、興味のある子、そして、我が子にも参加させてみたいという親御さんは、「子供の科学」のオンラインショップ「コカショップ」(https://www.shop.kodomonokagaku.com/)に情報が掲載されますので、こまめにチェックしてください。

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「子供たちが興味のあることに チャレンジできる機会を作ってあげたい」

伊藤尚未先生インタビュー

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―先生はもともとアーティストでいらっしゃったそうですね。

はい、今でもアーティストです(笑)。

―どういった芸術分野でしょうか。

いわゆる現代美術の中のメディアアートと呼ばれる分野ですね。

―学生の頃から、既に多くの賞を受賞されていますね。

はい。その頃はコンテストが盛んだったので、結構チャレンジしていました。

―そこから、科学に向かわれたきっかけは何だったのでしょうか。

芸術表現のひとつとして科学を取り入れようとしたのがきっかけですね。たとえば、LEDランプを光らせるだけではなく点滅させるとか、雰囲気を出すためにぼやっと光らせるとか。そういった知識が必要になってきたので、自己流で勉強しました。

―デジタルが主流の今、工作に興味を持つ子供たちにどのような印象を抱いていますか。

塾で理科教室も行っていますが、子供たちの話を聞くと、学校では器具や薬品を触らせてもらえないといいます。今日使ってもらったハンダごても、ホームセンターに行けば簡単に購入できますが、正しい使い方を知っている親御さんや先生が少なくなりました。だけど、子供たちは興味があるから、やってみたいんです。そういう、興味があることにチャレンジさせてあげる機会を作ってあげたいと思っています。

―最後に、科学に興味を持つ子供たちにメッセージをお願いします。

科学に限らず、数学でも歴史でも、興味があることに対しいろいろチャレンジしてほしいです。将来的にそれを活かせなくても「いい経験だったな」って思えたら、それでいいと思います。それに対し、先程も言ったとおり、私たちオトナは、子供たちが興味を持つものを実践できる機会と場所をもっと作る必要があります。それらを教わる機会がなかったり、教えられる先生がいなかったりすることで、子供たちの夢や希望を潰してはいけないと思います。もしかしたら、今日このワークショップに参加した子の中から、将来、ノーベル賞を受賞する子が出るかもしれませんからね。

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