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コロナ禍で大きな社会的役割を果たした、ビル&メリンダ・ゲイツ財団やチャン・ザッカーバーグ・イニシアチブ(CZI)をはじめとした、
世界で起きている『新しいフィランソロピー』の潮流を日本でも社会実装し始めています。
これらは、慈善活動だけでなく、
多様な資金提供と活動を駆使して社会的インパクトの実現を目指す『フィランソロピー3.0』と呼ばれている動きです。
今号のForbes JAPANでは、『これからの“お金の使い方”』をテーマに、
起業家たちが取り組みを始めているフィランソロピーの動きを取り上げています。
今回は、さまざまな特集たちの中から、
暗号通貨取引所FTX創業者兼CEOのサム・バンクマン=フリードのインタビューを取り上げます。
『世界で最も裕福な30歳以下』暗号通貨の天才は
『寄付するために稼ぐ』
30歳の誕生日を前に、サム・バンクマン=フリードの資産は2.5兆円を超えました。
寄付するために稼ぐ、という彼が信奉する哲学、『効果的な利他主義』とは何でしょうか。
僕の目的は効果のある寄付をすることだ
スティーブ・ジョブズは自身のシンプルで洗練された製品にこだわっていましたし、
イーロン・マスクは自身の事業が人類を救うと主張しています。
しかし、サム・バンクマン=フリードは違います。
「寄付するために稼ぐ」という信条から、暗号通貨のゴールドラッシュに参戦しました。
始めはトレーダーとして、続いて取引所の創設者として、
ただ金持ちになれることがわかっていたというだけの理由で。
例えばオレンジジュースの先物取引で、もっと大金をためられると思ったら、
暗号通貨から手を引くか問われると、「ああ、引くね」と即答すると言います。
とても奇妙で落ち着かない、はざまの時期
バンクマン=フリードの暗号通貨取引所FTXは、
トレーダーがビットコインやイーサリアムなどのデジタル資産を売買できる場で、
昨年7月にはコインベース・ベンチャーズやソフトバンクなどから9億ドルを資金調達し、
その評価額は180億ドルになりました。
ビットコインの価格や規制、デジタル資産の未来について自身の見解を
「業界にとってはとても奇妙で落ち着かない、はざまの時期なんだ」と述べています。
「世界の半数の国で先行きが極めて不透明な状態だからね」
暗号通貨の『伝道者』ではない
6年前には、バンクマン=フリードはまだ1ビットコインの暗号通貨も購入したことがなかったといいます。
それが現在では、純資産額225億ドルで、マーク・ザッカーバーグを除けば、
歴史上、これほど若くしてこれほど金もちになった人間はいません。
皮肉なのは、彼が暗号通貨の『伝道者』ではないこと。
ほとんど信者ですらない。
何より金のために働く人間であり、可能な限りの大金を稼ぐことに心血を注いでいますが、
すべてはその大金を寄付するため。
(方法はあまり問わず、寄付先や寄付時期ははっきりしていない)
「効果的利他主義」とは何か
「僕の目的は効果のある寄付をすることだ」
そう語る、バンクマン=フリードの『効果的利他主義』はシリコンバレー流のひねりを加えた慈善活動の考え方で、
プリンストン大学の哲学者、ピーター・シンガーが支持しており、
フェイスブックの共同創業者であるダスティン・モスコヴィッツのような人々の賛同を得ています。
基本的な考え方は、証拠と理性に基づいて可能な限り絶対的に最大の善を行うこと。
通常、人は流行の理念や個人的に影響を受けた事柄に関する運動に寄付をします。
一方で、効果的利他主義者はデータを見て寄付先や寄付時期を決め、
その判断の基準となるのは、寄付金1ドル当たり最大多数の人が救われることや、
最多の所得を生み出すことといった非個人的な目標です。
もちろん、最も重要な要素のひとつは、そもそも寄付できるだけの大金を有しているということ。
スタンフォード大学の法学教授を両親にもつバンクマン=フリードは、
両親が西海岸の学者たちと交わす政治の議論を聞きながら育ちました。
2014年にMITを卒業すると、ざっくりと考えていた物理学の教授になるという考えを棚上げし、
世界レベルの資産を蓄えようと仕事に取り掛かりました。
金融業の高給職に就き、クオンツ投資会社のジェーン・ストリート・キャピタルで
上場投資信託(ETF)取引を担当しながら、
6桁ドル台の年棒のかなりの部分を慈善活動に注ぎ込みました。
本誌では、彼の寄付についての動きや、資産について語られています。
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