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映画『あちらにいる鬼』で主演の寺島しのぶさんと、原作者の井上荒野さんが対談。
「いま、鬼はあっちの人のところにいる」
作家の父と愛人、乱倫を見て見ぬふりの母。
井上さんは、父を巡って鬼ごっこを興じるような3人の関係を小説として書き上げました。
いったい誰が本当の鬼だったのか、正しい愛など誰が決められるのか?
寺島さんと井上さんが語り合います。
文学者たちの集まりだから
あえて言葉で、つまりセリフで

ご両親と瀬戸内寂聴さんの関係をモデルにした原作を元に完成した本作。
井上さんはどうご覧になり、寺島さんはどう演じられましたか?
井上:すごく簡単に言うと、ぐっと込み上げてくるものがありました。この小説を書いたのは、寂聴さんから父との話を聞いて、本当に父のことが好きだったんだなと思えたからなんですね。
映画では、その伝え方が小説とは全然違う感覚で進みますが、篤郎とみはる、笙子の関係の描かれ方にぐんぐん引き込まれました。
もとは自分で書いたんだよなと思いながらも……。
寺島:私はみはるを演じるにあたって、寂聴さんの本を読んだり、考え方や性格を想像したりしました。でもそれらは役のエッセンスみたいなものであって、私は井上さんが書かれたみはるを演じるという感覚でした。
井上:映画には寺島さんが解釈したみはるが現れていて、すごくよかったです。でも、そういうことを別にしても、本当に寂聴さんに似ているんですよ(笑)。
寺島:そうですか(笑)。この物語は原作の分厚さが物語るように、3人の絡み合う年月の長さが結構大事だと思っていました。でも、映画は尺の壁がありまして、その縛りのなかで濃密な時の流れをどう表現するかを考えました。
井上:原作に書いたこと全部なんて、入り切らないですからね。
寺島:それで監督の廣木隆一さんは、この物語は篤郎と妻の笙子、みはるという文学者たちの集まりだから、あえて言葉で、つまりセリフでつながっていくということをやってみないかと……。
井上:ああ、なるほど。原作は一人称で書いているので、心の中の述懐も多いんですよね。それをわりとセリフで表してくださっているなと思っていました。ベッドシーンで体をピタッと密着させながら、みはるが篤郎にささやくシーンとか、すごく素敵だなと思います。
寺島:私はあのシーンは何も言いたくなかったんですけどね。いいじゃない、抱き合っているだけでって。でもセリフを言ってみたら意外に悪くなかった(笑)。
みはるの心の中をセリフ化していくことで、この3人だからこその不思議な関係が成り立ったんだなと腑に落ちたんです。
本誌ではお二人の対談の続きをお読みいただけます。
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