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ままならぬことも多かった数年間を経て、全国の酒蔵が、思い切り酒を醸せる悦びに打ち震えているように感じる2023年。
飲み手のわくわくも止まりません!
今号のdancyuでは、クオリティー・オブ・日本酒ライフがぐぐんと上がる情報を掲載しています!
パワーほとばしる注目の2蔵

「ウチの酒造りはラフティングそっくり。大自然のもと、蔵のみんなでオールを漕ぎ、岩石あり滝ありの激流を下っていく。しかもゴールがどんなのか、私も含めて知りません。それなのに全然心配してない。反対にどこに着くのか興味津々なんです」
大胆かつ懐の深い蔵元・土田祐士さんと酒造りが好きでたまらない杜氏・星野元希さん。
二人が道なき道を突き進む、ハラハラドキドキの酒造り。
「ウチは利潤より酒造りが優先です」
dancyuでは、4年前の2019年3月号でも土田酒造を取り上げ『菩提酛×山廃酛』を紹介しています。
そのときも「うまい!」と唸る銘品を紹介したのですが、
同年の秋、蔵開きを前に土田のエースで四番を務める星野さんから編集部に連絡が入ります。
「突然ですが山廃は全廃することにしました。令和の土田は生酛です。今年は山廃廃元年になります」
ファンたちは嘆息したことでしょう。
ですが星野さんは屈託がありません。
「生酛をやれば技術の引き出しが増えるわけだし、いいんじゃないっスか」
土田蔵元も明るく言ってのけます。
「酒造りは星野君に一任しています。彼が山廃より生酛を選んだのだから、私はそれでいいっス」
お二人があっけらかんとしていますが、実は蔵では大きなアクシデントがあったのだといいます。
酒造りの失敗と追究

ことの発端は2018年師走、星野さんは仕込み中のもろみを味見して仰天します。
「す、す、酸っぱい……」
急報を受けた土田も眉をひそめます。
「これ、ちょっとヤバいかも」
ふたりは顔を見合わせました。
「日本酒史上に残る酸っぱい酒だ!」
土田の酒はもともと酸味が魅力ながら、この時の山廃はケタ外れ。
どうやら野生酵母、とりわけ乳酸菌がとんでもない悪さをしでかしたようです。
それでも蔵元は星野さんを慰め、励ましました。
「蔵棲みの菌、地元の川場の菌の力を借りて昔ながらの造りをやってるんだから、こういうことだってあるよ」
菌を手懐けようとしましたが、迎合するのではありません。
まして添加剤や薬品を用いたり、衛生管理の名のもと人為的に菌を徹底排除するのでもありません。
大自然に存在する金の力を引き出し、酒造りに優位な菌にとって最適の環境を調えます。
ポンッ、蔵元は星野さんの肩を叩きました。
「失敗から得られる物は多いはず。失敗は神様からのギフトだ」
星野は「マジ、これはクビになる」と覚悟していただけに、蔵元の度量の大きさが胸に響きました。
ようやく笑顔を取り戻した星野は憎まれ口を叩きます。
「蔵元はクレージーですよ!」
さりながら、事故はなくなりません。
星野さんは原因追求のため奔走します。
蔵にいる微生物の実態調査と検査はもちろん、醸造の教科書をもう一度めくり、
自蔵のデータを突き合わせました。
各地の蔵を訪ね先達の意見にも耳を傾けました。
過度のストレスのあまり、星野さんはメニエール病を発症してしまいました。
眩暈と耳鳴りに苛まれながら、それでも菌との共存の道を探ります。
悪戦苦闘の末に、ようやくたどり着いたのが『山廃は朴氏の技術に属する』という警句です。
星野は納得しました。
「山廃はとんでもなく難しい醸造法だとわかりました。まだまだ未熟者のオレには時期尚早でした」
「ぜひ、生酛で名誉挽回したい」
朴氏の申し出を蔵元は快諾し、ツイッターにもこのことをアップしました。
本誌の続きでは酒造りの面白さを語っています。
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