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ChatGPTなど生成AIによって、いまの社会と経済は本当に根本から変わるのでしょうか。
Forbes JAPANでは、
経済学者・井上智洋氏
社会学者・大澤真幸氏
AI研究者・三宅陽一郎氏
という3方面の分野の日本の先鋭たちが考察しています。
ChatGPTはこれまでのAIとどう違うのか
ChatGPTなど生成AIが急速に広がるなか、その対応に世界が追われています。
ChatGPTはこれまでのAIとどう違い、最終的にいまの経済や社会はどう変わる可能性があるのでしょうか。
人間的な知性のレベルには到達していない
井上智洋:ChatGPTを使ってみて、汎用人工知能の原始的な形態がついに出てきたという印象をもちました。ただ、GPT-3.5はまだ言葉の世界にとどまっています。
何かを説明したり、文章をようやくしたりするだけでも、多くの人を驚かせるレベルには達していますが、言ってみれば家にひきこもってネットサーフィンをしている偏差値エリートみたいな存在です。
しかしGPT-4では、画像や音声と言葉を組み合わせるなど、マルチモーダルな入出力を扱うことができますから、言葉だけで閉じている世界からは飛び出しているんですね。その点で、汎用人工知能にさらに近づいている感じがします。
とはいえ、人間の思考と同じとは言えません。人間のように、環境とインタラクティブな体験を通じて、感性データを蓄積しているわけではないからです。その意味では、汎用人工知能へのブレイクスルーではあるけれども、人間的な知性のレベルには到達していないというのが、ChatGPTに対する率直な感想です。
AIと人間の超えられない垣根を超えているように思える
三宅陽一郎:確かに汎用人工知能への足がかりにはなる気がしますね。
ただ、人工知能がグラウンディング、つまり言葉と現実の事物の対応ができているかというと、マルチモーダルになっても、まだできていないと思います。
ChatGPTはさまざまなトピックの言語を操れているように見えるので、AIと人間の超えられない垣根を超えているように思えるんですよね。
人間の自尊心にかかわるような仕事が奪われていく
大澤真幸:GPTが本質的に人間的な知性なのかどうかという問題と、もっとプラクティカルに考えて、僕らの生活にどういう影響をあてるかという問題は、分けて考えなければいけないと思うんです。
前者についてはやはり汎用的知性とは言えません。
例えば僕はいま、「言いたいことが言えたかな。ちょっと違うかな」と、しゃべりながら思っています。つまり人間には、言葉でうまく言い表せないという経験がある。とりわけ大事なことって、たいていそうなんです。
でも、言葉にならないという体験自体が、言葉がなければできないんですね。
人間は言葉をもつからこそ、言葉にならないものがある。こういうことは、ChatGPTの世界ではまったく考慮されないんですよね。質問に対してもっともなことを言ってくるわけだけど、実はいちばん重要なことだけは言われていないような感じがします。
一方、後者については、仕事の量が減るというより、「いい仕事を俺はやってるんだよね」と人間の自尊心にかかわるような仕事が奪われていくことのほうが重大です。
例えば事務仕事でレポートをつくるような場合、客観的に見ると、本当は大したことをやってないんですよ。だけど本人としては、時間をかけてネットや本でいろいろ資料を調べているから、創造性を発揮していると思っている。
そういう仕事がAIに取って代わられていくと、仕事に対する人間のプライドは失われていくんじゃないでしょうか。
本誌では3者のChatGPTに対する考えについてさらに深く語られています。
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