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いまや日本各地には数多くのワイナリーが存在しますが
長野県ほど新規ワイナリーの設立が急増しているところはほかにはありません。
明治時代にブドウ栽培が始まってから150年近くの時を経て、現在に至るまで、幾度もの局面を打開してきた長野ワイン。
先人たちの苦労と努力があったからこそ、
『GI長野』として世界に打って出るだけの実力を産地として得ることができたのです。
県が掲げた『信州ワインバレー構想』が動き出してから今年で10年。
官民それぞれが礎を築き、実現に向け走り続けた成果がここにきて、
はっきりと目に目てわかるようになってきました。
いま、長野ワインは次なるフェーズへと歩み出そうとしています。
今回はワイナートに掲載されている、長野県のワイン『テール・ド・シエル』についてピックアップします。
人が造りたいワインを造るのではなく
ブドウがなりたいワインを造る
他県から移住し感じた長野のテロワール
ワイナリー前の斜面に広がる畑に立つと、風の強さを肌で感じます。
「ここは紫外線と風が強く、寒暖差が激しく、雨が少ない。ヨーロッパ系品種栽培に向いているなと実感しています」
以前は栃木県のココファーム&ワイナリーで、
栽培や醸造の研鑽を積んでいた専務取締役・栽培醸造責任者の桒原一斗さん。
転機となったのは2020年。
この年、小諸市糠地地区のテール・ド・シエルで、栽培醸造責任者として新たなスタートを切りました。
「社長でもある義父が糠地地区に初めてワイン用のブドウを植えたのが15年。そのときは、足利を離れることなど考えてもいませんでした。でも、義父が手塩にかけている畑のブドウに病気が広がっているのをみて、なんとかしたかった。野生酵母で醸造させてもらえるなら自分がやります、と言ったんです」
植樹当時は日本で最高標高地だった畑には早熟品種が植えられていましたが、
桒原さんは新たにリースリング、シュナン・ブラン、シラー、カベルネ・フランなど晩熟品種を植樹。
「北海道に比べ、ここは生育期間が長い。10月中旬以降は天候が安定し雨が降らないので、晩熟品種もしっかり熟し、幅広い品種が栽培できる。これが長野のおもしろさかなとおもっています」
収穫時期は以前より2、3週間遅くなったそうです。
「畝の方角もいろいろで、風の通り方や太陽の当たり方も違い、ブドウの成熟が均一ではないんです。でもかえってそれが複雑味となってくる。毎日畑に入って糖度を測るものの、最終的には肌で感じたタイミングで収穫しています」
近くの川の影響で霧が発生するこの地区では、ブドウに貴腐菌が付きやすい。
シャルドネなど白ブドウは貴腐菌の発生を待って収穫し、テロノワールの個性を引き出しています。
本誌では、長野にある71ものワイナリーを紹介したり、長野ワインの現況についても紹介されています。
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