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他国のパン先進国の製法も積極的に学びつつ、
型にとらわれず「日本ならではの美味しさ」を追求したパンが街角を席巻中です。
小麦が変わり、発酵のアプローチが進化し、新世代のスゴいパン職人も次々登場。
dancyuでは、今食べておきたい10軒のパンを紹介しています。
今回はその中から2軒を紹介します。
小麦って、こんなに旨かったのか

ブーランジェリー エス・イガラシ/東京・木場
口に運ぶと、ミルクのように甘い。
それでいて重厚感はなく、カリッ、もちっとした歯ざわりで気づけばペロリと食べ切ってしまう軽やかな生地。
北海道産キタノカオリを100%使用した高加水パン“北の香り”はなぜこんなにもふくよかなんだ!
「多くの素材を一つ一つ吟味し、自分が納得する材料を吟味したい」
福岡の人気店を畳み、木場に店を開いた『ブーランジェリー エス・イガラシ』五十嵐聡太さんの原動力は、
素材へのあくなき探究心。
冒頭の高加水パン“北の香り”は、聞けば成形後に一晩じっくり低温熟成させることで、
小麦の味わいをグッと引き出しているのだといいます。
対して、福岡県産全粒粉ミナミノカオリが主役の“南の香り”は、爽やかな香りとは裏腹に、
味噌のような滲み出る旨味をじんわり噛み締める食卓パン。
あえてキタノカオリを数割ブレンドすることで、酸味だけに寄りすぎない安定した味わいに着地させるそうです。
大人から子どもまで、ハード系が苦手な人も好きな人もおいしく食べられる、絶妙な着地点です。
砂糖は粉の味となじむからわざわざ徳島の和三盆を取り寄せ、「夏はさっぱり、冬はこっくりした生地に」と
季節ごとにバターの産地や生産者を替えるといいます。
骨太なハード系はもちろん、旬の食材を練り込んだ料理の如き惣菜パン、
発酵バターでザクザクに焼き上げる甘いパンまで、訪れるたび“ああもう全部食べたい!”がおしよせてとまらない。
まさに、全方位系の技巧派職人です。
もちっ、じゅわり。
とろける丸パン

siro/東京・三鷹
皮はこんがりパリッとしていながらも薄く、中身はしっとり、ふかふか、もっちもち。
口に運べば歯切れよく、じゅわりとほどけます。
“siro麹”と店の名を冠したこのパン、花に抜ける麹の香りも甘く、ふくよかです。
『siro』のオーナーシェフ、後藤一哉さんは、南青山の『デュヌ・ラルテ』でシェフを務めた確かな腕の持ち主。
昨春、長く暮らす三鷹に自分の店を開き、このパンを看板に据えました。
「僕はパン屋なのに米が好きで(笑)。毎日食べても飽きなくて、そのままでもおかずと合わせてもおいしい“塩むすび”みたいなパンをつくりたかったんです。それで、米麹の旨味や香りを活かせる塩麹のパンを考えました」
サラッと説明してくれましたが、実は塩麹はパン生地にとってやっかいな存在です。
麹はつながったグルテンを溶かして切ってしまうからです。
そこで後藤さんは、ある程度まで生地をこねてから、なめらかに攪拌した塩麹と水分を数回に分けて加えることに。
切れたグルテンを何度もつなぎ直すようにして生地を仕上げていくイメージだといいます。
110%という高い加水率で、12時間かけてゆっくり冷蔵発酵させた生地は、
流れてしまいそうに柔らかい。
ひとつまみの塩をふって包むように成形しますが、味にメリハリをつけるこのひと手間もまさに、塩むすび。
コンベクションオーブンで最初は蒸すように火を入れ、生地が立ち上がったら温度を上げます。
オーブンから漏れる蒸気も、ご飯を炊いているようです。
開店は朝9時半。
ショーケースに並ぶパンは、洗練された端正なビジュアルなのに“チーズ丸”や“あん子”など、
親しみやすいネーミングも多くてホッと和みます。
保育園に子どもを送り届けてきた女性、散歩中の老夫婦、仕事を抜けてきた若い男性。
ひっきりなしに訪れるお客さんの多くは地元の人々。
暮らしに寄り添うこの店は、新世代の“まちのパン屋さん”なのです。
本誌では、他にも日本の新しい魅力的なパン屋さんがたくさん紹介されています。
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