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今号のdancyuは、ニッポンの旨いものを大特集!
極上の赤ウニ、5通りの食べ方の牡蠣、どうまん蟹、沼津の肉ワンダーランド…
とにかくおいしいものばかり!
今回はその中から、兵庫県淡路島の極上の赤ウニを紹介します。
贅沢の極み
ウニ尽くしの理想郷
由良の赤ウニのさらなる衝撃を体感するなら洲本市の隣町、南あわじ市にある『松葉寿司』へ。
1932(昭和7)年創業の老舗和食店です。
「淡路島にわざわざ来られる方には、一度の食事で島の恵を存分に味わっていただきたくて」
と言って微笑むのは女将の平野まさ枝さん。
「あれは16年前。主人が市場で買ってきた赤ウニがとても美味しくてね」と、
賄いにつくったウニ丼をブログに載せたところ、マスコミが飛びつき話題になり、グランドメニューに昇格。
由良が誇る赤ウニの存在を世に知らしめた、先駆け的存在です。
今もなお、仕入れ先は変えず、当時から漁師の川北勝彦さん率いる『川勝のうに』一択。
「川勝さんの赤ウニは肉厚で、見るからに質が高いです。親指サイズの大きな粒がびっしり、なんてことも」
『川勝のうに』といえば、豊洲や大阪、京都などの市場に出回る一級品。
“赤ウニ丼”にはその板一枚がつき、セルフで盛ります。
産地だからこそ叶う贅沢です。
「ヘラでゆっくりとすくい、一粒一粒を広げるようにご飯の上に並べてください」と、
もれなく女将さんの指南も付きます。
無心になり頬張れば、なめらかな食感と深く上品な甘味が広がります。
そこに一切の苦味や雑味はありません。
次は、淡路島産の藻塩をパラリをかけると、グッとコクが増し力強い表情に。
地元“センザン醤油”を少々垂らすなど味の変化も楽しく、幸せのため息の連続です。
さらに強烈なのが“赤うにしゃぶコース”。
一番だしとウニからなるコク深いスープに、赤ウニをくぐらせるインパクト!
れんげの上でほんのりと温まったそれは、ふくよかな香りと旨味の余韻を残し、
舌の上でやさしく溶けていきます。
黄金色のスープに活け鱧など旬魚を加えれば、スープはますます深みを帯び、うまいもの
締めには“赤ウニ雑炊”という至福が待ち構えます。
「今年は赤ウニは特に稀少です」と女将さん。
例年だと日に100~150枚は仕入れるそうですが、
「今年は不漁で、50枚に満たない日も。儲けは度外視で、精一杯頑張りますよ」
という心意気がうれしい。
食べた人は誰もが驚く美味なる由良の赤ウニ。
幻と言われますが、淡路島へ行けば味わえるのがうれしいところ。
大阪から車で1時間半、神戸からだと1時間とアクセスも良好。
赤ウニに命を懸ける人々を身近に感じ、心ゆくまで堪能できるのが、何よりの贅沢です。
本誌では、ほかにもニッポンのうまいものがたっぷり特集されています。
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