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米『Forbes』が2011年より開催し、世界的に注力している企画『30 UNDER 30』。
『Forbes JAPAN』でも2018年より開催し、6年間で総270人を選出してきました。
今回紹介する日本発・世界を変える30歳未満の人物は、
日本の食文化を世界に発信する『NARISAWA』2代目 成澤レオさん。
昨年20周年を迎えた美食の祭典『サンセバスチャン・ガストロノミカ』。
居並ぶ世界の重鎮シェフたちの前で、彼は英語で堂々としたプレゼンテーションを行なっていました。
毎日をきちんと積み重ねた先にしか未来はない

ゲストの半数以上を外国人が占める東京のファインダイニング『NARISAWA』。
名実ともに日本を代表するシェフ成澤由浩さんを父にもつ成澤レオさんは、
幼いころから世界の名店を訪れてきました。
スシやテンプラのみならず『イザカヤ』スタイルも各地に広がり、『ウマミ』はもはや世界共通語。
とはいえ、「あのステージで彼の若さとプレゼンは際立っていた」と、
スペインのミシュラン2つ星店のシェフは振り返ります。
成澤さんは中学卒業後に渡米。
日本とは異なり「表現しなければ評価はゼロ」の世界で、思考の深め方や伝え方に磨きをかけました。
現地で大学に進学しましたが、コロナ禍で帰国。
時短営業になった店を手伝いながら、父と共に、各地の医療従事者へおにぎりを届ける活動に参加します。
「トップシェフは発信力があるからこそ、社会に貢献するのが当然」という考えが、
自然と植え付けられました。
『イノベーティブ里山キュイジーヌ』を提唱するNARISAWAが伝えるのは、
自然と共生する里山の知恵。
それを表現するためには、生産者との信頼関係が欠かせません。
成澤は50軒以上の日本各地の生産者を訪問し、食材にかけられている手間と愛情を身を持って実感してきました。
彼のもうひとつの強みは、抜群の味覚です。
店で使う食材は基本的にすべてオーガニック、化学調味料は一切使いません。
それは家庭でも徹底されていました。
またその味覚は、月に1度、店をクローズして、
提供しうるすべての料理とワイン・日本酒・茶などの組み合わせを考案するテイスティングで鍛えられています。
今はサービスから2代目シェフになるべく料理を学んでいるといいます。
イノベーティブを謳う店で世代を超えて続く店は、世界的に見ても多くありません。
幼い頃から世界の美食に触れてきたアドバンテージは、海外に憧れすぎることなく、
また、日本という軸をぶらさず、事業を受け継いでいくバランス感覚にもつながっていくでしょう。
「毎日をきちんと積み重ねた先にしか未来はない。結果として、何十年も先にNARISAWAがお客様に愛されるものとして残っていったらうれしいですね」
本誌では、成澤さん以外にも『30 UNDER 30』に選ばれた方が紹介されています。
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