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発売から72周年を迎えた、永谷園のロングセラー商品『お茶づけ海苔』。
食材や食べ方をはじめあらゆる意味で食の多様化が進む中、世代を超えて愛され続けている商品です。
ほかにも数々のロングセラー商品を生み出している永谷園の根本には、
「創業者から脈々と受け継がれる、食への思いと理念がある」と語るのは、同社常務取締役の西嶋泰史氏です。
週刊東洋経済では、その中身とお茶づけの新しい挑戦について西嶋泰史氏にインタビューしています。
煎茶を生んだ永谷宗円の思いを受け継ぐお茶づけ海苔

お茶づけの歴史は古く、平安時代までさかのぼることができます。
『今昔物語』に「冬は湯漬け、夏は水漬け(水飯)」を食べるという記述が残されているのだ。
湯漬けや水漬けは当時、保存食や携行食として用いられた干飯をおいしく食べる手段でもありました。
手早く食べられる湯漬けは、戦国時代にも好まれたといわれています。
江戸時代にはお茶漬けと一緒に簡単な料理を出す「茶漬屋」が江戸に登場し、発展を遂げました。
そんな江戸の食文化が現代にも浸透している理由の一つに、
永谷園の「お茶づけ海苔」を挙げることができるでしょう。
発売されたのは、戦後の混乱がようやく落ち着いた1952年のこと。
誕生のきっかけは永谷園を創業した故・永谷嘉男氏の
「料理屋の締めで食べるお茶づけを、家でも簡単に食べられたらいいのに」という思いでした。
塩・砂糖・抹茶・昆布粉・刻み海苔・調味料、さらに京都のぶぶ漬けや、かきもち茶漬けなどをヒントに、
香ばしいあられを加えて完成。
その味とパッケージが広く浸透しているのは、今や日本中が知るところです。
常務取締役の西嶋泰史氏はこう語ります。
「お茶づけ海苔は、ご飯を手軽に、かつ情緒のある逸品料理として食べられるようにしたもの。合理的ながら生活に彩りを求める、江戸の町人文化を感じさせる商品です。商品パッケージは、黄・赤・黒・緑のしま模様。これは歌舞伎の定式幕をアレンジしたもので、72年前からほど変わっていません。今見てもモダンで、おしゃれさのあるデザインだと感じます。
創業者の永谷嘉男氏は、おいしいものを作って人を喜ばせるのが好きだったそうです。そんな永谷のルーツをさかのぼると、1738年に京都で煎茶の製法を開発した永谷宗円(宗七郎)にたどり着きます。宗円は、抹茶が庶民には高嶺の花だった江戸時代中期、15年かけて独自に開発した煎茶の製法を人々に惜しみなく伝えた人物。市井の人々においしいものを広めたい、生活者に喜んでほしいという宗円の思いは、約300年の時を超えて永谷園に受け継がれています」
本誌では、30年続くブランドが9つもあるロングセラーメーカーの永谷園の秘訣も語っています。
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