北野武が『文化起業家』たちに贈るメッセージ「伝統の本質はそこじゃない!」

  • 更新日
  • 有効期限 2023.12.26

この記事が掲載されている雑誌は、こちらからお読みいただけます。
記事の有効期限以降は本誌は非公開となります。ご了承ください。

 

伝統を潰せば、先に進めるわけではない。

その本質をどう見抜き、いかに活用するか。

 

Forbes JAPANでは『世界のキタノ』カルチャープレナー(文化起業家)たちに贈るメッセージを送っています。

 

伝統の本質はそこじゃない!

 

「伝統」「しきたり」って、勘違いされて、自分たちに縛りをかけてしまっていることがある。

 

例えば、映画やお笑いはそう。

新作映画『首』を 構想した時、織田信長について調べてみると、
「本能寺の変」で殺された理由は80の説があるんだ。

どれが真説かわからない。

殺される理由がそんなにあるくらい、やってることがめちゃくちゃ。

頭がおかしいとしか思えないんだよ。

 

これまで戦国武将を英雄として描くのが定番になっているけど、
オイラに言わせたら、桶狭間の戦いに勝ったのは、急な悪天候が有利に働いただけで、運がいいだけ。

楽市楽座もその前からあったし、調子に乗っているワルなんだよ。

そもそも、戦国武将は地元の不良やワルみたいなもので、
気に食わなければ、人を殺すし、農閑期になると百姓連れて戦をするし。

百姓から見たら英雄でも何でもない。

だから、そういう視点で『首』を作って、常識とされてきたものをぶっ壊したんだ。

 

漫才も同じ。

ツービートで、俺らは漫才をぶち壊したんだけど、先輩たちから怒られたね。

ニッカポッカを履いたり、セーターを着たりして舞台に上がるから
「舞台ではタキシードを着ろ」とか「客に尻を見せるツービートの立ち位置がおかしい」なんて言われて。

でも、衣装や立ち位置なんて、後付けの伝統だよ。

本質はお客を笑わせること。

それなのに、わかりやすい見た目で、勝手に「伝統」を作ってしまう。

伝統の上にあぐらをかいて威張っていたら、お客はそのうち離れていっちゃう。

 

逆に、本当の伝統の良さって何なのか。

そこをわかる必要がある。

 

例えば、なんで俳句や短歌の七五調はこんなにリズムが心地良いのか。

綾小路きみまろと川柳をやったとき、オイラは「5・7・5って素数じゃないか」と思ったんだ。

5も7も素数。

短歌もそう。

5 +7 +5 = 17、5 +7+5 +7 +7 = 31、どっちも素数なんだ。

 

「古池や」に続く、「蛙飛び込む 水の音」の7・5は割り算では割れない。

「古池や」以外の言葉じゃありえない。

で、奇数を足していくと二乗になる。

1+3 = 4 (2の二乗)、1+3 +5 = 9 (3の二乗)、1+3 +5 +7 = 16 (4の二乗)。

 

これを映画に置き換えてみると、シーンを1秒撮って、
次のシーンが3秒、5秒と足していくと、奇数だけ出して二乗になる。

映像が倍返しみたいになったみたいで心地よい『間』が生まれるんだ。

 

漫才もそうでさ、奇数と偶数の掛け合いになると間が悪くなっちゃう。

尺の違いに着目して、居合いみたいに場合を詰めて言ったら、
単なる笑いじゃなくて、二乗の笑いが爆発するかもわからない。

今まで誰も作ったことがない(事情のリズム)が映画に生まれるかもわからない。

革新の発想だよね。

 

数学で分解してみると、俳句が持つ時代を超えた素晴らしさに気づかされる。

長く続く本質的な良さが、伝統の中にあると言うことを気づくには、
今までそれに参加できなかった人たちが参加することだと思うね。

伝統の上にあぐらをかいている人たちは「自分たちを守る」ために槍として伝統言い訳にしているだけ。

 

大事なのは、『誰もが気づかなかったことに、新しい感覚が導入されること』だよ。

「伝統には新しい血が必要」と言うけど、そこに入れなかった一般人の方が、
第三者的に見ているから、よく見えているんだ。

(文化で稼ぐカルチャープランナーを目指す人たちに)
今、伝統工芸が受けているっていうのは、違う世界の人たちが入ってきているからだよ。

 


 

本誌では、北野武さんのインタビューの続きをお読みいただけます。

 

I LOVE MAGAZINES!キャンペーン2023

 

 

対象の雑誌が月額払い・年間購読が最大50%割引されたり、
定期購読で1,000円割引が適用されるギフト券コードを掲載中!

割引やプレゼント付きなど、700誌以上の雑誌が全てお得に購読できる大チャンスです♪

毎回ご自宅へお届けしますので外出の必要はございません。

上のキャンペーン画像をタップして詳細をご覧ください!

この記事が掲載されている雑誌は、こちらからお読みいただけます。
記事の有効期限以降は本誌は非公開となります。ご了承ください。