『光る君へ』脚本家・大石静「普通の朝ドラのヒロインみたいに変化しないんです、紫式部ですから」

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藤原宣孝(佐々木蔵之介さん)と年の差婚をしたヒロイン・まひろ(吉高由里子さん)が
諦めたはずの藤原道長(柄本祐)と密通し、出産。

大水、地震など厄災や内裏の混乱、親族間の愛憎劇など、目が話せない場面が続く大河ドラマ『光る君へ』。

母となったまひろがいかにして『紫式部』として名を残すことになるのか、
彼女の内裏に送り込む道長の思惑など、後半の展開について、
サンデー毎日では脚本家・大石静さんにインタビューしています。

 

1000年前も今も人間の本質は変わらないのです

 

 

『源氏物語』は三つの密通の物語

 

生涯についてわからないことが多い紫式部ですが、まさか結婚後に道長と再会し、密通することになるとは。
驚きでした。

 

大石静:『源氏物語』は三つの密通の物語という見方があります。

一つ目の密通は、光源氏が義理の母である藤壺と関係を持ったこと。その後、光源氏は紫の上を妻にしますが、彼女は身分が高くないから、天皇の娘の女三宮も妻にする。その女三宮が柏木と密通するんですよね。これが、二つ目。

そして、光源氏が死んだ後も、息子たちが密通の世界にいる。

この三つの密通が物語の大きなテーマです。だったら、やっぱり作者も密通したほうがいいのではないかな、と思ったんです。

 

光源氏と藤壺の間には息子が生まれ、後に冷泉帝となります。
また女三宮は柏木の子、薫を生む。これは、まひろの娘の話に結びつきます。

 

大石静:DNA鑑定もない時代ですから、こういうことは結構あったのではないでしょうか。あれだけ密通にこだわっているのは、やはり何かあると感じます。

さらに『源氏物語』で考えれば、十代で密通した光源氏は、後に妻に密通されて自分が逆襲される。罪と罰みたいに、自分のしたことがブーメランみたいに返って来るのも人生だなと。

そういう構成がなされているから、『源氏物語』は1000年たっても評価される。1000年の命がある物語になったと思います。

 

当初、大石さんはこのドラマを『セックス&バイオレンス』だと語って話題になりました。
男女間、政争、意外性と驚きのあるドラマになっています。

 

大石静:セックス&バイオレンスと言ったのは、平安時代をやりますって記者発表したら、みんな「は?」という感じだったので、「何か言わねば」と思って口にしたら、急に注目されて、この言葉が一人歩きした感じです(笑)。

でも、驚きもなく、反発もなく、共感だけだと、ドラマは飽きると思います。

「え!?そんなことが起きるの?」とか、「そんなこと考えているの?」とか、あり得ないと思うようなことが起きるのが人生だとも思うし、ドラマはそういう人生を描くものなので。

 

時には倫理とか道徳とか、私たちがこうじゃないかと思っている壁をバーンと破られます。

 

大石静:常識とか、普通の倫理観の向こう側にあるのが真実でしょう。それを描かずしてなんのための表現者かと思います。このドラマは、舞台が1000年前なので、男女の関係も価値観も今とはまったく違う。“名刺交換”のような感じで情事がなされていたとも言われますから。壁は破りやすいというのはあります。

 

まひろという人物は、母となってどう変化するのでしょうか。

 

大石静:まひろは、子どもを産んでも変化しないところがすごいと思います。普通、女の人は子どものためにいろいろ諦めるんですよね。だけど、まひろは己のやりたいことばっかり見つめ続ける。母が自分のことばっかり考えているから、結果、娘の賢子は懐かない。「母上は私が嫌いなのね」みたいなことを言う難しい子になっちゃうんです。それはまひろが変化したんじゃなくて、変化しないから。普通の朝ドラのヒロインみたいに母になって変わったりしないんです。紫式部ですから。

 


 

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