セーラームーン作者・武内直子が語る今「この星は女性にとって生きるのが辛すぎる」

  • 更新日
  • 有効期限 2025.01.03

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2023-12-01 発売号 (2024年1月号 No.293)

 

VOGUE JAPANでは、2023年にファッションシーンでも強い存在感を示し、国内外で世代を超えた人々をエンパワメントする8組33名にフォーカス。

新たな物語を紡ぎ、軽やかに時代を駆け抜ける表現者たちの今とは。

 

今回は数々のインタビューの中から、『美少女戦士セーラームーン』の作者である漫画家・武内直子さんのインタビューをピックアップします。

 

祈りが悪を消していく
これが理想かと思っています

 

30周年プロジェクトが進行中の『美少女戦士セーラームーン』。

1991年に漫画連載が始まり、すぐにテレビアニメ化され大ヒット。

世界中なカルチャーアイコンたちからの支持も厚く、2023年はファッションブランドとのコラボレーションを続きました。

作品は人々をエンパワーメントし続ける存在として国や世代を超え、注目され続けています。

 

作者の武内直子さんは、「母が私に図鑑や文学全集、映画やディズニーアニメを勧め、年上のいとこたちが70年代の少女漫画を山ほど勧めてくれ、その元気で強くて生き生きした女性キャラクターに釘付けになった」少女時代を過ごします。

 

世界を魅了する側に回って久しい武内さんに、『セーラームーン』を描き続けるなかで、意図的に変えてきたこと、大切にしてきたことを聞きました。

 

「私はキャラクターが自由に大胆に考え、動くことが理想だと思っていますが、年齢や考えや衣装や呪文は少しずつ変化させてきました。小さな変化、新しさのほうが、ファンにはうれしさがあるようです。変えないと決めていたことはおだんご頭や、セーラー服のアイデンティティ、昔からの仲間の友情とか。

大切にしたことは、そのときの自分の好きなものを詰め込むこと。好きな表情、好きな台詞、ファッション、場所や音楽、好きな画材と好きな色で描くこと。自由に好きなように描かせていただきました」

 

かつて楽しんだ映画や漫画に登場する女性は「生き生きしてとにかくよく動いていた。止まっていてはダメだと学んだ」と振り返る武内さんは、『セーラームーン』を描くようになり、「女性の強さってどんなもの?」と改めて悩んだといいます。

 

「個体差があり、人それぞれで答えは出ない」と前置きしつつ、最近、娘のレポート課題のために読んだという福沢諭吉の『女大学評論』に対する感想をこう語ります。

 

「世界と同様に日本も200年前から変わらず女性の地位が低く自由がない。毎日ニュースを見て思うのは、この星は女性にとって生きるのが辛すぎる。この星の社会のありようが厳しくて女性が強くならざるを得ない仕組みだと思う。いつか複雑で余計なものが多すぎる社会を有理化したら、強さ=母性=優しさ、というシンプルな式でシンプルな解答が得られるのでは」

 

そんな武内さんの願いが込められた作品世界で、セーラー戦士たちは「連帯」し、その強さを発揮します。

 

「女性が男性や異星人と対等に体を張って戦えるわけはなく、もちろん戦ってほしくないと思っている。女性は何か魔力というか魔法の力を内部にもっていると信じていて。力の発現には呪文やアイテムも必要。そして強く祈る。祈りが悪を消していく、これが理想かと思っています。強く祈り続けたい。最近特に思います」

 


 

本誌では、他にも今田美桜さん、imaseさんなどがインタビューされています。

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