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現在、全国にはクラフトビールを製造するブリュワリーがおよそ500あるといわれています。
クラフトビールが市民権を得て久しいですが、そのレベルは地ビール時代とは雲泥の差、
美味しくないビールを見つけるほうが難しい時代になりました。
今回食楽では『美味しいビール』から一歩先に進んだ『愛されるビール』となるに不可欠な要素を調べ、特集しています。
その中から岡山県の自然体で心地よく作られるビールをピックアップします。
岡山・備前の静かな山間の美しい森で集める酵母
「そろそろいいのが入りましたかねぇ」と桜の新緑が美しい公園で、小さなポット内の麦汁に目をやる、
オーナー醸造長、妹尾悠平さん。
“いいの”とは、空気中に無数に浮遊する、野生酵母。
『Koti Brewery』の命である野生酵母は、醸造所の目の前の公園で麦汁片手に公園を10分ほど歩けば、
自然にポットに入るといいます。
岡山県・備前市北部の深い山間で、2018年にスタート。
看板もないこのブリュワリーこそ、日本でまだ指折りの数しかない、野生酵母だけでビールを造り出すブリュワリーです。
通常のビールは、人工培養酵母発酵が常識。
人工培養酵母は強い苦味を生むもの、フルーティなものなど、さまざまなタイプがあり、
醸造家は味をデザインする感覚で、酵母を選ぶのが一般的です。
ところが妹尾さんは、
「人工培養酵母の歴史は100年ほど。ビールの歴史は古代メソポタミア以来6000年。野生酵母はビール造りのルーツなのです」
と笑います。
醸造するビールは基本ホワイト・エール一種のみ。
グラスに注ぐと、まず苦味と麦のコクが絶妙に一体化した、香りの活力と勢いに目が覚めます。
口に運ぶと、舌触りは心地良い厚みがありつつもシルキー。
ミネラル感、ローストナッツ、樹皮、焼きたてライ麦パンなど、
美しく折り重なり綾をなす味の多様性、多元性に心が華やぎます。
まるで緑の山間に響くこだまのように、長く美しい後味も、一口ごとに五感をリフレッシュします。
ゆっくりと長期発酵
スロービールゆえの旨さ
そんな深々とした美味しさが生まれる理由をこう話します。
「通常1週間で発酵が終了する人工培養酵母ビールと異なり、野生酵母発酵ではおよそ4週間、冬には長い時で8週間ほど発酵がかかります。その後さらに瓶内二次発酵と熟成のロットによっては1年以上もかけるので、本当にさまざまな表情と旨味がビールに表れてくるんです」
通常は発酵開始から2ヶ月ほどで出荷するビールですが、製造開始から早くて半年、飲み頃になったと判断できるまで、たっぷり2年かかったロットもありました。
妹尾さんの現代の効率重視社会への敢然たる背の向けっぷりも、あっぱれです。
本誌では他にもさまざまな『愛されるビール』ができるまでを紹介されています。
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