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一杯のコーヒーが持つ可能性を探る旅へ。
丁寧に淹れられた一杯を通じて、香りや味わいだけでなく、その場の空気や時間の流れにまで心が満たされます。
今号のあまから手帖では、新しいコーヒーの愛され方を紹介しています。
完全予約制、私設図書館「鈍考」の中に佇む「喫茶 芳」
目の前で起こっている仕草を凝視。
ネルドリップに点滴抽出。
手廻し焙煎機で深煎りされたタンザニア雲南をブレンドした豆が心地よさそうに膨らみを見せます。
湯の温度は約85°C。豆はだいたい25gから30gの間。抽出量は110ml。
視線はネルドリップに向かうが、背後に深く茂った緑と冷たい空気の層を感じます。
この自然と人為の間に自らの身体を置くのは悦楽とも言えます。
主人・ファンさんの「お召し上がりください」という柔らかな声。
口当たりの優しいカップから茶褐色の液体を含みます。
おそらく温度は70°C台になっているでしょう。
苦みを感じるも、その奥から微かな甘みがゆっくりとやってきます。
これぞ深煎りの醍醐味だと感じます。ファンさんは「静かに堂々と泰然な感覚」と表現しました。
派手さはないが、さまざまな想像をかき立てる味わいです。
ここ「喫茶 芳」は完全予約制の私設図書館「鈍考」内にあります。
つまり本を読むことを目的とした人たちが訪れます。
そのバイプレーヤーがコーヒーとなります。
しかし与えられた90分のうち、コーヒーは時として主役にもなり、また読書の傍らで思考を支える存在として確かな役割を果たしています。
ここを後にした時、少し誤差に対して敏感になったのではないかと思います。
貴重な空間と時間です。
スーパーの一角で月曜日だけの、コーヒーコース
本誌ではさらに、コーヒーをカクテルで楽しめる空間を紹介しています。
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