
BRUTUS(ブルータス)
【今の日本に必要なこと】”やさしさ”ってなに?
誰かと話す、誰かに触れる… リアルなコミュニケーションが失われ、効率重視の世の中において 個人の思いや余白が小さくなっていく中、 “やさしさ”は少し置いてけぼりになっているように見えます。 私たちは本能的に、そして経験的に”やさしさ”という目に見えないものが 人や社会を豊かにしてきたことを知っています。 時代が変わりつつある今、少し立ち止まってこの言葉とその可能性について考えてみましょう。やさしさ、って?
そもそも、やさしさとは何なのでしょうか。
相手を思いやること?助けてあげること?それは私たちに必要なこと?
個人と個人のつながりから、人と社会の関係性、 変わりゆく現代のやさしさまで、3人の識者に聞いてみます。 Q.そもそも”やさしさ”とは?
◆太田啓子さん(弁護士)
「不正義に対して怒るのがやさしさ」
不正義とは、人間の尊厳が損なわれている状態にもかかわらず、社会がそれを放置していること。 例えば経済的な貧しさはその一つです。 「自分が就職に失敗したから」「自分が勉強をしなかったから」と 今の社会では自己責任として片付けられがちですが、その人が選びようがなかった環境や社会構造など 色々な要因が働いてそういう不正解が生じていることはしばしばあります。 政治での解決を求めてSNSなどで社会に声を上げる行為の根底にあるのは、 不正義への怒りであり、やさしさでもあるのではないでしょうか。Q.今、社会は私たちにやさしい?

◆藤原辰史さん(歴史学者)
「やさしさが、あまりにも発揮されにくい社会です」
心を解除できる場が減り続けています。でも、その場さえあればやさしさは発揮される。 京都のこども食堂でこんな話を聞きました。 食事中の女の子に、お父さんが食べ方や姿勢を事細かに注意して空気が緊迫した。 そんなときに隣に座っているおばあちゃんがぼそっと「難しいよなぁ」と。 お父さんには「しつけは難しいよね」、女の子には「わからないよね」と共感しているように聞こえます。 場の空気も和んだそうです。 言った人すらやさしさと思ってないかもしれないけれど、救われた人がいる。 能動的ではない偶発的なやさしさがあるんです。Q.今の子どもたちがやさしく育つためには?
◆熊代 亨さん(精神科医)
「子どもは勝手にやさしくなる」
「人に迷惑をかけてはいけない」と小学生の頃から刷り込まれてるからこそ、 今の日本はクールなやさしさに満ちています。 子どもたちは当たり前のようにその振る舞いを身につけます。 一方で、私の専門の精神科ではうまく人間関係が作れず 発達障害と診断される子どもが増えています。 それはクールなやさしさ特有の「波立てない」立ち振る舞いに馴染めないのが要因の一つ。 クールなやさしさの”押し付け”は、子どもを苦しませることさえあるんです。やさしさ、という数字ではっきりと表せず、人によって全然ちがうその気持ちや行動。 良かれと思ってやったことも、受けた人にとっては悲しかったり、虚しくなることもあり、 本当に難しいことです。 ですが、“人を思いやる”ということは誰だって嬉しいことで、その形が違っていたというだけ。 そこもしっかりと話し合っていれば、人と人が嬉しくなるやさしさに辿り着けるのではないでしょうか。 本誌では、3名の識者によるやさしさについてさらに詳しく掲載されています。 こちらからお読みいただけます。
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