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あの人はどんな本を読んできたのだろう?
年末年始の人気企画・BRUTUSの本特集。
今回はさまざまなフィールドで活躍するみなさんの本棚を訪ね、
本との出会いや、本がもたらしてくれた経験、感銘を受けた書斎など、
『本棚と本のはなし』を根掘り葉掘り伺っています。
読書とは、学びであり、娯楽であり、冒険の入り口でもある。
本から手に入れた知識が血となり肉となり、読み手を形作っていくと言っても過言ではありません。
本棚にも多様な個性があり、まるでその方自信が表れているようです。
今回は特集の中から、美術家・横尾忠則さんの本棚を紹介します。
本はイメージ
物質感を味わう本棚

「画集は開くが、本なんて読まない」
美術家・横尾忠則さんのアトリエ。
2025年の展覧会用の大きな絵画、床には絵の具が散らばり、積み上げられた本の山。
背後は壁一面本で埋め尽くされています。
しかし横尾さんは開口一番「画集は開くが、本なんて読まない」と言います。
本が苦手な人必読の読書論。

実家には一冊も本がなく、両親から読書を勧められたこともない。
小学校に上がる前から絵を描くのが好きで、絵本の模写に熱中、読書には無関心な少年時代を送ったそう。
「10代の頃ぼくの中で絵と読書は水と油みたいなもので相対関係にありました。 絵は感覚的で肉体的で遊びと考え、読書は観念的で精神的で学問だと思っていた」
(自著『言葉を離れる』より)
本格的に本を読みだしたのは、グラフィックデザイナーとしての絶頂期から突然画家宣言をした45歳の時。
「 絵を描き始めたのも独学でしょ。グラフィックと美術は全然違うんですよね。だから美術を勉強するために、美術関係の本を読み始めたんです。でもほとんどが画集。自分が絵を見て、自分の考えで批判することに興味があって、美術評論家が書いた文章にはそんなに興味なかったの。
だから、絵を描くことと読むことがほとんど同時になったのかな。それ以前はね、はっきり言って本は必要なかった。むしろ邪魔になっちゃってね。肉体で体験する、その経験の方が重要でしょ。だから大勢の人に会って話を聞いたり、その人の生活を見たり、人物に直接触れて、自分が感じることをビジュアルに作品にしていけばいいわけだから。
一般的に知識と教養は必要だなんていわれてるけど、本に書いてあることって他人が経験した言葉でしょ。独自の考え方、生き方をしたいんだったら、やっぱり自分の体を通して体験して、自分で感じることが大事だと思う」
5歳より前から模写を始め、対象をよく観察し忠実に模倣することで、作者の魂に触れる。
作者と一心同体となって作者の魂に触れる模写という行為は、横尾少年にとって読書のようなものだったといいます。
中学生の頃の横尾は、挿絵家に憧れていたそう。
江戸川乱歩と南洋一郎の小説に出会ったのも、挿絵に惹かれたからだと述べています。
読書に憧れていない少年は、意味のわからぬ漢字に苦戦んしながらも物語へと没入しました。
「この二人の小説家によって、ぼくの内なる怪奇と冒険とロマンが未知なる世界への憧憬の扉をこじ開けて空想の王国に魂に羽を付けて飛ばしてくれたのです」
しかし、熱中したのは一時期。
再び読書とは縁のない生活を送ります。
模写への興味も薄れ、油絵を始めました。
その後の人生を左右するといわれる10代を通して、読書ではない肉体的な体験から何かを学んできました。
そして、あらがうことのできない運命的な導きによってグラフィックデザイナーとなりました。
三島由紀夫との出会い
人生に大きな影響を与えた人との出会いも一冊の本からでした。
『霊性』という言葉を教えてくれ、精神世界への扉を開いた三島由紀夫。
「結婚したときは、家に一冊も本がなかったんですが、ある日、妻が会社の図書館から借りてきた『金閣寺』が置いてあった。何日も。これは“読め”ということなのか?とプレッシャーにも感じて、恐る恐る手にとって読み始めたら、漢字は読めないし、書いてあることは難解で意味がわからないし、ものすごくしんどかった。1週間くらいかけて読んだけど、内容はわからなかった。だけど、それがきっかけで三島由紀夫という人物に対して関心を持つようになったんです」
その後、日本デザインセンターへ入社し上京。
当時コピーライターだった詩人・高橋睦郎の仲介で、三島由紀夫と出会い、
彼の著作の挿絵や装丁を手がけ親交を深めることになりました。
本誌では、インタビューの続きをお読みいただけます。
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