【長良川紀行 木造駅舎を訪ねて】夏の日暮れの郡上八幡

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国鉄時代に建てられた木造駅舎が数多く残る長良川鉄道。

古くから栄えた沿線の街の歴史は深い。

そして川沿いに敷かれたこの鉄路が、日本海を目指していた頃の気概を裡に秘めた、美しい駅舎がここにあります。

 

今号の旅と鉄道にて特集されている『長良川紀行 木造駅舎を訪ねて。』をピックアップします。

 

夏の日暮れの郡上八幡

 

 

文:蜂谷あす美

 

※特集本文途中より掲載

 

この日最後に乗車したのは、2024年3月に運行を開始したばかりの『パーシモン美濃里号』。

国鉄時代に走っていたキハ48の首都圏色復刻塗装が鮮やかだ。

 

列車はいよいよ長良川沿いを走り始める。

湯の洞温泉口を過ぎたところで橋梁をわたり、トンネルへ。

さらに母野駅を出たところで川の膨らみ部分を過ぎていく。

かぶりつくように車窓を眺めていた少女たちが「わっ!すごいすごい」と歓声を上げるなか、
木造駅舎の大矢駅に着いた。

見たところ無人駅だけれども、青字に白文字で書かれた「駅長室」の看板が今も残り、
国鉄時代を知らない身にも当時を想起させてくれる。

その後、美列苅安駅、深戸駅と木造駅舎が続く。

近づいては遠ざかる長良川と、次々に姿を見せる木造駅舎の組み合わせから目が離せない。

 

もう何度目かわからない橋梁を渡り、1日目の最終目的地、郡上八幡駅に到着した。

長良川と吉田川の合流地点であり、かつて青山氏が統治した城下町。

夏の間、夜な夜な開催される『郡上おどり』が有名で、
ホームの屋根には『郡上おどり』と大きく書かれた提灯が整列していた。

 

駅舎は、ここまでに見たり訪ねたりしたものとは少し異なり、1929年開業当初の姿に復元するリニューアルを2017年に実施。

漆喰の壁や木枠の窓もさることながら、猫耳のように屋根から飛び出した2つのマンサード窓が目を引く。

 

小腹が空いてきたことから、駅併設のカフェで一番人気の『お団子セット』を頂いた。

ヨモギ団子のホイップ乗せ、きな粉パン、アイスクリームにドリンクまでついてくる欲張りな組み合わせに大喜びした。

 

駅から城下町中心部までは路線バスで10分ほど。

堀割に沿って水路の流れる通りには間口の狭い家々が連なり、家の境には『袖壁』といわれる仕切りが設けられていた。

仰ぎ見る八幡山には郡上八幡城がそびえる。

この景観で特徴的なのは軒下にバケツがぶら下げられていたことだ。

 

「1919年の大火で街全体が焼けてしまったから、その戒めとしてぶら下げている」

 

声の主は大滝秀治によく似た男性。

タバコをふかしながら、街の歴史をていねいに解説してくれた。

そのうちに日は暮れかかり、遠くからヒグラシの鳴き声が聞こえてきた。

 


 

本誌では、木造駅舎を旅する記事が掲載されています。

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