
この記事が掲載されている雑誌は、こちらからお読みいただけます。

今号のOZmagazineでは、『自然・アート・工芸・カフェを巡る、やすらぐ旅』を大特集!
「旅に出たいけれど、どこも混んでいるよね…」、そんな編集部内の会話から始まった今回の特集。
特にここ1年ほどは、各地の訪日観光客の多さに驚くことも少なくありません。
そこで今号では、なるべく旅先でのんびり自分をオフしたい、
そんな方にむけて“のどかな町”や“やすらぐ場所”を日本全国から集めています。
今回は特集の中から、長野県 大町・松本をピックアップします。
北アルプスの豊かな自然の気配を感じる

北アルプスの恵みを味わう長野県・大町。
アルペンルートの玄関口として知られる大町と、旅先としても暮らす町としても人気の松本です。
金曜日、おやすみいただき
自然あふれるカフェと北アルプス国際芸術祭へ
カフェロースタリー 美麻珈琲
文:山村光春
やっぱり来れてよかった。
目はなによりもよくできたカメラだった。
めいっぱい広角にして世界を見渡せば、端のほうまで緑と光であふれ、全部が潤いに満ちていて、
シャッターの代わりに心がパチッと覚醒する。
峰と峰が編まれるように連なる北アルプルのふもと、長野県大町市。
この里山に暮らす誰もがちょっと嬉しそうに、示し合わせたように言うのが「ここは水がきれいだから」。
もとは、北アルプスの山に降る雪や雨。
これが地表を伝って湧いて清流となり、山崩れなどによってせき止められ、3つの湖が生まれた。
そうして今もこれらの「水」を真ん中に、自然と人の営みが巡らされている。
ただ自然からもたらされる恵みは、漫然と広がっていると感じにくいもの。
この地でその気づきの「装置」となるのが、水の恩恵を活かした喫茶や、自然そのものを活かしたアートだ。

「初めて来たときは、別世界のようでした」と言うのは「美麻珈琲」の店主・川又さん。
「中山高原はかつてスキー場でしたが、オーナーがぬくもりのある建物をセルフビルドして。四季折々の広大な景色を見ていると、豊かさや癒しを感じますし、自然と共存しているなと」
春は菜の花、夏の終わりには白い花が、あたり一面に咲く。
「ここの環境と、おいしい湧き水で淹れたコーヒーとケーキで、ゆったりとしたくつろぎの時間を過ごしてほしくて」
2017年よりスタートし、もっか3回目が開催中の「北アルプス国際芸術祭」。
国内外のアーティストたちが参加し、アートを通じて大町の隠れた魅力を見える形にする。
「彼らが現地に来て滞在し、ボランティアスタッフと交流しながら制作することも多いんです」とは、
実行委員会事務局の高橋勇太さん。
「地元の我々では気づかないことも多いので、アーティストの方々の視点はおもしろいですよね」
取材時は、台湾からヨウ・ウェンフーさんが、まさに準備の真っ只中。
山の斜面に佇む「八坂公民館」に吹き抜ける風、そのうねりを編み込む竹によって表現していた。
「コロナ禍でずっとかなわなかったのですが、今回ようやく来ることができました。でも、待つ時間も悪くなかった」
旅の始まりは、まず思いはせることから。
だげど遠くからではわからなかったこと、見えているようで見えなかったものが、訪れたらきっと。
本誌では、長野以外にも栃木県・那須&黒磯、兵庫県・丹波篠山などの心ゆるむ景色も紹介されています。
この記事が掲載されている雑誌は、こちらからお読みいただけます。