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韓国南部最大の都市、釜山。
真夏の強い日差しが照りつけるこの街では、食欲が出ないなんて言っている暇はなし。
人々は、しっかり食べて暑さに打ち勝ちます。
今号のdancyuでは、むせ返るほどの生命力に満ちた港町を歩き、ここにしかない夏の美味を、食べまくります!
釜山は、夏。

文:小池花恵
釜山の夏は暑い。
照りつける日差しがチクチクと肌を刺す。
これが東京やソウルならば暑さを避けて室内でできることを探すところだが、
こんな暑さの中でも街を歩きたくなる理由が、釜山にはある。
チャガルチ、南浦(ナムポ)、西面広安里(ソミョンクァンアンリ)……。
あてもなく街を歩く道すがら、美味しそうな面構えの店に出会う確率が高いからだ。
路地(コルモク)にはお腹を空かせるハングルの文字が並ぶ。
デジクッパ(豚肉のスープのご飯)、ナクチポックム(手長ダコ炒め)、
コムジャンオ(ヌタウナギ)、コプチャン(牛や豚の小腸)。
気になる店に出会ったら、中の様子をこっそりと覗いてみる。
市場へ向かう道の途中の食堂では、前日に焼酎を飲みすぎたのか、
ヘジャンクッと呼ばれる酔い覚ましのもやしのスープを啜るアジョシ(おじさん)が二人。
もやしの甘味が滲み出た汁をスッカラ(匙)で口に運びながら、額の汗を拭う。
駅の向かいにあるミルミョン(冷麺)の店では、
サラリーマンの3人組がピビンミルミョンの麺にはさみを入れて、豪快にかき混ぜている。
まるで混ぜるほどに美味しくなる魔法をかけているかのよう。
韓国には、食事の一食を意味する「ハンキ」という言葉があるが、
釜山の人々はその大切な一食を適当に済ますことがないように見える。
何を食べるのか、誰と食べるのか。
忙しくて食事をとれていない仲間はいないか。
近くにいる人の胃袋まで常に気にして、時には面倒を見てくれる。

ある朝。
チャガルチ市場の「タミャン食堂」で遅い朝ごはんを食べ、お腹一杯で市場を散歩していると、
太刀魚を売っているお母さんがアイスクリームを食べていた。
すると、エプロンのポッケからひょいっともう一つアイスを出して、隣の店のお母さんに手渡した。
気づくと向かいの店も、その隣のお母さんも同じアイスを食べている。
店は違えど、一緒に働く仲間。
外は暑い。
冷たいアイスを分け合って、さぁ午後も頑張ろうというわけだ。
夕暮れ時、食堂が並ぶ通りには人の声が賑やかに躍る。
今日一日をねぎらって、キンキンに冷えたビールと焼酎で乾杯!
スユク(ゆで豚)の上にスライスしたにんにくをたっぷりのせ、口の中へ放り込む。
青唐辛子をポリポリ齧りながら、デジクッパのスープを一口。
暑い夏もしっかり食べて、飲んで、明日への活力を養う。
そんな釜山の人々を見ていると、こちらまで食欲が増してくるのだ。
本誌では釜山のおいしい食堂、市場、さまざまな魅力を紹介しています。
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