―小泉純一郎元総理の写真集や石原真理さんの告白本などベストセラーを数多く手がけてこられた渡辺さんですが、今度は大人ギャルのファッション&ゴシップ誌の世界に殴りこみですか。

編集長が生み出したベストセラーの数々
はい、殴りこみはオーバーですが(笑)、おもしろい市場がここには広がっていますので、是非挑戦したいなと思いました。いわゆるギャル雑誌が入口だとして、そこで育った読モ(読者モデル)たちがメジャーになるための出口というか受け皿、そんな雑誌がなかったんです。
やはり、ギャル雑誌で頂点を極めた読モたちの次なる展開が何なのか、どういった生き方をして行くのか、みんな興味があるはずなんですね。だから僕はそんなトップモデルたちに全員出てもらって、オールスターで何か自己表現をしてもらえたら、読者は喜ぶのではと考えたんです。小森純さん、桃華絵里さん、板橋瑠美さん、椿姫彩菜さん・・・みんなすごい表現力をもった人たちです。彼女たちは自己プロデュースのプロで、個性的でカッコイイと憧れられている存在です。
そんな読モたちが着るプライベート・ファッションであったり、私生活で使うコスメであったりを見せてもらいながら、読者目線でリアルに、ページづくりを一緒にしていけたら、かなり面白いものになるのではと思うんです。なかなかこれだけの読モたちが一同に登場して、プライベートを見せることもないでしょうから。
―それぞれのモデルの事務所や版元からのクレームとかはないのですか。

創刊0号表紙
まったくありません。基本、彼女たちは読モの代表と言うこともありますし、すでにタレントとしても活躍している娘も多く、共存共栄でやっていったほうがギャル市場が盛り上がるということで、各事務所や各版元さまからは喜んで頂いているようです。
それに、私どもは雑誌をプラットホームにして、女性ファッション誌の新たなビジネスモデルも構築できたら、と考えているので、そういった新たなビジネス展開に事務所や読モが興味を持って下さった側面もあったかと思います。
―商品開発とかもできそうですね。
おっしゃるとおりで、すでにいくつかお話を頂き、創刊に合わせ「エッジ・スタイル」のブランドを使った商品開発も決まっています。トップモデルが面白いと思ったものを、うまく商品化していけるように、メーカーなどとも協力体制をつくっています。
日本のみならず海外での商品化も視野に入れて動いています。
―創刊が最初3月といわれていて、昨年、渋谷でイベントがあったりしましたが、それが6月に延びた理由は何ですか。
台湾で6月に同時創刊しようとしたからなんです。すでに同時創刊も正式に決定しました。日本版のデータはすでに向こうに送ってあって、台湾ではそれをもとに翻訳したり、台湾のトップモデルを登場させるなどして独自記事も何ページか入れることになっています。
我々としては今後、台湾をかわきりにアジア、そしてヨーロッパでの海外出版を進めています。海外出版を踏まえ、日本版でも上海のトップモデルを巻頭ファッションページに使うなど、キャスティングを試みています。AnnieG(アニーG)というモデルなのですが、台湾でも相当引きがあるはずですね。
アジア市場でのギャル人気は凄まじいものがあり、当初から海外進出を視野に入れて考えてきましたので、まずは台湾で出版して、それから中国、韓国などで展開していきたいと思っています。
―「エッジ・スタイル」というタイトルの新雑誌ですが、簡単にコンセプトを教えていただけますか。

ポスター案も次々に登場

スキャンダラスな宣伝案も
はい。本誌は、大人ギャルのファッション&ゴシップ誌です。先ほども申しましたように、トップモデルのプライベート・ファッションと国内外のゴシップで読ませるものとが核になる雑誌です。私自身が「週刊大衆」の編集者で、ずっとゴシップに携わっていましたし、何よりも人間が大好きなので、その表と裏、光と陰など、本音が分かる記事を売りにしたいと思っています。
読モたちのブログでは分からない、彼との話や恋愛情報も載せて行きたいですね。
創刊にあたって4つのキーワードを用意しました。
それは、
(1)セクシー (2)リアル (3)ゴシップ (4)ラブ です。
セクシーは、やはり大人になったら、よりセクシーなファッションでいたいでしょう、ということなんです。リアルは、生き方そのものを出して見せましょうということです。ゴシップはいまお話しましたように、私の人脈をフルに活用して国内外のおもしろい記事を提供します。そしてラブですが、これは恋愛の告白ものになる予定です。
―そうなるとギャル雑誌を卒業した女性がコアな読者ですよね。20代ですか。
だいたい25歳前後がコアな読者になってくると思っています。彼女たちはこれから理想の彼と結婚して、女性として自分の人生を築いていこうと思っている人たちです。すでに内面でしっかりした個をもっている。この雑誌は、ちゃんと自己主張できる力をもった人、あるいはそうありたいと思う人たちにサポートされていけばいいと思います。
東京のOLというよりも、渋谷に憧れる地方に住むネールアーティストであったり、ナースであったり、何か手に職をもった人のほうが親和性が高いのだと思います。
この世代のギャルたちって、実はすごく保守的でまじめで家庭的なんです。ちゃんと結婚も考えているし、親も大切にしたいと思っているし、金銭的にもしっかりしている人が多い。そんな女性読者たちに訴えるわけなので、誌面も身近で役に立つものでなければいけないと思っています。
―私も女性誌を少しだけ経験しているのですが、占いやスピリチュアルな要素は不可欠かなと思っています。そのへんはいかがですか。
占いは力をいれていきます。星ひとみさんという女性占い師がいて、俳優の石田純一さんや、タレントのリアディゾンさん、ロンブーの田村淳さん、歌手の大塚愛さんなど有名な人を占っているですが、彼女をメインに話題の人をいろいろ占ってもらおうかなと思っています。たとえば、いまなら沢尻エリカさんを占 ったりしたら、読者の関心もあり面白いなと思っています。
―各メディアとのコラボは当然考えておられますよね。
すでにテレビは仕掛けています。テレビ朝日のロンブーの番組「ロンドンハーツ」でオアシズの大久保佳代子さんが、小森純ちゃんそっくりのギャルメイクに変身するんですが(笑)、スッピンからメイクが完成するまでの写真プロセスは「エッジ・スタイル」で見てください、ってやってみたり。
フジテレビとは、筆談ギャルでコラボしようと思っています。この筆談ギャルは耳にハンディーを抱える21歳の女性なんですが、本誌でデビューしてもらうつもりです。彼女はイジメや元夫のDVにも負けず、現在シングルマザーとして強く生きる一人の女性です。すごくキレイな娘で菊池凛子さんが活躍したハリウッド映画「バベル」の主演に当初、選ばれたくらいの人なんです。本人は裸になれないと断ったそうですが。
それと今、大人気のAKB48の板野友美さんに登場してもらうつもりです。彼女はギャルにすごくうける女性タレントで、渋谷の109でも大人気なんです。かなりページを割いて、アッと驚くようなファッション姿をしてもらって、紹介していくつもりです。
テレビ局と出版メディアのコラボはますます加速すると思いますので、携帯公式サイトで、テレビでは映らなかった秘蔵の映像コンテンツを見せるとか、いろいろ協力し合って行けたら、と考えています。
それと隠し玉の企画として、亀田三兄弟の妹が本誌の創刊号でデビューします。雑誌のあとはネットで見てもらえるように展開しますよ。彼女、女優の井上真央ちゃんに似ていて、もの凄く笑顔がカワイイ女性なんで、ぜひ本誌をご購入して頂いて、その素顔を見てみて下さい(笑)。
―そういった意味では、ネット・メディアとの親和性も高いし、むしろ読者というかユーザーがメディアを生成していく、いま流行のスタイルになっていきそうですね。
そうでないといけないなと思います。読モたちは本当に発信力がありますから、自分たちのブログなどでもいろいろと本誌での撮影秘話などを語ると思うんです。それに読者が反応して、まわりでは商品が動いたりして行くという、大きな相乗効果ですね。
それと、創刊にあたって、ビジョン、駅貼り、イベント、記者会見と大々的にPR活動をして、渋谷をジャックしようと思っています。新人読者モデルもそこで一緒に募集しちゃうつもりです。携帯のQRコードを入れた募集ポスターをつくったりして・・・ぜひ、富士山マガジンさんもPRご協力ください。
―おもしろいですね。ところで渡辺さんは、どういうきっかけで、この世界に入られたのですか。
先ほどもお話したとおり、私は人間に興味があり、人間が大好きなんです。ですからいろんな人に出会えるマスコミに学生時代から憧れていました。いろんな人間の生き様を伝えるような仕事に就きたいと思っていたんです。
幸い出版社に入社できて、週刊誌をやらせてもらったおかげで、自分のやりたかった夢は果たせたかなと思っています。今度はそれをどうビジネスとして発展させていくかなんです。
―週刊誌では記者と編集者と兼務されていたのですか。
はい、両方やりました。同時に単行本もつくりました。お蔭様で、世間でも話題となったベストセラーといわれる本も何冊か担当させていただきました。そして、こんな厳しい時期に女性ファッション雑誌が出せるということにも、会社に対して本当に感謝しています。
今まで培った人脈とノウハウを十二分に生かして、大人ギャルのファッション&ゴシップ誌「エッジ・スタイル」を、必ず成功させたいです。
―ベストセラーってなかなか出せないと思うのですが、何か極意はあるのですか。

ネタがつまった渡辺編集長のノート
極意ということではよく分かりませんが、私は、なるべく大きな流れに流されないように心がけてきました。ついマスコミの大きな論調にあわせてしまいがちなんですが、むしろそれをアンチの立場で見るような目線を大事にしてきたつもりです。人が右に行くときは、自分は左に行くというか、もしかしたらあまのじゃくなのかもしれませんが(笑)。
小泉純一郎元総理の写真集をつくったときも、あのときはたしか総裁選の前は故橋本龍太郎さんが優位にあったんです。でも私は小泉さんに何か魅力を感じ、彼に近い関係者にアプローチしました。人間って自分が注目されていないときに注目してくれる人にはやはりシンパシーを感じるのではないでしょうか。小泉さん側もそんななかでしたので難しい注文を引き受けてくださいました。
野村監督の自叙伝もそんな感じでした。野村さんがちょうど阪神の監督を辞められたときだったため、人がどんどん離れて行かれている時でした。しかし、私はぜひ、監督の哲学を自叙伝ふうにまとめたい、と何度も何度もお願いにご自宅まで上がらせてもらいました。もちろん、実際に出版を引き受けて頂くまでにはひと苦労ありましたが、そんなときだからこそ生身の姿に接し、監督も真剣に若輩者の私に向き合ってくれたのだと思います。
著者と編集者がそんなふうに真剣に向かい合えたとき、そこにベストセラーが生まれる土壌が出来上がるのかもしれませんね。
―あとは、マーケットがそこをどう見るかですね。そのマーケットになじむ形で商品を出していかねばならない。そこが編集のテクニックでもあるのでしょうが。
その通りです。そこでは私は2つの極意があると思っています。
ひとつは、若い女性が買うものであるかどうかです。この人たちが注目してくれないと、やはりマーケットに根付きません。若い女性は本当に目が肥えているし、同時にすごい発信力がある。彼女たちにそっぽをむかれたら、まずマスは獲得できません。
それと、やはりスピードの時代ですので、ロングセラーになりうるような話題を常に提供していかねばならないということです。たとえば私は石原真理さんの自叙伝を出したときは、彼女が過去に交際した、「13人の男」というキーワードを用意しました。それと実名で出すということ。それが話題になりました。13人とは誰なのか、そして実名報道というのはいかがなものなのか、と物議を醸しました。予想していたとおり、マスコミがそれに飛びついてくれて、その報道が様々な形で広がっていく。そうなると相乗効果でロングセラーになっていくんです。
奥菜恵さんの自叙伝『紅い棘』を出版したときは、「セレブ婚」というキーワードを出しました。これも若い女性たちの結婚観としては、賛否両論なんですね。結婚はお金が一番大切なのか、それとも相手への思いやりが一番大事なのか、とさまざま議論を呼びました。すると、マスコミでも「セレブ婚論争」と大きく取り上げられたこともあり、多くの未婚女性たちが多数購入して下さって、ロングセラーとなりました。
―なるほどね。いやよく分かりました。編集のチーム構成はどんな感じですか。

編集部のみなさん。手前が編集長席

写真をどう見せるかにも編集長のセンスが
編集は3班に分かれています。ひとつはファッション班。ここにはギャル・ファッション誌に長年携わってきた、ベテランの女性編集者がおりますので、彼女を中心に「エッジ・スタイル」ならではの、LAセクシー・ファッションを提案するなど、独自ファッションをお見せして行きたいと思っています。
次にコスメ班。これはフリーのコスメ雑誌の敏腕編集者に入ってもらって、プロの目で、読モたちのプライベート・メイクを紹介するなど、オリジナリティーを出して行きたい、と考えています。
そして私の領域でもあるゴシップ班です。人数は決して多くありませんが、私を中心に先鋭集団で臨みます。毎号、他のマスコミやネットの芸能ニュースでは読むことの出来ない、スクープをお届けするつもりです。創刊号では、沢尻エリカさんが離婚騒動の中で、なぜ個性派美女としてさらなる輝きを放ち始めたのか、その裏側を総力取材しています。
―創刊前夜は本当に大変でしょうが、いまどんな生活サイクルですか。
創刊ですから、いまは朝まで会社にいます(笑)。ただ、この時期に雑誌が創刊できるというのは本当にありがたいことなので、楽しくやっています。でも普段から仕事人間なので、朝は午前中から各新聞、テレビなどを全てチェックしてニュースを把握。そして昼食を取材がてら誰かと食べて、その後、出社。会社についてからはデスクワークや、メールの返信、打ち合わせ、アポの電話などをこなして、夕方からまた人に会う生活です。
さらに、会社に帰社して、朝方まで入稿作業といった感じです。私生活はあまりないかもしれませんね(笑)。
とにかく人に会うのが大好きで、いまでも一日10人くらい新しい人に会います。入社当時は先輩から一日に最低3~5人に新しい人に会えといわれてきたのですが、この仕事を続けている限り、続けて行きたいですね。とにかく人が財産だと思っていますので、スタッフ、モデル、取材対象者と人を一番大切にして行きたいですね。デジタル時代で電子出版が主流になっても、やはり人との出会いの中でしか、新しい企画は生まれてきませんからね。
―編集者として今後の展開にどんなイメージをもっておられますか。
編集者のあり方も変わっていくと思いますね。これからは、いかに一つの仕事でより多くの利益を生み出せるか、といったビジネスマン的な能力が重要になってくると思います。またスピード時代ですから、時代の動きに俊敏に対応していかないとダメだと思います。
私は今後、出版事業だけでなく、流通を巻き込んだ大きな動きに興味があります。雑誌もEコマース事業も見据えた大きな展開、それを新創刊する「エッジ・スタイル」で日本のみならず、アジア市場全体でとらえた形でしっかりやっていければと思っています。
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1.週刊大衆(双葉社)
お父さんのアイドル誌として、芸能情報から、政治情報まで肩に力が入らず読めるため。
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2.サイゾー(サイゾー)
テレビや新聞、雑誌では読めない、各業界の裏話が満載で情報ツールとして活用している。
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3.ゴシップ・プレス(トランスメディア)
海外セレブの最新オシャレ情報が掲載されているため。
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4.東スポ (東京スポーツ新聞社)
UFO、宇宙人、ツチノコ……と、東スポでしか読めないスクープネタが満載なため。
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5.ブブカ (コアマガジン)
他誌では読めない芸能コラムなど、読者を飽きさせない誌面作りについ愛読してしまう。
(2010年4月)
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- 小泉純一郎元首相の写真集が出たときは、マジ?と思った人も多かったと思われますが、その仕掛け人が何を隠そうこの渡辺さんです。この本は、時の首相の人気と相まって25万部売れたそうです。
今回のインタビューでも、そのあたりの秘話を少々語っていただきましたが、ベストセラーは一日にしてならず、で、人に言えない苦労の積み重ねがあって、ようやくその上に一輪の花がさくようなものなのでしょう。
そんな仕掛け人が、今度はギャル雑誌とはちょっと驚きでした。狙いは雑誌だけではなさそうだと思い、いろいろ訊いてみました。今回その本音部分も語っていただけたかと思っています。
渡辺さんはやはり、大きなスケールで雑誌を核にした次世代の出版スタイルを構築されようとしていました。編集者も、こういったプロデュースができるようになれば、もっと世界は広がりますね。
それにしても、いまでも1日10人の人に会うというエネルギーはすごいものです。でもギャル相手になると、そんなことも言ってられないか。彼女たちのパワーのほうが数段上かもしれないわけですからね。
インタビュアー:小西克博
大学卒業後に渡欧し編集と広告を学ぶ。共同通信社を経て中央公論社で「GQ」日本版の創刊に参画。 「リクウ」、「カイラス」創刊編集長などを歴任し、富士山マガジンサービス顧問・編集長。著書に「遊覧の極地」など。

