【対談】解剖学者・養老孟司×精神科医・和田秀樹『日本人が陥る“健康不安”の正体』

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日本の医療は世界最高峰だという思い込みから、誤った治療を選択させられている可能性があります。

事実、コロナ禍では、過剰なまでの対策・自粛が行われていたのにもかかわらず、感染者は世界一になりました。

 

なぜ、日本の医療業界はこのような歪みを抱えてしまったのでしょうか。

解剖学者の養老孟司氏と精神科医の和田秀樹氏が『日本人が陥る“健康不安”の正体』について対談しています。

 

医療の大問題が見落とされている

 

 

和田秀樹:今回のコロナ騒ぎは日本の医療の縮図です。もともと抱えていた問題点がすべて現れました。

まず、欧米の研究を無批判で日本に受け入れてきた伝統です。健康診断で「コレステロール値を下げろ」と指導されます。たしかにコレステロール値の高い男性は心筋梗塞になりやすいのですが、低い人は逆にがんになりやすい。

欧米は心筋梗塞になる人が多い国なので理屈が通っていますが、日本は心筋梗塞よりがんで死ぬことがはるかに多い国。肉の消費量も日本は少ないのに「肉を減らせ」と指導するのです。

 

コロナも同じで、日本の10倍以上の死者数や感染者数がある国の対策を無批判で日本でもやってしまった。さらに欧米は途中で無意味さに気づいて自粛をやめているのに、日本は修正もせず、いまだに自粛圧力が強い。

 

「心の不在」も顕著でした。

私が東大医学部で養老孟司先生に教えていただいた時代は、東大の土居健郎先生、京大の木村敏先生、神戸大の中井久夫先生のように、精神科の教授に心の専門家がいました。しかし、医学部がある82大学に、今、カウンセリングや精神療法を専門としている主任教授は一人もいません。

今回のコロナでも「自粛生活は心に悪い」と声を上げた精神科医はほとんどいなかった。日本の医療は「人間には心がない」と言っているようなものです。

 

養老孟司:コロナの前から心の問題はありました。

大正時代の作家、芥川龍之介は「将来に対するぼんやりとした不安」を理由に自殺しています。

 

僕自身は、不安になる気持ちがわかりません。むしろ先が見えていることだけやるのはおもしろくない。定年より前に教授会で「東大を辞める」と報告したら、内科の先生から「やめてどうするのか」と心配されたことがあります。

辞めてみないとわかりませんと答えたら、「よく不安になりませんな」と言う。だから、「先生、いつ死なれるんですか」「わかりません」「よく不安になりませんな」と続けました。

 

(途中省略)

 

ここで和田さんの最初のご指摘とつながるのですが、日本人の多くは、社会が欧米型の考えを受け入れる中で、自分の立ち位置をどこに置くか、考えていないんですよ。

個人で問題に向かい合ってないから、不安なままなのです。

 

僕は東大時代、英語で論文を書くのをやめました。自然科学の領域は当時からグローバリズムが強かったのですが、日本で仕事をしているのになぜ英語で書かなきゃいけないのかと。英語でないと業績にならないので、見事に干されました。

 

和田:流されやすいのは、対欧米だけでなく、日本の医療業界の中でも同じです。

日本の医療は過度な専門文化が進んでいて、しかも他の専門の人に意見を言いません。

コロナ禍の自粛生活はうつになる人が増えるのに、日本精神神経学会は異議を唱えませんでした。ほかの専門分野もそうです。高齢者が外出しなくなると足腰が悪くなったり、認知症になりやすくなったりしますが、老年医学会は「自粛は良くない」と言いませんでした。

 


 

本誌ではお二人の対談の全文をお読みいただけます。

 

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