「日常をほんの少しだけ離れて暮らすように旅したい…」エッセイから紐解く楽しい暮らしのある町

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季節は本格的な夏に向かって歩みを進めています。

そろそろ、旅に出たくなるころですね。

 

日常をほんの少しだけ離れて、日本各地の、知らない町の空気を感じる小さな旅。

できれば、その町で心豊かに暮らしている人々のように、穏やかにゆったりと過ごしてみたい。

 

&Premiumでは、そんな願いを実際に叶えてきた著名人たちによるエッセイを通してまとめています。

 

富山県氷見(ひみ)
安西水丸/イラストレーター

 

 

フクラギに魅せられ、安西水丸が通った町

 

text : Mari Matsubara

 

さまざまな雑誌のために執筆した旅のエッセイをまとめた『たびたびの旅』で、
安西水丸の筆ににわかに熱がこもるのが食べ物に関するくだりだ。

なかでも「フクラギ」という魚の刺身をたいそう気に入って、
これを食べるためにわざわざ毎年通うようになったのが富山県の氷見

フクラギとは土地によって呼び名が違うが、ハマチやイナダと同じブリの幼魚のこと。

 

「氷見の町でいつもはっとするのは、水平線上の立山連峰だ。はじめは海の上に雲が浮かんでいるのかとおもったが、それが雪をかぶった山々だったのだ」(『たびたびの旅』より)

 

山の稜線を彼らしいシンプルな線でスケッチしながら「今夜はどの酒を飲もうかな」(同)と
早くも晩ごはんに思いを馳せ、磯料理に定評のある明治期創業の旅館に入る。

夕食にはフクラギの刺身、マツバガニ、沖の女郎という小魚が出てくる。

しかしフクラギがどんなにおいしいかについて一言も触れずにエッセイは終わる。

 

それでも氷見に向かう鉄道の途中駅の駅名の話や、旅館の仲居の方言など、
一見どうでもよさそうな旅の些事を読み進めるうちに、いつしかスローテンポの安西の旅に取り込まれ、
フクラギで一献傾けたいなぁという気にさせられる。

 

氷見

 

富山県北西部、能登半島の付け根に位置する氷見市。

定置網漁で獲れる寒ブリ、氷見イワシをはじめとする海の幸が年間を通して豊富。

変化に富んだ海岸線や立山連峰の大パノラマは壮観。

氷見温泉郷では海を眺める露天風呂なども楽しめます。

 

岐阜県郡上八幡
さくらももこ/漫画家

 

 

美しい水を見るだけで、嬉しい気持ちになる

 

text : Wakako Miyake

 

漫画家のさくらももこは、実は旅はそれほど好きではなかったという。

しかし、岐阜県の郡上八幡は別。

好きが高じて、勝手に街のキャラクターも作ってしまったという入れ込みよう。

 

ずいぶん昔に知人から話を聞いたのが最初。

それから約20年後、岐阜の取材のついでに立ち寄り、初めて降り立ったときから
「なんて感じのいい町だろう!」と感動したと、『さくらももこ編集長 おめでとう』に記されている。

この本の中では「郡上八幡にどうしても行く」というタイトルで、
いかに良いところかというのを、愛に溢れた文章で綴っている。

そこにはこんな一説も。

 

「郡上八幡の美しい景色は、観光地としての景色ではなく、普段の生活が溶け込んでいる風景だ。水を大切にし、水を喜び、昔からそこで生活をしている人々の想いが込められている町だ」

 

町中に流れる清らかな水を眺めながら散歩したり、昼寝をしたり。

せめて1ヶ月くらいは滞在し、
「食べ歩いたり飲み歩いたり、町の人とも仲良くなったりして、生活を体験してみたい」とも書かれている。

水とともにある町の暮らしそのものに感動し、その景色にいるだけで嬉しく感じる。

一緒に行った息子とともに、自分もそこで暮らしたいと願う旅だった。

 

郡上八幡

 

岐阜県のほぼ中央に位置する郡上八幡町。

市街地の中心には長良川の支流である吉田川が流れています。

町中には湧き水や山水を引き込んだ2槽もしくは3槽構造の水槽があり、
最初の槽の水は飲み水に、次は器などを洗う水に使われます。

 


 

他にも北海道小樽、島根県松江・出雲、兵庫県神戸、沖縄県那覇などたくさんの観光地について
著名人のエッセイをもとにまとめられています。

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