【インドネシア最後の秘島・スンバ島】人々の生活を馬が支え、馬がビーチを自由に走る楽園

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そろそろ長旅の準備を始めたい…縮こまっていた心を解放する旅へ出たい…。

 

長い時間をかけ、遠くへ出かけることが困難だったこの数年。

海外旅行からも遠ざかり、いつしか選択肢からも外れてしまってはいないでしょうか。

 

行きたい場所は山ほどあったはず…ようやく訪れた長い旅の機会。

島、海、山など日常から遠く離れた自然の美しさ、それらを楽しむアクティビティ、
持参品の味わい、かの地に住む人々との交流。

自分の目で見て、肌で感じ、味わう、すべての体験が旅の醍醐味です。

 

BRUTUSでは、いまだかつて出会ったことがない景色を紹介しています。

そんな中から、今回はインドネシア・スンバ島を紹介します。

 

“忘れられた宝石”にちりばめられた
人々の暮らしに触れる

 

 

「馬たちがビーチを自由に走る楽園がインドネシアにある」
しかも、「海で馬と一緒に泳げる」らしい…!

 

そんな噂を聞いて、飛行機を乗り継いでスリランカのスンバ島を目指します。

『インドネシア最後の秘島』と言われる島です。

 

白檀の甘い香りに包まれた島

 

「馬はスンバ人にとって魂なんです」と23頭の馬を有する、
我々が目指す楽園〈ニヒ・スンバ〉ジェネラル・マネージャー、マデリン・アーネスト氏は言います。

 

在来のスンバ馬はモンゴルにルーツを持つポニー種で、中国人が貿易のためにもたらしました。

かつてスンバには希少な香木、白檀(サンダルウッド)が自主していました。

16世紀に冒険家マゼランと同時期にこの海域を航行した旅団が、『白檀の甘い香りに包まれた島』と書き記したことから
『白檀の島』と呼ばれましたが、乱獲により失われてしまいます。

 

現在は『サンダルウッド・ホース』というスンバ馬の英語名にのみ、その名残をとどめています。

西洋人が求めたスパイスはなく、白檀も失われてからは長い間、“忘れられた島”となっていました。

オランダ統治時代も、首都ジャカルタからは遠く、現代まで独自の文化を色濃く残しています。

 

島々に伝統を色濃く残す

 

スンバ島はバリ島の南東400km、四国の6割ほどの大きさで、バリ島の約2倍の面積に、人口は5分の1ほど。

多くの島民がキリスト教を信仰しており、街には十字架を掲げた教会が点在しています。

 

トウモロコシを主食としていましたが、オランダ統治時代に二・三毛作の稲作が伝わり、
島内各地には広大な田畑、美しい棚田が広がっています。

 

バリ島からのプロペラ機がスンバ島上空に入ると、
降下とともにほとんどの家屋が茅葺かトタンのとんがり屋根であることがわかります。

これは『マラプ』と呼ばれる先祖信仰に則る伝統建築。

屋根の尖った部分に先祖が宿り、人々はその精霊たちに守られて暮らすのだといいます。

 

人々の生活を支える馬たち

 

 

島内では、白檀の代わりに残された馬の子孫が今日でも人々の生活を支える光景が見られます。

 

交通手段としてバイクに交じって走る馬、田畑で農耕に勤しむ馬。

年に1度行われる騎馬戦のような祭祀にも登場し、婚姻の際には結納品として、伝統文化の重要な役割を担います。

祭祀のために様々な種の馬が輸入され、今ではほとんどがチャンプルー(雑種)となり、
多様な馬たちが暮らしています。

 

また、島の人々にとって馬同様の財産とされるのがイカットと呼ばれる絣(かすり)の手織物

抽象的な紋様のほか水牛や馬、亀、精霊などの具象的な紋様が織り込まれ、
制作に数年を要する大作もあるといいます。

 

女性はスカートのように腰に巻き、伝統的に帯刀が許されている男性は刀帯や腰巻き、
ターバンの広狭の布を色彩豊かに組み合わせるのが美しい。

 

『忘れられた島』はまた『忘れられた宝石』ともいわれています。

訪れる人々は、海風になびく馬の鬣やイカットをぼんやりと眺めながら、
手つかずで残された“宝石”の豊かさに感謝するのでした。

 


 

本誌では、他にもモルディブやスリランカなどが紹介されています。

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