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個展に並んで手に入れた若手作家の器、旅先で一目惚れした骨董品、
知人からもらった思い出深い一皿……
器には、一つ一つに使い手のストーリーが詰められています。
BRUTUSでは、カジュアルに楽しむ新世代の器好き17人が語る、
とっておきの逸品と、その使い方を紹介しています。
その中から、女優・長澤まさみさんと器との付き合い方をピックアップします。
若い作り手の“全力感”や人気陶芸家の美しい器が
生活を明るく整える
長澤まさみさんが一目惚れしたという木のボウルは2つは髙橋成樹さんの作品。
「髙橋さんは山に入って生態系を守る山師の仕事を受け継ぎ、伐採した木や倒木で作品を作っているウッド・アーティスト。
器が純粋でカッコいいし、もの作りの背景を知りたかったので、高知の工房へ見学に行ったこともあるんです。少しも手を抜かず全力で木と向き合う様子や、伝統を大切にしながらも自分らしさを表現する姿を見せて、ますます応援したくなりました。
黒い方は木が割れてる部分を金属の鎹(かすがい)で継いでいるのがかわいらしく、木目がグラフィカルな方は、エノキという御神木で作られています。
私、なぜか昔から、何にも入ってない大皿がテーブルにポンと置かれた風景に憧れていて、髙橋さんのボウルを見た瞬間、「これだ!」と思ってしまいました。
実際はフルーツを盛ったりパンを入れたりしているのですが、木の器があるだけで部屋の空気が澄むような気がするのもいい。木や土や石や漆など、自然素材のものが多いことも器の魅力ですよね」
白いボウルは、何度か個展に通って、よくお話しもするという内田鋼一さんの作品。
「内田さんの作るものはいつもシンプルで、ほかの器と並べても馴染むのに、それでも滲み出る主役のオーラがある。鍛錬された技術に加え、骨董オタクでもある内田さんが見てきた陶芸の歴史や知識が、全部詰まっているからだと思います。
例えばお芝居は、作り手の人間的な厚みが作品の質につながりますが、この器からも、ちょっとやそっとじゃ生み出せない深みが感じられる。内田さんは私の心の師匠です」
20代の頃、長澤さんは器をあまり買わないでおこうと決めていたそうです。
「その時に好きでも、飽きて使わなくなってしまったら悲しいから。それが30代に入る前かな、好みや生活環境が定まってきたように感じたので、器好きの友人に教えてもらって少しずつ揃え始めました。
当時は割れないように気を使いながら扱っていましたが、ある作家さんに『時々、割ってくれると助かる』と冗談みたいに言われ、『確かに器は割れるもの。どんどん使わなくちゃ』という気持ちになって。だから買う時は、どんな料理が似合うか想像できるものを選んでます。
内田さんのボウルには春菊のサラダ。オリーブオイルがシミになっちゃうのも悪くないって私は思います。家には料理のシミがついた器もありますが、自分の日常が刻まれた骨董みたいで結構好き。きれいに使うことも大事だけれど、その先に踏み込むことで出会える喜びも、きっとあるんです」
本誌では、長澤さんのこだわりの器の詳細や、インタビューの続きをお読みいただけます。
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