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770タイトルを超える作品数、幅広いジャンル、そして時代。
石ノ森章太郎さんのマンガの魅力を語る上で欠かせないのは“時代”です。
戦後の復興を乗り越え、高度経済成長からバブル崩壊。
激動の時代にあって、さまざまな問題を抱えながら人々はいつも何かにつき動かされていました。
エネルギーに満ちたあの“時代”。
男の隠れ家では、石ノ森さんの代表作とともに、
当時の世相を振り返りながら“時代の寵児”が作品に託したメッセージを紐解いています。
今回はその中から、仮面ライダーの5つの真実をピックアップします。
石ノ森章太郎のココがすごい!
仮面ライダー5つの真実
(1)悪の組織から生まれた正義のヒーロー
仮面ライダーは言うまでもなく正義のヒーローです。
ですが、それを作り出したのは悪の権化にして、本作における敵の組織『ショッカー』です。
本郷猛はショッカーに誘拐され、肉体を特別改造されました。
ですが、頭脳をも洗脳され生物兵器に完全改造される直前、人的要因で発生した電気トラブルに乗じて脱出。
組織に囚われの身となっていた恩師・緑川博士と再会します。
強靭な肉体と正義の魂を持って、ショッカーが繰り出す敵キャラと対峙していきます。
正義のヒーローと言えば、健康的で輝かしいイメージが浮かぶでしょう。
ですが、『仮面ライダー』は『勧善懲悪』の話であるとは言い切れません。
本郷猛は悪の組織・ショッカーに作り出された改造人間です。
偶然が重なり頭脳の改変は免れ、正義の心を有した正義の味方足りえた。
ですが、電気トラブルがなければ、彼もまた悪の改造人間としてショッカーの手先になる運命だったのではないでしょうか。
運命が異なれば、本郷こそ『改造人間』として、正義の味方に退治されていたかもしれないのです。
「善悪は表裏一体」
そんなメッセージ性も伺えます。
そして『人ならざる者』となった本郷は、もう普通の日常生活を送ることはできません。
苦悩する本郷は平穏な生活を振り捨て、“正義の改造人間”として戦いに身を投じます。
彼の悲壮な決意がもの悲しいところです。
(2)科学主義を否定する“テクノロジーの申し子”
先の対戦で日本はアメリカの物量と科学技術の前に屈し、戦後の日本は科学技術一辺倒になりました。
科学技術、原子力は日本の成長をけん引するエネルギーであり、科学は正義でした。
ですが、一方で山野は切り開かれ海は汚染されました。
水俣病や四日市ぜんそくなどの公害が社会問題化し始め、
過度な環境汚染を解決すべく環境庁(現在の環境省)が発足したのは
『仮面ライダー』連載開始と同年のことでした。
本郷猛が改造人間として見出されたのは、元々優れた頭脳と強靭な肉体ゆえでした。
クモにコウモリ、コブラなど、敵怪人らは
いずれも生物の特性を生かした特技を繰り出し仮面ライダーを攻めます。
地球上の物語だからこそ偉大な大自然の形態には逆らえないのです。
ちなみに、昭和49年(1974年)には『仮面ライダーアマゾン』が始まります。
主人公は幼少期に飛行機事故で南米・アマゾンに墜落し、野生の動物たちに囲まれて育ったという設定。
薬草の利用法など植物全般の知識があり、変身前でも敵を屈服させたりと元来の格闘能力も高い。
当時の日本において『ジャングル』の代名詞だったアマゾンを故郷としたのは
「いくら科学技術が発展しても人間は生物、大地を離れては生きられない」という思想でしょうか。
本誌ではさらに仮面ライダー3つの真実、そして石ノ森章太郎さんの他作品もたっぷりと紹介されています。
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