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今、日本に同時多発的に登場しているのが『カルチャープレナー』、文化起業家の方たちです。
伝統を現代の文脈で再解釈したり、新たな価値を見出したりするのが特徴で、
『文化とカネ』という遠かった関係を、自立したビジネスに変えて、世に影響を与えていきます。
埋もれた歴史資産、地域資源、技術が新たな視点とともに息を吹き返す物語なのです。
今号のForbes JAPANでは、カルチャープレナー30組を選出しています。
歴史という時間の蓄積から生まれた彼らが今後、世の中をどう変えるのでしょうか。
今回はTeaRoom代表取締役CEOで裏千家茶道家の岩本涼さんをピックアップします。
お茶の精神性が世界で共鳴するために
伝統と産業をつなぐ、茶人起業家が目指す場所
『TeaRoom』は日本茶事業を展開。
日本茶といっても、いわゆるフードテックではありません。
現在、売上のメインになっているのは、茶の湯文化を軸にしたコンサルティング事業です。
例えば、『ゆらぎの声』に向き合う花王の商品プロジェクト。
コンセプトに合わせて、暗闇のなかで自分の感覚と向き合う暗闇茶会『日日是好日』を企画し、
11月に国立博物館内の茶室で実施します。
さらに現在、東京駅八重洲口前の再開発を進める東京建物は、
25年に竣工予定のビルにお茶を楽しめるスペースをつくるための実証実験を行なっています。
そこでTeaRoomはお茶のブレンドや体験に関するプロデュースを担う予定。
空間やプロダクトを通してお茶や文化に日々触れる機会をつくり、利用者のウェルビーイング向上を狙います。
そのほかにも、食品、サウナなど、TeaRoomがかかわる領域は広いです。
お茶の精神性を拡張させ
人々の思想と行動を変えていきたい
9歳から茶道に親しみ、現在は裏千家茶道准教授を務める代表の岩本涼さんはその意図をこう解説します。
「お茶の精神性はユニバーサルなもの。今やどの産業でもデジタルが必要なのと同じで、お茶も業種を問わずに浸透できます。
あらゆる産業の企業と協業して、お茶の精神性を拡張させ、人々の思想と行動を変えていきたい」
岩本さんがそこまで熱を入れるお茶の精神性は、いったい何なのでしょうか。
「一言でいえば、調和の精神です。
茶室は対立のない構造でできています。躙り口は小さく、入る人は役職も身分も関係なく誰もが頭を下げて入らなくてはいけません。道具も例えば焼き物は唐物、高麗物、国焼と産地ごとに特徴が違いますが、ひとつのテーマのもとにしつらえられます。
茶室は調和を生む装置。その精神性を広げて、対立のない世界をつくることが私たちのミッションです」
茶の湯文化に対立を乗り越える力があることは、学生時代に経験済みだったといいます。
岩本さんは、大学2年生のときお茶箱を携えてアメリカに留学し、そのまま世界を旅して帰ってきました。
現地の人を招いて即席のお茶会を開くと、ルーツの違う人たちとも、たちどころに仲良くなれました。
「どの国や地域にも喫茶文化はあります。トルコはインドはチャイ、イタリアはコーヒー、イギリスは紅茶、南米はマテ茶……。アメリカはパブ文化ですが、クラフトビールは茶の湯に近い。
いずれにしても、『日本茶は君の国のこれと同じだ』と話すと、見知らぬ敵だと思われなくなる。お互いの共通項を知ることが対立をなくすことにつながります」
世界の各都市を回るなかで蚤の市があれば、足を運んで骨董を集め、
茶会では、各国で調達したものを道具として使ったり。
多文化共生を茶の湯文化の様式に乗せて表現しているのです。
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