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昨今、サウナ愛好家による“サ活”が盛んです。
「サウナで汗を流し、水風呂で身を締め、一息つく」(×数回)で“ととのう”そう。
なんならその後に食事を楽しむ“サ飯”なる言葉も浸透しつつあります。
せっかくなら、ロケーションや料理の質にもこだわって、ワンランク上の“ととのい”を求めたいところ。
奈良県にあるサウナ併設の古民家オーベルジュなら、どちらも満たしてくれそうな気配です。
今回は、あまから手帖にて掲載されている、ライターの藤川満さんがレポートする、
奈良・山辺群『ume, yamazoe』でのととのい方を紹介します。
果たして、サウナで胃と心は変わったか?
文/藤川満
身長171cm、体重77kg。
極端な肥満ではないが、誰がどう見たってスリムではない48歳男性。
ただしこれ以上の体重増加を阻止するべく、普段からジョギングや山登りで身体を動かし、
汗を流すことは欠かさない。
それだけに、運動もせずラクして(?)代謝を上げようとする“サ活”なる行為には、やや批判的であった。
だが、けしてサウナ嫌いではない。
そこにサウナがあれば、普通に利用するライトユーザーだ。
この程度での者でも『ume, yamazoe』のロケーションを目の当たりにしたら、気分はぐっと上がる。
それは標高約300mに立つ風格あるリノベーション古民家。
客室からは奥大和の山並みが望める。
「秋から冬は雲海がよく見えますよ」とオーナーの梅守志歩さんがさらに魅力的なことを言う。
自然と静かな環境を求めてくる人が続々と
梅守さんの実家は奈良市内にある寿司屋。
葉ワサビの仕入れ先という縁で山添村に通った後、移住。
2020年にこの宿をオープンした。
当初は露天風呂の建設を想定していたが、サウナプロデューサー・野田クラクションベベー氏との出会いで、
フィンランド式サウナの建設へと舵を切る。
「最初は薪に火を着けることもできず、おろおろしてばかりで」
その後、周囲の助言や研究を経て、本格指導にこぎ着ける。
野田氏の影響でいわうる“サウナー”が大挙して訪れていると聞いたが、
今はむしろ、この自然と静かな環境を求めてくる方が多数派らしい。
「フィンランドでは、婚前にサウナで身を清めたり、神聖な場所なんです」と
小さな採光窓しかない暗いサウナ室で語る梅守さんの概論が興味深い。
室内を見れば温度計はない。
「実は隠してあります。でも、心地のよい温度は体感で分かります」
サウナストーンからは柔らかな暖気が昇る。
空気循環を考慮した設計のため、一般的なサウナの如く刺すような熱気はない。
和紅茶のロウリュをストーンに振りかけると、香ばしい香りとともに力強い熱気が迫り、一気に汗が湧き出る。
息苦しさはなく、新鮮な感覚だ。
クールダウンは信楽焼で作られた水風呂で行う。
趣を変えてサウナの屋上にあるハンモックに身を任せるのもいい。
どちらも森を抜ける風と虫の音が清涼剤。
これまで感じたことのない、痛快なほどの開放感と爽快感。
軽々しく“サ飯”と呼ぶに憚られる和のコース
「そろそろお腹が空いてきません?」という問いかけに、我に返る。
確かに、身体が栄養を欲している。
梅守さんの考案するレシピを、実家から派遣された料理人がカタチにした和のコースは、
軽々しく“サ飯”と呼ぶに憚られる。
「作り手の背景が見えるものを使いたい。だから薪も食材も地のものを使います」
酢漬けのミョウガは大西さん、茶碗蒸しの卵は石井さん…など
ご近所さんとの交流のエピソードを交えながらのサーブが楽しい。
「寿司屋の娘なんで」を前置きに、見た目も可愛い寿司が出てきた。
葉ワサビの茎がのる鯖の生寿司は、実家でも定番。
ほのかな刺激と鯖の旨みが程よく交わり、地酒も進む。
発汗することで、体内の塩分の減少やエネルギー消費が起こり、塩味や甘みに敏感になる。
それが“サ飯”が美味しく感じる仕掛けのようだ。
いつしか酔いと共に身も心もほぐれ、リラックスモードが加速。
客室の窓からは満点の星空が。
「心がフラットになれる場所にしたかった」という梅守さんの言葉を思い出し、
胃も心も枯渇から解放される、ワンランク上の“ととのい”を実感したのだった。
本誌では、『ume, yamazoe』でののんびりとした過ごし方やサウナの様子、食事の内容などもリポートされています。
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