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オズマガジンにとっての『名店』とは、『自分の居場所になるような、何度も通いたくなる“居心地のいい店”』として
リニューアル1号目にして『居心地いい店、東京の居場所』を特集しています。
人によってはそれは自宅近くの小さなカフェかもしれないですし、
昔住んでいた街の図書館かもしれません。
居場所たる理由も、カタチも、きっと人によって違います。
あなたにとっての“居場所”はどこですか?
今回は、オズマガジン編集部の久万田萌さんのコラムを紹介します。
小さな幸せが見つかる、いつもの居場所

十数年前の上京当時、東京には憧れがある一方で、冷たく怖い印象もあった。
そして人混みが苦手な私は都会の匂いにたびたび酔い、深呼吸ができる場所をよく探していた。
数年後、オズマガジンの編集部員となり、東京の街をくまなく歩くようになった。
それまで足早に通り抜けていた人混みも、怖いと思っていた街も、
顔をあげてゆっくり歩き改めて見つめてみると、まるっきり印象が変わった。
その輪郭が際立つにつれ、東京のどの街もおもしろいと感じられるほどに。
のめり込むようにいろんな街を歩き、さまざまな店を訪れ、たくさんの人に会った。
休日も同じ店へ通うことは少なく、常に自分にとって初めての店へ行くばかりの日々を、何年も過ごしていた。
そんなある日、コロナで緊急事態宣言が発令され、街を歩き回れなくなった。
住む街について考えをめぐらせた私は、一度目の宣言がとけてすぐに商店街のある戸越へ引っ越した。
そして越して初めての週末、ずっと気になっていたカフェを訪れた。
それが『ペドラブランカ』の1号店だ。
マスクを外し焼きたてのホットケーキを食べると、そのおいしさに声が出た。
静かに食べなければいけない頃だったので、おいしさの衝撃と共に、すぐに声を抑えたことを鮮明に覚えている。
前の家の周りにはカフェがなかったため、新しい家は近所にこんな素敵なカフェがあるのかと小躍りした。
しかし、その後すぐに1号店は閉じてしまった。
「うちって不要普及なんだ…とその頃は思いました。だけど、それが人生を暖かくするじゃないですか。そこにロマンがあるし、それを伝えたいと思って」
と話してくれたのは、1号店を開いた白石陽子さん。
屈託のない笑顔で、からっとした気持ちのいい人柄にファンが多い。
彼女のカフェにお客さんとして来ていたアツオさんと結婚し、その後ふたりで店を営むようになった。
看板メニューのホットケーキは、陽子さんのカフェに勤務希望でやってきたパティシエが、
“スフレ感のあるクラシカルなホットケーキを”とレシピを考案したという。
1号店の閉店時、入口には大行列。
お店に入れないお客さんのために白石さんご夫妻はWEBでの販売を始めた。
コロナ禍、私はこのホットケーキの通販に救われていた。
自宅から1歩も出ずに一日中パソコンにかじりついても、
届いたホットケーキを食べると鬱屈とした気分が帳消しになる気がした。
そして一緒に届く、陽子さんの日常や考えが漫画でつづられた毎月の新聞紙が、私の密かな楽しみであった。
お店でのコミュニケーションがなくても、その1枚を通して陽子さんの人柄を感じられ、勝手に親近感が湧いていった。
本誌では、コラムの続きをお読みいただけます。
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