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理屈の通じない『バカ』には、世の中がどのように見えているのでしょうか。
被害を避ける方法はあるのでしょうか。
今号のPRESIDENTでは、『職場の腐らす人の撃退法』を特集し、
その中で『バカを撃退すべき“5つの絶対的理由”』をピックアップします。
「なぜバカはあなたを攻撃するか?」
思考がわかれば対処できる

文:橘 玲
無神経な人はなぜ無神経なのか
「バカ」は「自分中心主義者」と定義できるでしょう。
これは頭がいいとか悪いとかの話ではなく、一流大学を出ていてもバカはたくさんいます。
私たちは誰でも、自分が世界の中心だと無意識のうちに思っています。
「世界」は、自分を中心にして、家族や恋人から友人、知り合い、
そして海の向こうの顔も名前も知らない何十億もの人たちへと同心円状になっています。
私たちは、世界を「自分中心」でしか理解できません。
「バカ」が攻撃的になるのは、悪(だと思っている者)を罰すると脳内の報酬系が活性化して、
神経伝達物質のドーパミンが分泌され、気分がよくなるからです。
これは幸福度の低い人が、もっとも手軽に幸福感を味わうことができる方法です。
人間は徹底的に社会的な動物ですから、誰もステータス競争から逃れることはできません。
スクールカーストに始まり、社会に出れば年収や肩書による序列が生まれ、
老人ホームでもステータスを争っているそうです。
物心ついてから死ぬまで、生涯にわたってステータスを意識しながら生きていくのが人間です。
人生における最大の関心ごとは、海の向こうの戦争ではなく、
自分のステータスが「上がった」か「下がった」かなのです。
ステータスが下がると、頭の痛みを感じる大脳皮質が活性化します。
これらは殴られたり、蹴られたりしたときに活性化する部位と同じです。
社会的な動物は、集団から疎外されると生きていけないので、
仲間外れにされたとき、脳が痛みを感じて警報を発するのです。
ステータスが下がるのは、集団から追い出される=死んでしまうという合図なので、
脳は大音量で警報を鳴り響かせます。
これはライオンに襲われるのと同じで、ストレスホルモンが体中に放出されます。
体は、攻撃されたときにストレスを高めて戦闘モードになり、
無事に逃げられれば平常値に戻るようにつくられています。
しかし人間関係のストレスは、いつまで経っても終わりません。
そうなると、ストレスホルモンがずっと高水準のままです。
脳はこうした状態にうまく適応できないので、それがうつ病などにつながるのです。
ストレスが高い状態は不快なので、何とかしてストレスを下げたいと思います。
困ったことにその一番簡単な方法は他人を攻撃することです。
これはヒヒの研究で明らかになったのですが、
ステータスの少し低い中間層のヒヒがアルファオス(ボスザル)にいじめられたとします。
するとそのヒヒは、ボスに向かって反抗するのではなく、自分よりステータスの低いヒヒを攻撃します。
すると攻撃されたヒヒはメスを攻撃し、そのメスは(他のメスの)子どもを攻撃するのです。
自分中心主義のバカは、会社の中で自分が不当に扱われていると感じていたり、
社会の中で自分が正しく評価されていないと思っています。
そうなると、どんなことをしてでもステータスを上げるしかなくなり、
ささいな理由で他者を攻撃して自分の正しさを証明し、達成感を味わおうとするのです。
最近、心理学的安全性という言葉をよく聞きます。
「自分の意見や気持ちを安心して表現できる状態」を指す言葉ですが、
社内の言葉遣いを変えたからといって心理的安全性が高まるわけではありません。
そもそも心理的安全性が高いのは、ステータスが高く仕事ができる人です。
若手から自分の意見を批判されても、ステータスが揺らぐ心配がないのなら、
「なるほど、そういう考え方もあるのか」
「君、なかなか面白いこというね」と冷静に受け止めることができます。
でもこれができるのは、仕事に対する自信がある人だけです。
余裕がないバカは、批判されると「ステータスが下がる」とパニックになり、
相手を衝動的に攻撃するのです。
セロトニンは脳内の代表的な神経伝達物質ですが、その濃度が社会的ステータスに関連することがわかってきました。
ロブスターは3億6000万年も前からきわめて厳格なヒエラルキーをつくり、社会的ステータスにとても敏感です。
ロブスター同士が出会うと、互いにハサミを持ち上げて威嚇し合ったり、尿のにおいをかぐことで、
どちらのステータスが高いかを判断し、相手のほうが自分よりステータスが高いと判断すると、
文字どおり尻尾を丸めて逃げていきます。
ところが、下位のロブスターにセロトニンを投与すると、戦いを挑まれても退却せず、
逆にハサミを上げて強者のポーズをとるようになります。
すると上位のロブスターが逃げていき、実際にステータスが上がるのだそうです。
同様の効果は哺乳類を含むさまざまな社会性の動物で確認され、
いまではセロトニンは、社会的な地位に関わっているのではと考えられています。
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