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機能不全家庭が生み出す新しい『貧困の悪循環』
株価は市場最高値を更新し、就職戦線は学生優位の『売り手市場』が続く昨今。
『新卒初任給引き上げ』報道をどこか羨んで見ている世代も少なくありません。
「こうした恩恵を受けるのは一部の優秀な学生だけ。多くの若者の暮らし向きはむしろ悪化しています」
貧困問題に詳しい作家の吉川ばんび氏は語ります。
「今や社会保険料、学費、物価、すべてが上がっていて、贅沢をせずとも若者の生活は苦しい。時に『若いんだから働けば』という声が聞かれるが、現状を理解していない発言に思えます」
吉川氏によれば貧困に陥った若者の家庭は、虐待やネグレクト、
家庭間の対立によるストレスを恒常的に抱える「機能不全家庭」であるケースが多いといいます。
「貧困を脱出するためには、教育などの『知的資本』、学歴や文化的素養の『文化資本』、社会的交流など『社会資本』が不可欠ですが、機能不全家庭ではこれらの資本を持つ親族がおらず、実質的に貧困から脱するのは不可能と言われている。一度陥ると個人の努力ではどうにもならない『貧困の悪循環』が生まれるのです」
今、日本の未来を映す若者たちに何が起こっているのでしょうか。
SPA!では、その実態に迫ります。
受験に失敗!教育虐待を受けた親から非難生活
歌舞伎町の夜のネオンが一人の若者を浮かび上がらせます。
所持品は肩から掛けたショルダーバッグが一つで、その日暮らし。
佐竹隆平さん(仮名・36歳)は、この界隈のネットカフェでわずか1.5畳の個室を根城に生活しています。
「なるべくお金をかけないように12時間2700円のコースしか利用していません。日中は東京都が運営しているフリースペースで時間をつぶし、夜はネカフェで寝て、朝起きたら荷物をまとめて外に出る……そんな日々です。食事はネカフェの無料食べ放題のカレーで我慢してますが、とっくに飽きました」
現在の生活に至るまで何があったのでしょうか。
「1~3年ごとに転職していて、3週間前までは都内で警備員をしていました。でも、ある日会社に借金の取り立てが来てしまって……。仕事性質上、『消費者金融に世話になっている人間は雇えない』と社員寮も即退去せざるを得なくなりました」
カネに窮した背景には、親とのいざこざがありました。
「医者か教師になることを望まれて、小学生から勉強三昧。子どもらしく遊んだ記憶はほとんどありません。大学受験に失敗し、すべり止めで入った大学を中退したので親子関係はさらに悪化。月7万円の仕送りや学費400万円を返済しろ!と要求されました」
母親は過干渉で、実家から出ることも叶わかなったそう。
「家にいたくないので外食や外泊をして、二重に生活を払う生活を送っていたら、いつのまにか消費者金融の借金が200万円に膨らんでいました。受験の失敗さえなければ、親との関係もお金のことも、揉めなくて済んだのに」
居場所を転々とする生活は初めてではない。
30歳になった年、やっとの思いで実家を飛び出して以降は、
大阪・西成でドヤ生活をしていた時期もあったといいます。
取材であったときの所持金は残り2万円。
たまにパチンコの打ち子のバイトを見つけては、数千円の収入を得ているといいますが、
すぐに底を突きます。
「カネがなくても、楽しむしかないと悲観はしていません。息苦しかった実家の頃より、生きている実感があるので。ただ、これからどうやって軌道修正するかが悩みです。社会福祉士に相談したら、自己破産を申し立てるのがいいと言われたので、それが目下の目標です」
生活が安定すれば、親との確執を乗り越えられるのでしょうか。
今がその正念場かもしれません。
本誌では、他の『親ガチャ貧困』ケースが紹介されています。
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